昭和の戦時歌謡物語: 日本人はこれを歌いながら戦争に行った

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  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784885462412

作品紹介・あらすじ

あの日々…死の賛美歌がこだました!忠君愛国思想と軍歌・戦時歌謡を問う。

感想・レビュー・書評

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    戦前の日本において一大勢力を築き上げた歌唱の分野に「戦時歌謡」と呼ばれるジャンルがある。塩澤が本書で注目しているのはそうした戦時歌謡の中でも大ヒット(今で言うところのシングルヒットチャートtop10とかだろうか?)を飛ばした歌謡曲とその世代的なバックヤードである。

    本書で登場する歌謡曲のいずれにも共通するのは、歌を聞く人をオーディエンスとして設定し、そうしたオーディエンスに対してどのようなアプローチを取ることによって彼らを重要視しているかという現代の音楽市場に連綿と引き継がれた「欲望の設定の構図」の重要な転換がなされたということだろう。皮肉なことに、少年志願兵への憧れを引き立てる構図に現代のアニソン(アニメソング)を、あるいは、あるメディア作品とのカップリング曲が売れるという(現代でも頻繁に見られる)構図を思い起こさずにはいられなくなる衝動があることを率直に認めてしまおう。さらに言えば、「南から南から」という戦時歌謡が太平洋戦争の序盤にヒットしたが、翻って現在「JKT48」として売り出そうとする構造にもそうした「南方ソング」的な欲望がないと言い切れるだろうか(評者は言い切る自信はまったく無い)。

    もちろん、塩澤が自身の歴史観に引きずられすぎているという批判も想定されることだろう。取り上げた曲がある一握りの作詞家・作曲家に固まっている印象を持つ人も少なくない。しかしとにもかくにもこれらのヒットを飛ばしたのは事実であり、売り上げ実績という数字から見て取れるものをしみじみと学習するのもまた歴史との向き合い方なのではないかと評者は考えている。

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著者プロフィール

塩澤実信(しおざわ・みのぶ)1930(昭和5)年、長野県生まれ。双葉社取締役編集局長をへて、東京大学新聞研究所講師等を歴任。日本ペンクラブ名誉会員。元日本レコード大賞審査員。主な著書に『雑誌記者池島信平』(文藝春秋)、『ベストセラーの光と闇』(グリーンアロー出版社)、『動物と話せる男』(理論社)、『出版社大全』(論創社)、『ベストセラー作家 その運命を決めた一冊』『出版界おもしろ豆事典』『昭和歌謡100 名曲part.1〜5』『昭和の歌手100 列伝part1〜3』『昭和平成大相撲名力士100 列伝』『不滅の昭和歌謡』(以上北辰堂出版)、『昭和の流行歌物語』『昭和の戦時歌謡物語』『昭和のヒット歌謡物語』『この一曲に賭けた100人の歌手』『出版街放浪記』『我が人生の交遊録』(以上展望社)ほか多数。

「2020年 『歌謡曲が輝いていた時 昭和の作曲家20人100曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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