快楽の歴史

  • 藤原書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (606ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894348240

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  • 原題は「快楽の調和---啓蒙の世紀から性科学出現までの快感享受法」、1770~1860年のフランスがイタリアに代わり医学において絶対的権威を持った頃から、ゲルマン系の精神病理学や性科学が快楽を病的に定義するまでの、西洋社会においてわりと解放的だった時代の性事情をまとめたもの。非常に面白い。

    まず豊富な図版。スタンダールやドラクロワ、アングルが参加したと思われる乱交場面の描写であるとか、カトリック家庭における神聖な初夜を一家総出で盛り上げるだとか、春画であるとか、貞操帯であるとか。いずれも当時の銅版によるイラストをみることができ、美術史の深い理解につながる。7つの美徳がなぜ必要であったかとか、寓意画の意味するところが見えやすい。

    訳者の解説によるとフーコーによる性の体系化すなわち教会権力が支配のために性のエネルギーを用いたということの歴史的裏付けとして提出された、性病理学の「相対化」であるらしい。著作の言葉でいうとクラフト=エヴィングが1886年に『性の精神病理』を発表して以来、性科学が名称体系や倒錯の一覧、告白と文章による自己開示の手順、事例研究の形式に成り果てていったということ。

    日本人にとっても明治維新時に西洋の性教育も併せて輸入したことから告白体の文学などに精神医学以降の性倒錯の観念はみられるのであり、ジェンダーが敵とみなしてきたものも歴史の浅い科学への同属嫌悪であったのかと思う。

    具体的な内容としては現代人には思いもよらない発想(女性も射精する)で快楽を追い求める民衆と、信仰によるこれまた無茶な貞操観念(生殖によらない射精は罪なので云々)がせめぎあって奇妙な文化が形成されている様子が描かれている。近年の退廃した性産業を見慣れた現代人にとってもアブノーマルに感じられるはず。

  • 登録番号:1027222、請求記号:384.7/C88

  • 2013.12.15 幻冬舎の『官能教育』をAmazonで検索したら、同時に検索結果に表示された本。7140円もする!

  • [ 内容 ]
    「身体」と「言語」のはざまに迫る、感性の歴史家アラン・コルバンの真骨頂!
    啓蒙の世紀から性科学の誕生までフロイト、フーコーの「性(セクシュアリテ)」概念に囚われずに、性科学が誕生する以前の言語空間の中で、医学・宗教・ポルノ文学の資料を丹念に読み解き、当時の性的快楽のありようと変遷を甦らせる、アラン・コルバン初の“性”の歴史。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 【新刊情報】快楽の歴史 http://bit.ly/rQuMWX 384.7/コ フロイト、フーコーの「性(セクシュアリテ)」概念に囚われず、医学・宗教・ポルノ文学の資料を丹念に読み解き、啓蒙の世紀から性科学の誕生までの性的快楽のありようと変遷をたどる

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著者プロフィール

●アラン・コルバン(Alain Corbin)
1936年フランス・オルヌ県生。カーン大学卒業後、歴史の教授資格取得(1959年)。リモージュのリセで教えた後、トゥールのフランソワ・ラブレー大学教授として現代史を担当(1972-1986)。1987年よりパリ第1(パンテオン=ソルボンヌ)大学教授として、モーリス・アギュロンの跡を継いで19世紀史の講座を担当。著書に『娼婦』『においの歴史』『浜辺の誕生』『時間・欲望・恐怖』『人喰いの村』『感性の歴史』(フェーヴル、デュビイ共著)『音の風景』『記録を残さなかった男の歴史』『感性の歴史家 アラン・コルバン』『風景と人間』『空と海』『快楽の歴史』(いずれも藤原書店刊)。叢書『身体の歴史』(全3巻)のうち第2巻『Ⅱ――19世紀 フランス革命から第1次世界大戦まで』を編集(藤原書店刊)。本叢書『男らしさの歴史』(全3巻)のうち第2巻『男らしさの勝利――19世紀』(2011年)を編集。


「2017年 『男らしさの歴史 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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