あなたへの社会構成主義

  • ナカニシヤ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784888489157

作品紹介・あらすじ

心とは?自己とは?事実とは?より豊かな未来につながる"対話"のために、ガーゲンが今、世界の「常識」を問い直す。新たな"対話"の可能性を拓く実践的・社会構成主義入門。

感想・レビュー・書評

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  • 社会構成主義について、その概念と周辺の議論について丁寧に書かれている。
    本質主義的な世の中には絶対的真理があるみたいな考え方ではなく、真理は文化的枠組みの中での限定的な真理であると考える。
    日常の言葉や感情とか常識も、その文化の中で使えるものであって、別の文化では通じないこともある。メタ的に考えれば、私たちの思考や感情、常識などは文化的背景に縛られているのであって、そのメタを認識することによって、その文化に囚われる必要もないし、別の文化だってあって、新しい文化だってあるわけで。
    つまり、世の中の見方って無限になるから、文化的背景を超えて、より良い文化・見方を捉えるって視点も良いのでは?って言う考え方。

    自然科学でさえも社会構成であるという捉えを行うのが非常に面白い。別にそれが間違っているというわけではなくて、事実と断定することによる抑圧などが起こらないように。そして新しい可能性にひらけた状態であるようにっていう考え方だよね。社会構成主義の人も、言語に縛られて言葉にすれば文化による影響を受ける。けど、そのことを意識しながら生きていくことは、対立を減らし、協調の世界を作る存在となれると思う。

  • ガーゲンによる社会構成主義の入門書。文章量は多いが、内容はとてもわかりやすく読みやすい。
    社会構成主義はただの屁理屈、詭弁のような考えと捉えられやすいかもしれない。しかし、ガーゲンが述べるところのそれは、意味の創造に強調点があり、極めて建設的な考え方である。
    本書の内容は、心理学を学ぶ人、心理療法を行う人の視野を広げ、より柔軟にするだろう。また、社会学をはじめ、その他の学問を学ぶ人や一般読者にもオススメである。本書を一読した誰もが世界の見え方を一変させ、自己や他者への関心をより深めるだろうから。

  • 分厚く読みごたえは十分。GW休暇を利用して読みました。世の中は関係性で出来ているという考え方は大変興味深いです。中東やウクライナに代表されるなぜ紛争が消えないのかという国レベルから、何故互いが理解できずにすれ違うのか、という個人レベルまで、何故?と考えた事がある人なら誰でも読む価値がある本です。

  • 社会構成主義について大変分かりやすくまとめられた良書でした。

  • 私の社会構成主義❣️

  • これは、革命的にわかりやすい社会構成主義入門だ。

    こんなに分かりやすくていいのかと思う。教科書上手なアメリカ人のなせるわざとしかいいようがない。

    社会構成主義というもの自体が、ある意味、分かりやすいものと言える。つまり、フーコーとか、デリダとか、ハーバーマスとか、訳の分からないヨーロッパ系の思想を噛み砕いて、地に足のついたものにしつつ、単なる批判ではなく、実践に向けたものが社会構成主義ではなかろうか。

    そういう意味では、実にアメリカ的にポジティブに社会的に構成されているのが、社会構成主義ではなかろうか。

    などと、ちょっと皮肉っぽい、つまらん感想を書いてしまったが、この分かりやすさはほんとに感動的なんですよ。

    私が、学生時代から最近まで読みつつ、実践してきた、というか実践しようとしてきたことのエッセンスがここにあるとさえいえる。

    ここに、構造主義からポスト構造主義、脱構築などのフランス現代思想、そしてウィトゲンシュタインの「論理哲学論考」から「哲学探究」への移行、あるいは論理実証主義から解釈学への移行、決定論的な宇宙観から複雑系的な世界観への移行、仏教思想、アプリシアティブ・インクワイアリーや「対話」の実践、といったものがすべて、きわめて「分かりやすく」書いてある訳ですね。

    こんな本をもっと早く読んどけば、よかった。

    と思うと同時に、これまで、ぐちゃぐちゃと訳の分からない本を読んだり、つまらんことに悩みつつ「対話」を実践してきたからこそ、ここまで、すらすらと「分かって」しまうのだろう。そこにまた不思議な幸福を感じた。

    原題は、"an invitation to social construction"であって、”constructionism"ではない。 つまり、「主義」ではなく、「社会構築」に向かった「誘い」なわけだ。

    理論=主義ではなく、実践。

    これも、私の最近の志向にぴったりあっている。

    アメリカ人も、なかなか良いとこあるじゃん、と久しぶりに思った本であった。

    なんだかんだ、いって、ベトナム戦争や黒人や女性などの社会進出、同性愛や中絶問題といった大きな社会的な変革や議論を経験している国だからねー。

  • 「議論に戦争というメタファーをあてはめることによって、私達の役割が決まってしまいます。逆に、もし、それを別なものにしたいと思うなら、異なるメタファー――例えばゲーム、探検、ダンスなど――を用いればよいのです」

    人間の生き方というのは、割と自分が日常でどういうメタファーを使っているのかで決まるところがあるのかもしれないと思う。

    日常で用いているメタファーと異なるメタファーを用いることで、また世界に別の可能性を見出す。それはうまくやれば、灰色の日常をワクワクのあふれるゲームの世界にすることもできる可能性だ。

    僕は昔からゲームとかのフレームワークで世界を捉えようとしてきたのだけど、それも日常にあるメタファーとは異なる視点で人生を捉え、自分の中で消化させるための試行錯誤だったのかもしれない。そして多分、多くの宗教や文化がやっていることは、個人の中にメタファーの多声性を呼び覚ますことなのだろう。

  • いい本です。「生成的理論」への前向きな姿勢が印象に残りました。

  • 現代哲学の潮流を学ぶ上でとても参考になる。「わかりやすい」「難しい」どちらの感想もあろうが、訳者あとがきで本書を概観するとともに、P.89-90の注で構成主義のバリエーションを確認してから本文を読むと、多少読みやすくなるのではと思う。
    デカルトが「方法序説」で唱えた究極の疑いそのものを疑ってかかるべきで「疑いは言語の中で遂行されるプロセス、さらに他の人々とコミュニケーションするプロセス」にある、とする主張(P.325-)に哲学史上の前進を感じる。

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