アンダルシア紀行

  • 彩流社
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  • Amazon.co.jp ・本 (419ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882024804

作品紹介・あらすじ

スペインの生んだノーベル賞作家が、自らを表現する場として選んだ紀行文学の真髄。どこまでもスペイン的な、あまりにもスペイン的な旅への招待。昔が今に通じる“世界一ぜいたくな”ガイドブックでもある。「日常のささいな出来事、何げない会話、しがない人々の表情やジェスチャーは、セラの文章の魔術によって、一枚のポラロイド写真に収められる。読者がセラと共に旅し、同じ体験をした気になれるのはそのためであろう」(「訳者解説」より)。

感想・レビュー・書評

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  • 『-いずれまた会おうや。
    -そうだね、歩き回っているから、そう難しいことじゃないな。言っとくけど、アンダルシア全部をゆっくり、一歩一歩歩くつもりなんだ。』

    自分を「風来坊」と呼び、いろんな土地の風景、人々の会話、動植物、そしておいしい料理やワインなどを、気のおもむくまま書いている。
    一方、観光客が群がる名所には、あまり興味が無い。
    作者はスペインの大地を縦断することにより、自分自身の肉体に流れ、それぞれの土地や人々にも流れる“スペインの血”を再確認したかったのだろう。といっても「スペイン万歳」というような、日本でよく見る安っぽいふるさと自慢的紀行ではない。いい所と悪い所、いい奴と嫌な奴、全部並べている。それらをひっくるめて、旅先で集めたグッズを全部並べて一覧するようにスペインを概観しようとしている。

    そもそもスペイン自体が、歴史的にはキリスト教徒、イスラム教徒、ローマ人、ユダヤ人などが長い時間をかけて作ってきたミクスチュアなもので、細かくカットされた宝石のように、見る角度によって輝きは違ってくる。作者は一番きれいで真実に近く見える角度を見つけ出そうとして注意深く旅しているが、そこはスペイン伝統のピカレスクとして「風来坊」となって肩の力を抜き切っている。

    旅なんてやった人はわかるけど、いい事ばかりじゃない。地元の人に邪険に扱われたり、最悪の天気だったり、食べ物にあたったり…
    でも「旅で成長したい」とか余計な気負いをしなければ、旅ほど楽しいものはない。旅で成長するんじゃなく、自然にいい感じになってたんだ、というほうが人生に合ってる。

    最後に、私のお気に入りの一節。
    『風来坊は…-旅の恥はかきすてとばかり-手のおもむくまま、通りすがりの女性にタッチを楽しみ、そのお返しにほほ笑みをいただいたのだった。』
    (2008/1/9)

  • ほこりっぽいスペインの大地を風来坊が歩くピカレスク紀行文。観光客を騙したり娼婦や宿屋の主人の情けを頼りにして腹を満たし、草むらや側溝で眠りについて、次の町に向かっていく。飄々とした風来坊が良い。訳が丁寧で味わいがあった。

    P254
    セビーリャはセビーリャに始まるのではなく、そのずっと手前から始まる。セビーリャは、王たちのように、前触れされる町なのだ。それを触れ回る甲高いラッパの音は、アルカラで聞こえる。

    P351
    風来坊はバルコンと呼ばれる場所から、夕映えの色が変わっていくのを眺めるのが大好きで、太陽が、逃げるように、だが堂々と、孕んだ雌鹿のようにゆったりと落ちてゆく光景を楽しんだ。

    P362
    - いつだって、金持ちも貧乏人もいたんだ。ねえ、あんた。
    - 利口も間抜けもね、それが世の中ってもんさ。

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