水俣事件 The MINAMATA Disaster 桑原史成写真集

著者 :
  • 藤原書店
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894349247

作品紹介・あらすじ

写真で見る半世紀を超える"水俣病"事件の通史!1950年代、不知火海沿岸・水俣で突如現出した奇病をこの半世紀あまり追跡した報道写真家の記録の集大成。

感想・レビュー・書評

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  • ジョニーデップによる映画MINAMATA。久しぶりに、いい映画を見た。ユージンスミスが、水俣に引き寄せられ、3年も水俣に滞在した。そして、暴行を受けたことが、死を早めた。
    そのことを、映画で初めて知った。私の中では、水俣病はもう解決したものと思っていたのが、全く違うことを知った。水俣に関する本を読み始めた。苦海浄土もずいぶん昔に読んだが、読み返した。ひどく重い。ブックレビューさえもかけない。YouTubeの「ユージンスミスの意志」を見ながら、水俣病を申請したのが2万人に及ぶにもかかわらず、1割しか認められていないという。ひどい話だ。
    そして、その中で、報道カメラマンの桑原史成を知った。写真展をやっていると聞いたので、早速行った。この本を購入し、サインもしてもらい、話も伺った。気さくで、穏やかな人だった。
    写真展の写真を見て、実にやさしい目で写していた。智子さんの集団写真が実に良かった。それに白黒の写真は、全く古びない。ストレートに訴えてくる。
    さて、本書だ。「水俣事件」という題名がいい。企業の垂れ流した有害物質で人が死ぬという事実。
    そして、企業は認めず、地方自治体も国も認めなかったのだ。
    最初の桑原史成の写真は、1960年なのだ。水俣病ということが認知される前から、桑原史成は水俣を撮っているのだ。実に、60年前の画像なのだ。そして、水俣は未だに終わっていないのだ。
    1932年から1968年まで、36年間も有毒物質は流されていたのだ。因果関係の根拠と言いながら、実際は企業は水俣病の原因は、知っていたのだ。
    本書は、2013年に出版されている。実に粘り強く、50年に渡って水俣事件を撮り続けているのだ。
    長い時間をかけて撮影し続けた証として本書がある。
    桑原史成のとった水俣の画像が、アメリカに行き、そしてユージンをゆり動かし、水俣を撮らせることになった。それだけインパクトがあったのだ。ユージンの本に、ユージンとアイリーンのサインが桑原史成に向けて書かれていた。「尊敬する」という言葉を添えて。
    カメラを通じて、立ち向かう報道カメラマンの心が通じ合っている。
    水俣の象徴は、手にある。ユージンの撮った手、桑原史成が撮った手。そこに込められたメッセージは、同じようで、同じでない気もした。カメラマンの個性が溢れる。
    穏やかで、静かで、そして、長い時間を撮り続ける。桑原史成の写した写真を持った水俣の人たちの写真が感動を呼ぶ。私の中で『苦海浄土』と桑原史成が、リンクして初めて一つの水俣のイメージが生まれた。
    本書を読みながら、宇井純が大きな役割を果たしていることも理解できた。大学で、自主講座を開き、宇井純に来ていただき、「公害原論」をやったことを思い出した。実に、朴訥な先生だなぁと思った。
    話している内容は、過激だったが。
    要するに水俣は、終わっていない。歴史から学び、今からも学ぶことが必要なのだ。2021年11月11日に『花の億土』石牟礼道子、最後のメッセージという映画会がある。見に行きたい。
    それにしても、桑原史成に会えたのは、貴重な経験となった。写真を撮るとは、人が撮るのだ。桑原史成は、優しさの中に、しなやかな強さがある。まだまだうまく書けない。私の中で、消化ができていない。発酵させることが必要だ。

  • 水俣病の記録。撮り続けて半世紀を超える。
    水俣の受難者たちの痛みは続いている。
    巻末、西村幹夫「偉大なノーテンキということについて」興味深く読む。

  • 519.2-クワ  300313038

  • 法経図・開架519.2A/Ku95m//K

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著者プロフィール

一九三六年島根県津和野生まれ。一九六〇年東京農業大学・東京綜合写真専門学校卒業。
一九六二年に写真展「水俣病」を開催、他の主なテーマは「激動の韓国」、「北朝鮮」、「ベトナム戦争」、「ソ連邦崩壊」など。著書に『水俣病』(三一書房)、『報道写真家』(岩波書店)、『桑原史成写真全集』四巻(草の根出版会)、『水俣事件』(藤原書店)など。二〇一四年土門拳賞受賞。一九九七年に郷里の津和野に「桑原史成写真美術館」が開館。

「2022年 『いのちの物語 水俣 桑原史成写真集1960 ~ 2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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