- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784875864363
作品紹介・あらすじ
名画「アッツ島玉砕」が啓示する昭和史。凄絶な玉砕シーンに、藤田嗣治が丹念に描き込んだ「死者の傍らに咲いている花」はいったい何を語りかけるのか?英霊たちが眠る、厳寒のアッツ島には終戦七十年の秘密が冷凍保存されている。
感想・レビュー・書評
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読了後、東京国立近代美術館へ「アッツ」観に行ってしまいました。
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藤田嗣治が戦争画を描いていたのは知ってましたが、彼の人生やそこにいたった理由などはほとんど知りませんでした。
本書では藤田嗣治の家族や生い立ち、またアッツ島に関わった人々や、戦後藤田を糾弾した人たちの話など、とにかく藤田の「アッツ島玉砕」と「アッツ島」について著者が深く考察しています。
藤田嗣治はとても複雑な人生というか、早くから海外で成功しながら、軍医であった父親や祖国に対する思いは強く、その思いが戦争と結びついて数々の戦争画を描くことになったようです。
傑作「アッツ島玉砕」は、藤田の描く美人画とはうってかわって、暗い色彩が印象的ですが、戦意高揚のためというより、どこか宗教画のような雰囲気もあります。この絵を見た人たちは、アッツ島で命を落とした人々に黙祷し、冥福を祈ったそうです。たしかに「軍神」として祈ったのかもしれませんが、死者に対する悼む、普遍的な思いもあったのかなあと思います。
太平洋戦争で日本は多くの犠牲を出し、暗い記憶を封印しようとしてきたと思います。著者が最後に書いているように、戦争画という芸術を解凍し、戦争をもういちど見直す時期がきているように思えます。