正しいリスクの伝え方: 放射能、風評被害、水、魚、お茶から牛肉まで
- エネルギーフォーラム (2011年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784885553875
作品紹介・あらすじ
「ただちに健康への影響はありません」ってどういうこと?錯綜するリスク情報はどう伝えられたのか。
感想・レビュー・書評
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思索
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正しいリスクの伝え方―放射能、風評被害、水、魚、お茶から牛肉まで
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震災の放射性物質による汚染問題を契機に,震災後半年で書かれた本.やや羅列的な構成で,まとまりにかけるが,問題提起としては良い本.
これからのマスコミ報道の在り方を考える一端になる.
私見として,一定の質保証のため記者に対して何かしらの資格を与える制度は考えられないのかなぁと思った.
誰が,どうやって認定するか,その権威付けは,など難しいことは多い.医者などと異なり,記者は言ってしまえば誰でもなれてしまう.しかしその社会への影響力を考えると,質の低い記者,報道陣が跋扈するのは,藪医者をはるかに超える害悪ではないか.何か上手い方法はないものか.
本の評価に戻ると,繰り返し同じような主張があって,最後の方は若干ダレた感じも.さらっと読み流して,あとから自分の考えを作ったほうがよいと感じた. -
放射能リスク中心に政府や国の専門委員会等の発信のまずさから世論が誤った方向に導かれ、その誤りを修正できないマスコミを含めた問題を解説。リスクコミュニケーションにおける重要な点を教訓としてまとめられている。
ただし、筆者自身がマスコミの立場にあり、ミスリードさせた当事者であり、問題を認識しながらも、なぜそうなったかのマスコミ自身の問題点についての言及が乏しいことは不満。 -
新聞記者の視点からみたリスクコミュニケーションのあり方。放射能の話題が中心だが,過去の取材経験も活かし,BSEや添加物など,食に関する話題も多く取り上げる。
メディア情報をより正確・的確にするために,「ニュース・プロファイリング」という手法を提案。記事に入り込むリスク思考のバイアスを分析し,メディア側にフィードバックする。記者の自尊心に訴えつつ,報道の使命を果たしてほしいことを要請し,今後に活かしてもらおうというもの。
そううまくいくかな?という気もする。ともあれ,本書はかなり公正にリスクを評価しているようで,著者のような記者が増えると良いな。毎日新聞ということで,松永和紀さんとちょっとかぶるが,不思議と言及がなかった。
柳澤桂子氏の『いのちと放射能』と近藤宗平氏の『人は放射線になぜ弱いか』を読み比べたらしく,後者を評価している(P.35)。放射能の危険を強調する学者は,資本主義文明に批判的な価値観をもっていて,情緒的な記述が多いとの印象は,同感。科学者なんだから,科学で語ってほしい。
ただやはり感情に動かされる世論というものの存在は大きい。科学的判断を重視するはずの食品安全委員会は「世間の空気」を気にして日和見報告を出したりも(23/3/29放射線物質に関する緊急とりまとめ)。科学的評価と政治的決断はしっかり分けなくては。
著者が山下俊一氏を絶賛しているのは少し違和感。「山下氏の説明の仕方は本当にうまい。…話し方…表情…人柄…どれもパーフェクトだ。」(P.97) 山下氏の映像は見たことがないのだけど,安全を断言しているとかなり批判されていたのは記憶にある。これはリスクコミュニケーションとしてはむしろ失敗例なのではないだろうか…。 -
リスクコミュニケーションの課題について、福島第一原発事故後の放射線影響の問題、BSEに関連した全頭検査の問題など事例をあげて説明する。また、海外の対応を比較して、日本のリスクコミュニケーションの問題を指摘する。
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毎日新聞編集委員による原発事故とその放射能の危険性をどのように伝えるのが良かったのかを振り返るもの。確かに食品に放射能検出、というニュースが出た瞬間に反射神経で反応しなければならない困難さは判るし、それを見直すのは重要である。が、しかしその見直し論が現在の報道に生かされているのかを考えると違和感も大きい。京都の送り火用薪持込み中止、福岡の福島県食品ショップ中止等と見ると、それを非科学的と戒めるべき新聞も無いのが悲しいかな現実だ。