公共文化施設の公共性 運営・連携・哲学 (文化とまちづくり叢書)

  • 水曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880652573

作品紹介・あらすじ

公共文化施設とは固有のプロデュース機能を備えた舞台芸術施設であり、また長期的な教育事業や前衛的・実験的芸術への支援なども大きな役割である。だがその運営と発展には多額の公的助成が必要となり市民らの合意が不可欠である。
本書では地域と市民社会の形成に公共劇場が果たすべき役割である「公共性」が、個人と社会の関係を安定的・持続的に紡ぎ、「新しい公共」をつくるという観点から、公共文化施設の本来の使命を多方面から考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 公立文化施設という意味(だけ)ではない。「公共」文化施設。私立も対象になる。その公共性の論考。つまり施設の存在意義を顧みる本。ドイツ思想史も専門とする編者の信念が反映された(尊敬の念をこめての)“理屈っぽい”(皮肉っぽい?) タイトルが示すように、人間と社会の在り様から積み上げていくアートマネジメント劇場論。同じく理屈っぽいわたしとしては、もやもやが晴れた本だった。原理を知らずして応用はできないといまさらながら納得(「美」を愛し、それを他に伝えたい衝動を持つわたしは、まさに編者のいうアートマネジメントが宿業だと自覚するしかないとも、わかった(笑))
    いくつかの研究や調査が編まれた大著であるが、やはり、編者の藤野氏の執筆した章がもっとも情熱と論理的構築力があり読み応えがある。文化が社会のさまざまな階層と結びついてきた理想形として「議論する公衆」をみる。ここに文化ー社会をつなぐ公共性、文化政策の出発点がある。これに対し文化を道具化してしまう危惧のあるプラグマティズムに立脚した文化政策に対する警鐘は本書で十分すぎるほど徹底しているが、それだけ無思想が跋扈しているということだろう。わたしはドイツの文化政策を本書で初めて知り、美学的思考に基礎づけた文化と社会に対する根源的アプローチに共感、憧憬するとともに、現実的には「美的自立性」への理解を促すのは難題だぞ、と感じた。編者も指摘するように、市民の文化への参加が盛んな日本ならではの状況も別の突破口となるだろう。理念は実践で実現していくことだ。スタートはここ、めざすのもここ、という旗印が立つ本。

  • 資料ID:21101819
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著者プロフィール

1958年東京生まれ。芸術文化観光専門職大学副学長。神戸大学名誉教授。日本文化政策学会副会長、(公財)びわ湖芸術文化財団理事、(公財)神戸市民文化振興財団理事ほか、文化審議会等の委員を多数兼任。編著に『公共文化施設の公共性─運営・連携・哲学』、『基礎自治体の文化政策─まちにアートが必要なわけ』(以上水曜社)『地域主権の国 ドイツの文化政策─人格の自由な発展と地方創生のために』(美学出版)『ワーグナー事典』(東京書籍)、ワーグナー『友人たちへの伝言』(共訳、法政大学出版会)など。

「2022年 『みんなの文化政策講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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