地中海の記憶: 先史時代と古代

  • 藤原書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (490ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894346079

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  • ブローデルがずっと手元に眠らせていた草稿。頓挫した書籍企画のために書かれたものだそうで、次巻につながるように結論は突然途切れたようになっている。地中海を舞台にした様々な文明、民族、都市の変遷を、先史時代と古代で扱っている。先史時代はそれこそ地中海という地形が形成された古生代の言及から先石器時代であり、古代はローマ帝国の時代はコンスタンティノープルの落成(330年)までとなる。

    現代だと地中海は南北でヨーロッパとアフリカを隔てるために南北に分かれる印象がある。著者が見ているのは主にギリシャを境に、東西の違いだ。それぞれの都市や文明はすっきりとした文体で書かれている。全体はかなり大部の本だが、個々は読みやすい。地中海という概念がそもそも地理的概念だからか、地理と気候の話が見られるのが目に留まった。例えば、周囲を砂漠に囲まれ閉じ込められているために独自に発展したエジプトと、そうではないメソポタミアの比較(p.87-89)。普通に考えられているのとは違って、耕作に適した土地はほとんどなく痩せた土地が広がり、雨水は広がりにくい地中海地方。海水温は13℃前後でつねに暖かく、生物学的にも貧しい(p.35-37)。こうした中、様々な王国が崩壊した前12世紀の危機においては気候の変動、旱魃が果たした役割が述べられる(p.218-221)。

    トピックはほぼ時代順だが、各地域ごとに書かれている。興味のあるものを拾って読むような読書になった。コスモポリタンで海を使いこなしたクレタ島の人々。そして紀元前1500年頃のテラ島(サントリーニ島)の噴火がクレタ島に与えた影響(p.175-177)。また征服者ローマによって歴史が書かれてしまっているために正当な評価が難しいフェニキアについての記述も印象に残る。他には面白かったのは、ニーチェにならってペリクレスの時代を絶頂と見た(p.350-353)ギリシャ文化の記述など。

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