- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784879842848
感想・レビュー・書評
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8話収録。
昔話の再話ではなく、スラブの民間伝承にインスピレーションを得て創作されたという物語集。
昔話の定石通り、主人公たちは自らの機転や勇気や無私の気持ちを持って、そして自然の事物や神々の助けを得て苦難を乗り越え、幸せをつかんでいく。
「姉のルトヴィツァと弟のヤグレナッツ」では、恐怖心を抱くにはあまりに幼く小さなヤグレナッツが、悪いヴィーラ(妖精)たちの様々なたくらみから、偶然の連鎖によって逃れていく場面が続くのだが、わくわくして思わず手をたたきたくなるほど楽しい。
その他の話も同様に、こうした楽しい場面がたっぷりあるのだが、全体的な印象としては、峻厳な、という言葉がしっくりくるようにも思える。
人間の愚かしさを描くのに容赦ないあたりが、そう感じさせるのかもしれない。
贅沢で安楽な暮らしを、棚ぼたで手に入れることだけを夢見ている漁師、土地の所有を巡って争い続け、相手の村を壊滅させようと画策した挙句にもろともに滅び去る二つの村の大人たち・・・・・
ことに「ヤゴル」での父親の描かれ方には慄然とさせられる。
後妻に魔法をかけられたことで、一人息子の窮状にもまったく気づかないでいた父親に、今わの際に「自分はこうなる以外はなかった価値のない男だ」と心中で叫ばせるあたり、まったく容赦ない。
家の精の火の粉踊りといった幻想的なシーンもさりながら、神の申し出に対する、主人公である老母の答えに母性の凄みすら感じられる「ストリボールの森」も印象的な一篇。
ポティェフが真実にたどり着くまで
漁師パルンコとその妻
レゴチ
ストリボールの森
姉のルトヴィツァと弟のヤグレナッツ
うろつきっ子トポルコと九人の王子
婚礼介添え役の太陽とネーヴァ・ネヴィチツァ
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