新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛

  • 並木書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784890634019

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  • INF条約破棄後の抑止戦略の検討。
    抑止が破れた場合でも、政治的目的を達成するセオリーオブビクトリーを確立することが、逆説的だが、抑止を高めることに繋がる。
    現状維持的な日米は受動的な戦略にしかなり得ないが、中国のセオリーオブビクトリーを破綻させるセオリーオブビクトリーを早急に確立しなければならない。
    蓋然性の高い台湾有事を例にすれば、中国は在日基地へのミサイル攻撃に続き航空戦力の投射により海上・航空優勢を確立し、上陸作戦を展開していくものと考えられ、日米は予測しうる近い将来、当初のミサイル攻撃それ自体を防ぎ切ることは難しい。しかし、それに続く海上・航空優勢を、我が確保できずとも、最低限相手に確保させなければ、中国のセオリーオブビクトリーは成り立たないことになる。

  • 東2法経図・6F開架:319.8A/Mo55a//K

  •  INF破棄というと、中国の新交渉参加やアジアへの米ミサイル配備といった論点がまず語られやすい。もちろん冒頭の森本をはじめ複数の論者がこれらを重視しており、現状で中国は消極的だという点は概ね一致している(合六が解説する過去のNATO「二重決定」は現在の東アジアに適用できるのか不明)。ただ、本書の内容はより幅広い。高橋の言う、ポストINF時代の米の「セオリー・オブ・ビクトリー」(戦い方・勝ち方?)自体がそもそもまだ定まっていないようだ。
     村野は、ポストINF打撃システムについて日本自身のミサイル導入も含めた日本の積極的関与を説く。軍備管理の「新しい枠組み」への日本の積極的関与を強調すら戸崎とは一見対照的だ。そんな中、高橋は「軍備管理か抑止か」の二者択一ではなく、相互抑止に基づく「戦略的安定性を強化するための軍備管理」という問題設定を提起する。
     また高橋が、海洋環境であるアジア太平洋地域では、地上発射型巡航ミサイルの役割は極めて限定的、と言い切っているのが新鮮だった。巻末の座談会ではこの点につき森本と意見の違いがある。ほか小泉は、ロシアがINFを必要とした動機について、軍事的には米の精密誘導兵器への脅威認識を挙げるも、政治的動機は留保している。

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著者プロフィール

防衛大学校卒業後、防衛省を経て1979年外務省入省。在米日本国大使館一等書記官、情報調査局安全保障政策室長など安全保障の実務を担当。初代防衛大臣補佐官、第11代防衛大臣(民間人初)、防衛大臣政策参与を歴任。2000年より拓殖大学に所属し、同大学の総長を経て、現在は同大学顧問・同大学名誉教授。主な編著書に『新たなミサイル軍拡競争と日本の安全』(編著、並木書房、2020年)、『次期戦闘機開発をいかに成功させるか』(編著、並木書房、2021年)、『台湾有事のシナリオ』(編著、ミネルヴァ書房、2021年)など

「2022年 『ウクライナ戦争と激変する国際秩序』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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