作品紹介・あらすじ
元来,大都市交通は数多のセクターから構成されている。市内軌道,バス,都市鉄道のみならず,非先進国ではトラックやバンを用いた「非公式交通」が交錯する。その上,大衆の利便に関わる都市交通は,容易に政治の道具となり政策は混乱する。都市交通の持つ諸問題を技術セクターの多様性と政治的利害という観点から炙り出す意欲作。
感想・レビュー・書評
絞り込み
-
バンコクの都市交通の歴史。
1893 年にアジア発の路面電車が走ったという歴史を持つが、交通政策がほとんど不在の中、外資により設立運営されたもののバスに押されて 1960 年代に廃止される。
最後まで複線化されなかったところが驚異的。
バスの時代には、さまざまな形態、運営主体が混在し、統制が取れない。
都市鉄道は計画が出ては頓挫することを繰り返しながら、21 世紀にようやく実現し始める。ここでも、一貫した政策がないことで、さまざまな問題が生じている。
資料が極端に不足している初期から今世紀まで、バンコクの交通の推移がよくわかる。
東京の交通がさまざまな問題を持ちながらも、相互乗り入れを実現してよく機能していると思わされた。
著者プロフィール
横浜市立大学国際教養学部教授
1971年生まれ。1999年,東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了。横浜市立大学国際文化学部専任講師,同助教授,同国際総合科学部准教授,同教授を経て,2019年より現職。博士(学術)。第17回大平正芳記念賞(『タイ経済と鉄道 1885~1935年』),第2回鉄道史学会住田奨励賞(『鉄道と道路の政治経済学 タイの交通政策と商品流通1935~1975年』),第40回交通図書賞(『都市交通のポリティクス バンコク1886~2012年』),第30回大同生命地域研究奨励賞を受賞。
「2022年 『草の根の日タイ同盟』 で使われていた紹介文から引用しています。」
柿崎一郎の作品