アメリカの鏡・日本

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  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784889913507

作品紹介・あらすじ

1949年日本占領連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーが日本での翻訳出版を禁じた衝撃の書。半世紀を経て、遂に刊行。

感想・レビュー・書評

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  • 日本が近代国家を築くために大国(私たち)のルールと手法に倣った行動に対して、私たちは勝利者として日本を断罪したのだが、そこにある矛盾に気づかなかったのか、気づいていたがあえて無視したか、どちらにしても勝者が敗者を力で捩じ伏せたのである、と作者は主張している。日本は悪事を働いたことは間違いないが、私たちだって過去同じようなことを行ってきたのだし、今また同じことを繰り返そうとしているのだと言いたいのだ。マッカーサーは、「占領が終わらなければ、日本人は、この本を日本語で読むことはできない。」と言っている。

  • GHQで占領政策決定に関わっていたアメリカ人女性による、マッカーサーが日本での出版を禁じたという曰くつきの書。
    かつて、アメリカによって鎖国を終わらせられた日本は、西洋の基準を逸脱すると折檻され、おとなしくしていると褒められる、といった欧米列強の指導の元に改革・再教育された末に、日清戦争という高校卒業証書を書き上げ、日露戦争という大学卒業論文を書き終え、結果として小さな島国に二千六百年に渡って引きこもり続けた民族を「好戦的」な「拡張主義者」に変えてしまったのだ、と主張しています。
    もともと穏やかだった日本(どのような理由で日本人の気質・アメリカ人の気質が生まれたか、という分析も面白い)を自分たちが変えてしまったというのに、GHQは一体どのように「再教育」するべきなのだろうか、という自問もあります。
    アメリカは日本との戦争を解放戦争と位置づけていたのに、実際にはヨーロッパによるアジアの再征服に過ぎなかった、歴史的に見て、アジアの民衆を奴隷にしていたのはヨーロッパの「民主主義」国家の方だった、日本の「アジアの解放」は法的擬態であったが、それでも現地に独立政権を樹立させており、かつての植民地状態よりもはるかに良いものだった(と筆者は認めつつも法的擬態であるという前提は崩していない)、そもそも法的擬態はアメリカやヨーロッパが本家本元ではないか、アメリカは日本をそれらの地域から追い出したが、それらの地域は二回も「解放」(とそれに伴う戦闘)を経験したくはなかったはずで、もっと穏やかな解決方法を選択できたはずだ、など、アメリカのとった行動に対して批判的な言葉が並びます。
    もしこの著者が現代に生きていて、9.11を見たならどんなことを考えるだろうかと思うと感慨深いものがあります。

  • 日本が自存自衛のため対米戦争に至った背景,アメリカ人抱いていた馬鹿げた日本人のイメージ,中国大陸進出に対する欧米列強の容喙の意味,アメリカによる日本占領の欺瞞など,日本人が知っておくべきことをアメリカ人女性が記してくれている。この本が終戦からわずか3年後の1948年に,しかもアメリカ人によって出版されていることが驚き。ちなみに本書は,マッカーサーから翻訳を禁止されている。

  • 伝統的侵略性
    →我々日本人にとっては著者の主張の方が正しく、理解されるように思う。
    しかしながら立場を変え、いまの日本人は例えばムスリムを同じように考えてはいないだろうか?
    「聖戦」の名の下に自爆テロも辞さない姿勢。
    世界中で行われるテロの根源と考えられているイスラム原理主義。
    その根絶のためには、イスラム教の「誤った宗教性」を改善しなければならない、と考える道に至っても驚かないし、事実そうした方向に世界は向かっているように思う。

    戦争中の日本が、自爆テロのようなカミカゼアタックを行なったり、絶望的な状況でも国のために戦い続けたりしたことには、天皇を中心とした宗教的崇拝が背景にある、と世界中から見なされても不思議ではない。

    私はこの本の感想として、「これこそ真実だ。全てのアメリカ人はこの本を読み反省すべきだ」や「日本は間違っていなかった。現代の間違った戦争史観、自虐史観を徹底的に排除しろ」などというのは、未来にとっての建設的な姿勢にはなり得ないと感じる。

    むしろ、太平洋の島々の人々の視線が忘れ去られていたように、視野の狭さを諌め、そうした状況に陥らないように努める教訓として心に刻むべきではないだろうか。

  • 必読!

  • 単行本を購入。2017-06-18@ブックオフ

    原題:Mirror for Americans: JAPAN ,1948
    著者:Helen Mears(1900ー1989)
    訳者:伊藤延司(1934ー) 元記者(毎日新聞)
    装丁:蟹江征治
    感想:主流ではない説。素人目には、いわゆる陰謀論に映るので、歴史学の専門家の意見を聞きたい。


    【目次】
    新版刊行にあたって(二〇〇五年五月五日 白子英城) [003ー008]
    目次 [009ー014]

    第一章 爆撃機から見たアメリカの政策 015
      1 フラッシュバック 17
      2 島伝いの旅 23 
      3 ヒッカム基地 27 
      4 パールハーバー 30
      5 ジョンストン島 36
      6 戦争犯罪とは何か 36
      7 クワジャリン環礁 42
      8 罪なき傍観者 44
      9 グァム 47
      10 誰のための戦略地域か 49
      11 戦略的占領 58
      12 アメリカの墜落 67

    第二章 懲罰と拘束 075
      1 なぜ日本を占領するか 77
      2 攻撃と反攻 83

    第三章 世界的脅威の正体 093
      1 つくられた脅威 96  
      2 日本はいつ敗れたか 110
      3 サムライ神話 114
      4 銃もバターも 128
      5 降伏受諾 142
      6 リーダーの資格 149
      7 日本は戦略地域か 150
      8 飢餓民主主義 152

    第四章 伝統的侵略性 157
      1 神道からの解放 159
      2 誰のための改革か 165
      3 「歴史的拡張主義者」 169
      4 「伝統的軍国主義者」 175
      5 日本とアメリカ――その生い立ち 181
      6 武士階級 195
      7 「間違い」の歴史 202
      8 思想からの解放 205

    第五章 改革と再教育 213
      1 リーダーシップ 215
      2 歴史の証言 216
      3 初めの占領 220
      4 中途半端なカは引き合わない 226
      5 理論と実践 230
      6 教育者の資格 237

    第六章 最初の教科 「合法的に行動すること」 243
      1 歴史の復活 246
      2 韓国の奴隷化 250
      3 全体主義 259
      4 改革か戦略か 262
      5 国際教育なるもの 265

    第七章 鵞鳥のソース 269
      1 満州事変 271   
      2 中国の歴史 273 
      3 攻撃と反攻 277
      4 アメリカの役割 279
      5 リットン報告 286
      6 日本は合法的に行動している 291
      7 確立された満州の秩序 296

    第八章 第五の自由 305
      1 イデオロギーか貿易か 308
      2 誰のための門戸開放か 308
      3 誰のための自由経済か 314
      4 誰の不公正競争か 317
      5 飢える自由 324

    第九章 誰のための共栄圏か 339
      1 戦略の失敗 341
      2 倫理の失敗 344
      3 日華事変からパールハーバーヘ 349
      4 英語圏 357
      5 誰のための共栄圏か 366

    第十章 教育者たちの資質 381
      1 有罪か、無罪か 384
      2 力は引き合う 386 
      3 韓国の解放 389
      4 逆向きのリーダーシップ 396
      5 脅威とは何か 406
      6 パワー・ポリテイクスは逆境射する 411

    付録 1 大西洋憲章 419
    付録 2 パールハーバー 420
     国務省総括/上下両院合同調査報告 420

    訳者あとがき 425

  • 第二次世界大戦以前から中国や日本を訪れ、両国の文化や歴史を見続けてきた著者が戦後、アメリカのGHQの諮問機関の委員として来日し、戦後日本の労働基本法の策定に携わった。

    その彼女の視点から見つめた日本とアメリカの戦前から戦中戦後の日本に対する視線が本当に鋭く、日本を理解している事に驚かされる。

    日本がたどった最悪の戦争参加と、その無謀さの現実が読めば愕然とする。日本が勝つ可能性のない戦争に突き進んだそのいきさつや、アメリカがほとんど勝っていたのに日本を攻め続けて結果、アメリカ兵を多数戦死させた事への批判もなされている。

    戦前戦後までの日本を知る重要な一冊として位置づける事の出来る本だと思われます。

    内容が、あくまで中立的であり、アメリカからの視線だけでない両国を対比した歴史分析と批判が、唯一マッカーサーが発行させなかった本である事の意味を表している。アメリカにとっても、この本は反省するべき部分を多分に含んでいる内容であるから。

    第二次世界大戦の日本を見つめるには重要な一冊だと確信する。

  •  教科書だけで近代の戦争を理解することは難しく思う。  本書は当時マッカサーが日本での翻訳出版を禁じた書である。 当時の列強国家の行動思想と日本の行動思想について知る一つの資料となるであろう。

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著者プロフィール

1900年生まれ(1898年の説もあり)。20年代から日米が開戦する直前まで二度にわたって中国と日本を訪れ、東洋学を研究。戦争中はミシガン大学、ノースウエスタン大学などで日本社会について講義していた。46年に連合国最高司令官総司令部の諮問機関「労働諮問委員会」のメンバーとして来日、戦後日本の労働基本法の策定に携わった。48年、本書を著す。89年没。

「2015年 『アメリカの鏡・日本 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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