アエネーイス (西洋古典叢書 L 7)

  • 京都大学学術出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (681ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784876981267

作品紹介・あらすじ

最大のラテン詩人が、英雄とローマ建国の物語を歌いながら、「歴史の運命」を示唆する壮大な叙事詩。

感想・レビュー・書評

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  • 岩波文庫のアエネーイスを完読。トロイア滅亡からローマ建国までの物語。

    カルタゴに寄港して女王と恋し、それを離れてイタリアへ赴く。そこで、当地の王の娘を取り合うために戦争するという流れ。

    ホメロスのイリアスへの圧倒的なオマージュを感じられる。

    ヴェルギリウスはカフカのように焼却を願ったが、結局現存して今に至っている。

    いつかラテン語を勉強して読みたい。

  • 古代ローマの詩人ウェルギリウス(前70年–前19年)の叙事詩。全12巻。トロイア滅亡後の英雄アエネーアースの遍歴を描く。ホメロスの「イリアス」「オデュッセウス」を範とする。ラテン文学の最高傑作とも評されている。

    一種の血腥い復讐や怒りの存在が興味深いところ。

    解説よりメモ:

    ・英雄叙事詩・詩人ウェルギリウスの時代・「牧歌」・「農耕詩」:ヘシオドス「仕事と日」を範とする教訓叙事詩・カリコマスの文芸理論・アエネーイス伝承とローマ建国神話・放浪と戦争・社会的責務を背負う英雄,歴史の神話化・トゥルヌス殺害の場面,問題解決の困難さ・エクプラシスの技法・後世への影響,ダンテ「神曲」など

  • 【アエネイス】

    【アエネイスってなんだ】
    『アエネイス(Aeneis)』とは、ウェルギリウスの長編叙事詩。未完の遺作(前19年)全12巻。アエネイスは、「トロイアの英雄であるアエネアスの歌物語」という意味。この題名の付け方は、『オデュッセイア』が英雄「オデュッセウス」の物語だったのと似ている。『オデュッセイア』も、『アエネイス』もともに、トロイア戦争の直後の出来事が描かれるというのも似ている。

    【オデュッセイアとのちがい】
    しかし、『オデュッセイア』というのは、ギリシア側の英雄オデュッセウスが遠征に勝利後に生き残り苦難の帰路につき家族と再会するまでの話であるが、『アエネイス』のほうは、むしろトロイア戦争で祖国トロイアを滅ぼされた英雄アエネアスが神命に従って、トロイア落城後に、一群の同国人(その中には年老いた父親や幼い息子を含む)を率いて波瀾に満ちた苦難の放浪の後、イタリア半島に渡り、ラティウムの地にローマの礎を築くまでを描いている。つまり、どちら側から見るかで、視点は真逆なのである。『アエネイス』の主題は「新しい社会集団の形成」であるとされる。主人公アエネアスは父が人間のアンキーセースであるが、母親は美の女神ウェヌスである。だから、別名は「女神の御子」である。

    【アエネイスの構成】
    『アエネイス』全12巻のうち、前半6巻は「7年間の地中海の放浪」を描くので『オデュッセイア』がモデルで、後半6巻は「イタリア半島の先住民との戦争」を描くので『イリアス』がモデルになっていると言われる。新天地を求めたアエネアスたちの地中海での7年間の放浪は、第3巻からカルタゴの女王ディードーを聞き手としてアエネアスたちが話す回想として描かれる。


    【迫害する神がヘラで、救う神がアポッロ】
    『オデュッセイア』においては、主人公オデュッセウスを追い詰めるのは海の神ポセイドンであり、ポセイドンはオデュッセウスの一行を憎み迫害したわけだが、『アエネイス』でトロイア人たちを敵視するのは女神ユーノーである。そもそも、ユーノーというのは、ギリシア神話ではヘラと呼ばれる。この女神ユーノーは、ゼウス(ユピテル)の妻である。それに対してトロイア人の味方をして彼らを予言で導く神がアポッロである。アポッロが生まれたのがデーロス島である。そもそも、アポッロというのは、トロイア戦争のときに、ギリシア側で最強の戦士で、たったひとりで多くのトロイア人を殺したアキレウスという英雄のかかとに、パリスの矢を放った神がアポッロである。ローマ皇帝アウグストゥスが、紀元前28年に、パラティウムの丘にアポッロ神殿を建立したのも有名である。

    【ヘスペリアへ行け!】
    アエネアスの父が、アンキーセースであり、アンキーセースはアポッローの不明瞭な予言を解釈するにあたり、トロイアの建国者のテウクロスがクレタ島の出身であることを思い出して、アエネアスにクレタ島に行くことを勧めるのである。しかし、いざ、クレタ島に行くと疫病が発生する。すると先祖神ペナーテースが夢の中に現れてアポッロはクレタ島移住を進めているのではないと告げるのである。むしろ、ヘスペリア(イタリア)に行けというのである。

    【ヘレヌスの予言】
    クレタ島を離れイオニア海に面するブトロートゥムまで来たとき、ヘレヌスやアンドロマケに再会する。ヘレヌスはプリマムス王の息子である。アンドロマケはトロイア最強の戦士ヘクトルの元妻である。ヘレヌスは予言の能力を備え、アポッロに使える神官であり、アンドロマケはその妻になっていたのである。それでヘレヌスにアエネアスは予言を求めるのである。

    【カルタゴへ漂着】
    それでやっとイタリア半島のかかとのあたりまで来たとき、なんとユーノーが引き起こした嵐によって船が難破して、アフリカの北岸カルタゴまで一行は流されてしまうのである。しかも、シチリアでは父親アンキーセースが死ぬ。

    【ポエニ戦争へと繋がる運命】
    なぜ彼らはカルタゴに流されたのか。それは、カルタゴがユーノーを崇拝し守護神とする国だからである。そして、ユーノーは、アエネアスを始祖とするローマがいずれカルタゴを滅ぼすことを知っているため、アエネアスのイタリア上陸を阻んだのである。神々は、ローマとカルタゴが紀元前3世紀から紀元前2世紀にかけて「ポエニ戦争」で闘うことをあらかじめ知っているのだ。

    【ディードーの呪い】
    しかし、アエネアスの身を案じる母であり、愛の女神であるウェヌスは、カルタゴの女王ディードーにアエネアスへの恋を植え付ける。これによって第4巻でふたりは結ばれる。英雄アエネアスはローマ建国の使命を一時忘れかけてディードーと暮らし始めるが、ある日、同胞たちを連れてイタリアへと去ってしまうのだ。カルタゴの女王ディードーは、アエネアスやその子孫を呪い、自害をするのである。これこそがカルタゴとローマの因縁の敵対関係の根本原因だとされたのである。これは、マルクス・アントニヌスがクレオパトラと実際に恋に落ちたことを連想させる自体である。

    【冥府へ!】
    巫女シビュッラの教えを受けながら亡き父に会うために死後の世界、つまり冥府を旅する。冥府に行くと、アエネアスは夭逝したマルケッルスなどと会う。

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著者プロフィール

ローマ最盛期の詩人(前70~前19)

「2013年 『アエネーイス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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