フローチャートメンタル漢方薬

  • 新興医学出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880025858

作品紹介・あらすじ

はじめに

 私は弘前大学医学部を卒業した後,同大学神経精神医学講座に入局し精神科医になりました.手っ取り早く一人前の医師になるためには,精神科の薬物治療のスキルを向上させることを第一に考えました.大学院に入り,臨床薬理学で学位を取得し,スウェーデンのカロリンスカ研究所臨床薬理学教室にも留学をしました.帰国後も弘前大学医学部附属病院で臨床精神薬理学に従事してきました.臨床精神薬理学とは精神疾患のどのような患者さんにどの薬がどのように効くのかを検討する学問です.臨床精神薬理学の研鑽とともに臨床経験を手に入れるため,年間のべ7,000人という数多く患者さんを診察してきました.そこで研究活動と臨床経験でわかったことは,西洋薬はある特定の患者に一定の効果しかもたないこと.さらに,多くの患者に不快な副作用が出ることです.そこから外れた人に対する治療法を持っていないことです.この問題を解決するために,精神療法や電気けいれん療法,光治療などにも手を出し,治療の選択肢を増やしましたが,いずれも一般診療への普及という点では問題がありました.
 私は学生時代に弘前大学医学部東洋医学研究会に所属していました.この会は相当マニアックで1年間で傷寒論を通読することを目標にしていましたが,毎年少陽病のあたりで挫折することを繰り返していました.この苦い経験からすっかり漢方嫌いになってしまい,最近まで漢方薬は臨床でほとんど使用しませんでした.それでもいくらか「証」の考え方は自然と身に付いていたようで,精神科臨床ではリスペリドン証,オランザピン証という考え方を無意識に行い,それを薬理学的機序で説明しようしていたのかもしれません.
 私と漢方との再会は,新見先生の「フローチャート漢方薬治療」との出会いです.後輩がいつも持ち歩き,たまたま診察室に置き忘れていたのをチラ見しました.学生時代にすっかり嫌気がさしていた難しい漢方理論を無視する画期的な書物でした.西洋薬で効果が出ず困っていた何名かの患者に「フローチャート漢方薬治療」を見ながら試しに漢方薬を出しました.劇的に効いたのは「半夏厚朴湯【はんげこうぼくとう】【●16】」と「酸棗仁湯【さんそうにんとう】【●103】」と「抑肝散【よくかんさん】【●54】」でした.そこから徐々にいろいろな症例に漢方薬を試すようになっています.西洋薬では対処しきれない症状に対して簡単に解決してくれることが多くなり臨床家としての治療の幅が広がったと実感しています.今回は私の臨床経験の紹介に過ぎませんが,今後は漢方における西洋医学的エビデンスを構築し,一般臨床医に受け入れやすい科学的根拠に基づくガイドラインを作成したいと考えております.

2019年2月
古郡規雄

感想・レビュー・書評

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著者プロフィール

移植免疫学のサイエンティストで、漢方とトライアスロンが趣味の外科医。イギリス留学中にとても感動したオペラ椿姫をマウスに聴かせて、移植された心臓が拒絶されないという実験にて2013 年イグノーベル賞医学賞受賞。慶應義塾大学医学部卒業。英国オックスフォード大学医学部博士課程にて移植免
疫学を学び、Doctor of Philosophy (DPhil) 取得。現帝京大学医学部外科准教授。日本体育協会認定スポーツドクター。臨床医としての専門は血管外科。大学病院としては本邦初のセカンドオピニオン外来を開設しセカンドオピニオンのパイオニアとして知られる。セカンドオピニオンを通じて西洋医学の
限界に気がつき、漢方を松田邦夫先生に学び、モダン・カンポウの啓蒙者として活躍中。50 歳までは金槌で運動嫌いであったが、娘の誘いで水泳を始め、3 年後には佐渡国際トライアスロンAタイプ236km(スイム3.8km、自転車190km、ラン42.2km)を14 時間18 分58 秒で完走する。いろいろなことに興味があるおじさん。家族は、妻・娘(10 歳)・母・愛犬(ビションフリーゼ)。

移植免疫学のサイエンティストで、漢方とトライアスロンが趣味の外科医。イギリス留学中にとても感動したオペラ椿姫をマウスに聴かせて、移植された心臓が拒絶されないという実験にて2013 年イグノーベル賞医学賞受賞。慶應義塾大学医学部卒業。英国オックスフォード大学医学部博士課程にて移植免
疫学を学び、Doctor of Philosophy (DPhil) 取得。現帝京大学医学部外科准教授。日本体育協会認定スポーツドクター。臨床医としての専門は血管外科。大学病院としては本邦初のセカンドオピニオン外来を開設しセカンドオピニオンのパイオニアとして知られる。セカンドオピニオンを通じて西洋医学の
限界に気がつき、漢方を松田邦夫先生に学び、モダン・カンポウの啓蒙者として活躍中。50 歳までは金槌で運動嫌いであったが、娘の誘いで水泳を始め、3 年後には佐渡国際トライアスロンAタイプ236km(スイム3.8km、自転車190km、ラン42.2km)を14 時間18 分58 秒で完走する。いろいろなことに興味があるおじさん。家族は、妻・娘(10 歳)・母・愛犬(ビションフリーゼ)。

「2014年 『トライアスロンアナトミィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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