生命-進化する分子ネットワーク: システム進化生物学入門

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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784893622037

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  • * 遺伝子とは簡単に言えば,スイッチ付きのタンパク質製造方法の指示書
    * 熱水噴出口の付近の環境は,タンパク質や核酸などの生体マクロ分子の生成に適している
    * カンブリア紀(5億年前)の大爆発で現在の37の動物門型がそろった
    * miRNA(マイクロRNA),siRNA(スモールインターフェリングRNA)
    * 真核生物のゲノムは97%以上が非コード領域,http://genome.ucsc.edu http://www.ensemble.org でゲノムの配列情報は公開されている
    * 全ゲノム情報 生物学ともいうべき新たな分野が始まり,その1つの分野に機能ゲノミックス(Functional genomics)がある
    * ノード(ボタン)の数Nに対し,枝(ボタンを結ぶ糸)の数Eが半数になるとコンポーネント(塊)が突然形成される
    * 酵母2ハイブリッド法によりタンパク質間相互作用(Protein-Protein Interaction:PPI)が発展
    * 単細胞ではタンパク質分子のシグナル伝達で情報伝達を実現
    - 代表的方法はリン酸化,PにOが3つ結合したもの.リン酸結合は分解するとエネルギーを放出するので,リン酸結合が負荷している状態は高エネルギー状態(活性化)
    * 化学走性(Chemotaxis),バクテリアの栄養に向かって行く性質や毒物を忌避する行動に見られるもの
    * 細胞増殖因子の標的となる組織はその指令に応答する能力が必要.これをCompetenceと呼ぶ
    * 遺伝子コード領域にあるSNP cSNP(cDNAにある),非コード領域(ゲノム上)gSNP,イントロンに存在するiSNP, 表現系を変えない同義置換sSNP
    * 薬剤の副作用でUSは200万人発現し,10万人近くが死亡(死亡率4位)
    * 特別のタンパク質チップを使用したseldi-TOF/MSは前処理が不要で外来でも使用可能なため疾患診断に近々実用化されるだろう
    * p53のモデル p53とmdm2の間の振動現象を数理モデルから予測 コーンのモデルなどもある
    * 臨床表現系の違いを総数の遺伝子で説明するにはfold変化を大きな差異的遺伝子を抽出することが考えられる.個々にはfold変化が小さいが,同一パスウェイに集中して協同的に働いてパスウェイ単位で見ると機能が非常に亢進または抑制される
    * 未来予測(2007年時点で)
    - 5年 抗がん剤をはじめとする薬剤の個別化投与
    - 8年 ゲノム・プロテームなどの網羅的生命情報の計測によるがんを中心に超早期診断によるオミックス医療
    - 12年 生活習慣と遺伝子素因,オミックス情報に基づいた疾病発生・重篤化予防のケアの確立と生涯にわたる健康リスク・マネジメント

  • ほぼ通読.専門書なので,自分に必要そうな箇所はしっかり読んだ.今後の生物学,とくにゲノムシーケンス後の展開として,従来の個別遺伝子(広く言えば個別要素)還元的なアプローチも踏まえたうえで,さらに,複数の遺伝子/タンパク質の間の機能的な関わり,すなわち,生体分子間の「ネットワーク」を基点にものを考えていくことの重要性を説く.自分もすでに,シグナル伝達経路などの分子間相互作用ネットワークの知識に立脚した比較ゲノム分析や進化研究を進めているので,著者の意見に大いに賛同するとともに,このような新しい分野の概説を日本語で読める点でも有用な本だと思った.例えば,まだ一般化していない用語の使い方を,参照することができる.章ごとに引用文献を付記してある作りも,ありがたい.

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著者プロフィール

編著者:(たなか ひろし) 立命館大学大学院教職研究科准教授。

「2022年 『世界とつながる科学教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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