- Amazon.co.jp ・本 (649ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894344549
作品紹介・あらすじ
第2巻は理論的考察で構成される。これらは、長い捕虜生活と『地中海』の継続的な著述の中で確立された。『アナール』という挑発的な、まったき新しさの中にあった雑誌への長期にわたる投稿や、1937年のリュシアン・フェーヴルとの出会いも、理論的考察をさらに究めるのにあずかっている。1948年の高等研究院第6部門創設後は、「より大きな歴史のために」、『アナール』誌の闘いに加わることになる。本書収録の原稿は戦時中から晩年にまでおよぶ時期のもので、『地中海』、『物質文明・経済・資本主義』、『フランスのアイデンティティ』の三大著作と深く関わっており、その三大著作の予備的著述や未刊にとどまったいくつかのテクストである。
感想・レビュー・書評
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ブローデルは、フランス宗教戦争の原因をフランス人自身の不寛容さにあったと言及している。はたしてこれは、過ぎた世界のことなのだろうか。
21世紀、フランスではパリ新聞社襲撃事件が起き、世界のあちこちで信仰を盾としたテロが発生している。とりわけヨーロッパ圏では、イスラム教徒を排除しようとする動きが活発化し、フランスでは、モスクに爆弾が投げこまれるという報復行為もみられる。
宗教戦争は、16世紀だけに起きた特異な事件などではけっしてない。まさに今、人間が不寛容になればいつ何時でも繰り返される現実である。ブローデルはこうもいう。(サン・バルテルミーの虐殺について想起することで)「問われているのは歴史学とともに道徳であり、フランスおよびフランス人についての痛切な自省です。これでよいのであり、当然こうでなくてはいけない」。
問いつづける意義があるのではなく、問いつづけなければならない歴史。ブローデルが抱いていた危機感を、今こそ共有すべきだろうと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示