談 no.105 科学を科学する……領域を超えて

制作 : 公益財団法人たばこ総合研究センター  アルシーヴ社 
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  • Amazon.co.jp ・本 (82ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880653839

作品紹介・あらすじ

自然科学の内部において、近代的な知の枠組みの不十分さが露呈する。人間存在を基礎とする哲学は、現代の科学の進展に対して、合理的説明を与える役割機能を果たせなくなってきた。少なくとも、自然科学の進展によって明らかになりつつある「具体の自然」を前にして、従来の認識枠組みは、すでに十分に失効していると言わざるを得ない。
この現状にあって、人間と自然、認識と真理の間に受け入れられてきた関係を、今こそ問い直すことが必要ではないか。
新たな知の枠組みの〈再〉構築が希求される。エピステモロジー、科学技術史、科学技術社会論の分野から、科学の内部に分け入り、次なる時代の科学を展望する。


●〈現代社会と科学の役割〉
科学と市民参加…不確実性の時代の良きパートナーとして
神里達博(千葉大学教授)
地球温暖化は、不確実性が大きい公共的な課題である。ましてや、大地震のような自然災害は、最新の科学をもってしても、解決が難しい難題だ。国土に潜むリスクを前にして、理性の限界を意識せざるを得ない。そこで一般市民の知恵を活用する動きが出てきた。たとえば、参加型民主主義の試みである「討論型世論調査(DP)」もその一つ。現代社会においてますます重要になる科学への市民参加について、いくつかの方法を事例に考える。

●〈科学という「知」はどう営まれていたか〉
職業としての科学者…その歴史から見る現代
隠岐さや香(広島大学大学院総合科学研究科准教授)
科学者という職業に焦点を当てる。科学者がいかに構想され、制度的な位置を与えられたのか。科学者とは、そもそもどのような存在なのか。そして、いつから社会に登場してきたのか。科学が社会のなかで、いかなる立ち位置を獲得していったか、現代にまで引き継がれる科学と社会の関係を、科学者の誕生という補助線を頼りに紐解く。

〈科学の内実と概念の創造〉
科学のシニシズムに抗して…エピステモロジーの挑戦
近藤和敬 (鹿児島大学法文学部人文学科准教授)
「具体としての自然」を認識することから出発するエピステモロジーは、自然科学の陥穽に陥ることなく、自然に内在する生成の概念を抽出し、諸問題へとリンクを張り続ける。このネットワーク的探求にエピステモロジーの可能性を見出し、科学を新たな枠組みから位置づけ直す。

●怖いもの見たさ…恐怖の二重構造から考える
山根一郎 (椙山女学園大学人間関係学部教授/社会心理学)
「危険な恐怖」と「危険ではない恐怖」という二種類の恐怖。その二重構造の発現という観点から、「恐怖の成熟」、「恐怖の娯楽化」へ持論を発展させる山根氏の“愉みとしての恐怖"論。

●すべては「気配」…不気味な館に魅せられて
加藤耕一 (東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授/西洋建築史)
人々は、いつから「恐怖」を娯楽として愉しむようになったのか。加藤氏は、崇高、不気味なもの、ファンタスマゴリー、蝋人形などに触れながら、文学、映画、音楽などの諸ジャンルを横断しつつ、ゴシックという概念のさまざまな変容を追究する。そしてそのゴシックの行き着く先に登場したのが幽霊屋敷だった。幽霊屋敷は、ゴシックの帰結であると同時に、新たな愉しみの創造だったのだ。

●脳はホラーを求める?…世界観エンタメとしての恐怖
都留泰作 (京都精華大学マンガ学部准教授/文化人類学、マンガ家)
「ホラー」小説やマンガは、哲学へと通じている。それは、「ホラー」が形而上学的な意味での「外部」を体験させてくれるからだ。そして、エンタメの世界における「恐怖」とは、そのような形而上学的思考を「体感」させてくれるロケットエンジンのような役割を果たす、唯一の動物的感覚なのではないか。文化人類学者にしてマンガ家である都留氏が考えるエンタメ恐怖論。

著者プロフィール

1967年生まれ。千葉大学大学院国際学術研究院教授。専門は科学史、科学技術社会論。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学、博士(工学)。旧・科学技術庁、旧・三菱化学生命科学研究所、東大ならびに阪大特任准教授などを経て、現職。朝日新聞客員論説委員。著書に『食品リスク』(弘文堂)、『文明探偵の冒険』(講談社現代新書)、『リスクの正体』(岩波新書)、共著に『没落する文明』(集英社新書)など。

「2022年 『「専門家」とは誰か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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