赤い帽子: フェルメールの絵をめぐるファンタジー

  • 南雲堂フェニックス
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784888963855

作品紹介・あらすじ

オランダのハーグにフェルメールの絵を見に来た三人の男女に何が起きたのか?その後、姿をくらました女の行方を追って、新たな男が南仏プロヴァンス地方に探索の旅に出かける。真実と虚構が入り交じるミステリアスな物語に読者は驚愕し戸惑い続けるだろう。

感想・レビュー・書評

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  • ジョン・ベイリーといえば、作家アイリス・マードックと死別した元夫であり、イギリスの作家及び文芸批評家。

    ジョン・ベイリーが、アルツハイマー病の妻アイリスとの晩年の生活や過去の回想を描き、リチャード・エア監督によって映画化された「アイリス」は、評価が高く、ジョン・ベイリーを演じたジム・ブロードベントは アカデミー賞助演男優賞を授賞するなど俳優陣は複数の賞を獲得した。

    そのジョン・ベイリーが、亡くなった妻のアイリス・マードックとのちに再婚する女性と実際に訪れた「大フェルメール展」に着想を得て本書は描かれている。

    1996年にデン・ハーグのマウリッツハイツ美術館で開かれたフェルメールの展覧会には、23点ものフェルメールの作品が集められた。
    世界各国からフェルメール・ファンが、オランダのデン・ハーグに集結した記念すべき展覧会でした。

    本書は、その「大フェルメール展」の様子を再現するようにはじまる。
    女性ふたり男性ひとりの組み合わせで、デン・ハーグを訪れたことまで実際と同じであるが、小説は不可思議な色彩を放ちつつ、「大フェルメール展」から浮遊していくように物語が展開する。

    フェルメールの絵画<赤い帽子の女>(ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵)に描かれている女性と似ているナンシーに、奇妙な出来事が次々起こる。
    読み進むとナンシーの行動にも謎の多いストーリー性にも幻惑気味となり第一部は終る。

    第二部は、語り手はローランドという男にかわり、場所もオランダのデン・ハーグからフランスのムーリエというフランスの小さな村に移動する。南フランスのアルピーユのモリエスのことだろう。

    とにかく第一部でナンシーは行方不明になり、友達の友達であるローランドがナンシーが葉書を送ったと推測されるムーリエ村に顔も知らないナンシーを探しに行く。

    第一部は、「フェルメール展」の様子。マウリッツハイスのフェルメール以外の絵画のことや、デン・ハーグの町の描写のほかは、狐につままれたような出来事の連続で、現実との乖離を感じ、話の内容としては、ミステリー性やサスペンス性があるものの副題にあるようにファンタジーとしてとらえたほうがよいのだろうかと曖昧模糊としたまま終る。

    第二部も曖昧模糊としたままなのだが、展開としては面白く、はっきりしない謎の積み重ねがいつか解きほぐされて真実を知ることができるのではないかと期待するも、そうはいかない。

    アイリス・マードックの夫ジョン・ベイリーの『アイリス』以後の作品。
    あの「大フェルメール展」の様子をビジュアル的に描き、その絵の中の女を実際に現代に生きる女性と重ね合わせる。

    着想が斬新で、フェルメールがある意味、謎であるように、この作品もまた謎に満ち溢れている。

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