- Amazon.co.jp ・本 (498ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894341333
感想・レビュー・書評
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引き続き、16世紀を中心とした地中海地域の経済の動き。まず16世紀を通じて起こった、各地域での物価高騰について。その後は、経済および商業の流れを三つのトピック、胡椒、小麦、帆船で論じていく。この辺りは微視的な議論が多いこともあって、個々のトピックに面白さは見いだせるが、全体的な位置づけがよく分からないこともある。
16世紀を通じて起こった物価高騰については、アメリカ大陸からの銀の流入が原因として挙げられている(p.279-284)。この物価高騰はフェリペ2世の破産をもたらすなど、地域与えた影響は大きい。貨幣には主に三つの時代が想定される。スーダン(および北アフリカの)金貨の時代、アメリカからの金貨と銀貨の時代、そしてハンガリー、ドイツなどからの銅貨の時代(p.312f)。17世紀末には再び金貨の時代となるが、この時には経済の中心はすでに地中海地域から外れている。
流通の様子を取り上げるのに、胡椒、小麦、帆船というトピックを持ってくるのも着眼点が面白い。胡椒貿易はヴェネツィアとポルトガルの争いで描かれる。喜望峰航路をポルトガルが開拓し、胡椒をインド洋沿岸から持っていくるため、16世紀前半には胡椒貿易でポルトガルが優位にある。それは16世紀後半に徐々に変わり始める。それはシリア、トルコ経由でのヴェネツィアの胡椒貿易の興隆だ。胡椒を巡るポルトガルとヴェネツィアのシーソーのような動きが描かれる。
小麦については、特に人口増加による食糧危機が貿易の大きな原因をなしている(p.384f)。イタリアでの小麦不作による大量買い付けによって、オランダが地中海に入ってくるのだ(p.454-462)。このオランダとの貿易はまた、国際的な資本主義を地中海に連れてきた(p.470)。帆船については、イギリス商人の地中海を経由したトルコとの貿易の成功が目に留まる。それは「イギリス商人の頑強さ、イギリス線の優秀さ、イギリスの織物の廉価、イギリス商人の組織の良さ」(p.449)による。特に、大砲の製造に用いる錫をトルコと取引した。この貿易のために設立されたレヴァント会社は、1600年に設立される東インド会社のモデルとなったのだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示