第三の消費スタイル: 日本人独自の“利便性消費”を解くマーケティング戦略
- 野村総合研究所 (2005年10月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784889901184
感想・レビュー・書評
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消費スタイルには「とにかく安いモノ」を欲しがる層と、「高級なモノ」を求める2つの層があると考えられてきた。この本ではモノにも価格にもこだわらない(=利便性があればモノが何であれ、高くてもかまわない)第三の消費スタイルが日本で展開しているということを述べている。たとえば、コンビニ、駅ナカでなんとなくモノを買ってしまう行為や手数料を払ってまでコンビニのATMでお金を引き出してしまう行為なんかが代表例であろう。特にコンビニが世界でもまれを見るほど急速に発展した背景には日本人には利便性消費が多いからだと考えられる。
そして「高くても良いor安さ重視」「こだわりありorなし」の2つの観点から「プレミア消費」「(安さ)探求型消費」「(価格も商品も気にしない)利便性消費」「(安さだけを求める)安さ納得消費」の4つにカテゴライズしている。
もちろん、さまざまな消費スタイルがわれわれの中に混在していることも中盤で指摘されている。われわれは、商品によってそれぞれ違ったアプローチによって消費を行っていることがよくわかる。
また4つの消費スタイルはわれわれのライフスタイルによって順々に変化していることもこの本では指摘している。たとえば、独身のウチは可処分所得が高いためプレミアム消費や利便性消費が多いが、結婚して子供ができると子供の養育費を捻出する必要があるてめ、プレミアム消費や利便性消費が減少し、探求型消費、安さ納得消費が増えてくる、といったことである。
最後の2章では、それぞれの消費スタイルに対して、どのようにマーケティングにつなげていけばよいか、またつながっているかが書かれている。スーパーひとつを見ても、利便性を追求し深夜営業をしたり、安さを追求したり、生鮮野菜などを扱いプレミアム消費を喚起したり、と競合店でもまったく違った戦略がひかれていることがわかる。また、海外の企業が多く進出しているが、その企業がなかなか成功しない背景には利便性消費を重要視している日本人の消費スタイルを理解していないことを主要因としてあげている。つまり、欧米ビジネスモデルの限界はここにあると。
今後、増加傾向にある何も考えていない消費者(利便性消費者)に、いかに利便性を提供できるかが、顧客獲得の課題となろう。従来のマーケティングの4P(製品、価格、販売チャネル、公告宣伝)以上に、1C(利便性)の提供が必要となってくるのではなかろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示