障害受容再考―「障害受容」から「障害との自由」へ

著者 :
  • 三輪書店
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784895903387

感想・レビュー・書評

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  • 作業療法士の田島明子さんの障害受容に関する考えをまとめた本。

    担当患者さんが、うつ傾向にあり、退院をすることが難しかった。学会発表にて再度見つめ直す際に調べていて出会った本。

    障害受容と聞くと、どんな使い方をするか?著者も言っていますが、私はあの人は障害受容ができていなくて困るという使い方をしています。しかしこれを聞くと嫌な気持ちがするっていうのもなんとなく分かります。

    出来ることが良くて、出来ないことが悪いことという価値観ではいづれ問題にぶつかります。自分の障害を価値を見出せるものでないといけないのかもしれません。


    スティグマ体験(否定的体験、差別的体験)に起因する場所や人の環境では再度否定感、差別感が生じる可能性がある。

    障害による苦しみ1自分自身の苦しみ。2他人から負わされる苦しみ。
    社会受容論 他者や社会からの排除が問題となっている。

    受容や参加のあり方が大切。


    障害ということを問題と考えないでその人の価値として考えられるか。また本人だけでなく周りの人や社会の考え方の変換も必要だと感じました。

  • 脳梗塞患者です。
    患者が読むのではなく、
    セラピストが読む内容だと思う。
    専門的な事は難しく、
    全てを理解するのは不可能でしたが、
    私の疑問に対する答えが導き出せたので、
    読んで良かったです。

    この本を知ったきっかけ

    2021/6/28(救急車初乗車記念日)、
    入院していた病院のセラピストTさんに、
    現在の体の状態をLINEしてみました。
    病気が受け入れられない、という旨のLINEの返事に、
    この本を紹介してくれました。

    地元図書館にはなかったため、
    Amazonやブクログのレビューを読んでみたら、
    どうも私が求めている内容とは違うような気がする。。。
    大体「障害との自由」ってふざけているのだろうか?
    こっちは右手麻痺歴50年だぞ!
    不自由しかない人生だったわ!!
    でもこのモヤモヤする気持ちの答えが欲しくて、
    Amazonで中古本を購入しました。



    何に対してモヤモヤしている?

    それは
    「治って良かったね。脳卒中患者に全然見えないよ。」
    と言われることなんです。
    その都度、モヤモヤしてしまいます。
    「お陰様で。ありがとうございます。」と大人の対応ができません。

    退院直後から、見た目は発症前に戻っていました。
    でも機能は戻っておらず、家事は娘達がやっていました。
    そのような状態(外からは判別できないが麻痺がある状態)だったので、
    機能が戻れば、このモヤモヤが解消するのではないか、と考えていました。



    モヤモヤする理由

    現在(2021/08)、自己判断では、ほぼ機能は戻っているのに、
    「治って良かったね。」と言われると、まだモヤモヤします。
    この本を読んで、その理由が分かりました。

    機能が回復している部分を見て、良かったと言われることは、
    回復していることに価値があると言われているのと同義で、
    回復していない部分は価値がないと否定されていると感じるのではないか。
    だから、モヤモヤするのだ、と。
    このことに気付いて、すごくスッキリしました。

    回復していない部分は、
    外からは全く分からないので、
    「治って良かったね。」と言われるのは仕方ないと思っています。
    逆の立場だったら、私も同じ事を言うと思います。



    右手麻痺歴50年

    脳梗塞になる前から、
    4歳時の怪我の後遺症で右手に麻痺があります。(現在54歳)
    最古の記憶の一つが、
    (握力のない)右手にスプーンを乗せて、左手でスプーンごと右手をつかんで、
    スプーンを口に運ぶ動作です。

    ずっと麻痺のある右手と生きてきました。
    このことから、リハビリ病院入院中は、
    自分は障害を受容している患者であると思っていました。

    しかしこの本を読んで、
    4歳時の怪我による麻痺と53歳時の脳梗塞による麻痺では、
    大きな違いがあることが分かりました。

    4歳時からの麻痺の場合、自分が幼くて、
    正常な状態の右手を知らなかったのです。
    (麻痺のある状態がデフォルトだった)
    53歳時の麻痺の場合は、左手と比べると正常ではないけれど、
    快適に動かせる状態から、そうではない状態になったのです。
    つまり機能を失ってしまったのです。
    ここが大きな違いでした。

    麻痺のある状態をリハビリをして改善していく、
    ということには慣れていたけれど、
    機能を失ってしまったという経験は初めてだったのです。
    だから本当は障害受容は出来ていなくて、
    退院後、すごく苦しく、未だにモヤモヤしているのです。



    自己肯定感が低い

    その他に、自己肯定感が低い理由も分かりました。
    親に無条件の愛情を与えてもらっていないから、
    自己肯定感が低いと考えていましたが、
    右手の麻痺も原因だったのではと思い始めています。

    小学校4年生ぐらいまで、
    親が担任に「この子は右手が不自由で。」と説明していました。
    担任はクラス会などで、クラス全員に、
    「〇〇(旧姓)さんは、右手が不自由だから、配慮するように。」
    と言いました。
    それはクラス内カースト最下層に配属と同じ意味でした。

    何か失敗しても、○○ちゃんはいいの。
    これは○○ちゃんは出来ないから。
    一見優しい気遣いに見えますが、
    同じ土俵にも立たせてもらえないわけです。
    もちろんクラスメイトは善意でやっていたと思います。

    私は、こういった周囲の扱いから、
    本当は出来ることも出来ないフリをしたりして、
    消極的な子供になっていました。
    小学4年生の3学期に引っ越し&転校した時、
    「自分を変えたい!」と思ったことを覚えています。



    まだ一人で回復アプローチを続けていきます

    私は右肩の可動域が狭くなっており、
    右手でボディブラシを使い背中を洗うことができませんでした。
    2021/8/14、この記事を書くために試してみたら、
    洗えるようになっていました!(その動作時痛みが出ました。)
    発症前の状態に戻ったと実感できることは、
    僅かな事でも本当にうれしく感じます。

  • 内容紹介
    リハビリテーションに対して固執したり意欲の感じられない患者さんを見たとき、つい「障害受容ができていなくて困った」と感じたことはありませんか?どうすれば障害を受容できるのか、そして一度受容できればそれは一生続くものなのか、そもそも障害を受容することは本当に必要なのか?日頃なんとなく使ってしまう「障害受容」の意味を突き詰めることで、私たちが本当に支援しようとしているものの姿が見えてくる。
    本書は気鋭の作業療法士が障害学的な視点からリハビリテーションの意味の再構築を図る本格的リハビリテーション論である。

  • 障害受容概念(の日本での普及と展望について)、網羅的に抑えている一冊。
    「できること」に「値打ちがある」という言説がいかに病者・障害者(あるいは人々)にとって
    不快で困難なものかがよく伝わってくる。

    著者は元々(現在も)実践の方のようで、どちらかと言うと理論よりも、
    リハビリテーションの現場から立ち上がってきた疑問に基づいて、話を展開する。
    随所に織り込まれる、現場でのエピソードはリハビリ業界の一端が知れるようで、
    これはこれでまた面白い。

    惜しむらくは、若干日本語が煩雑に感じられるところか。
    たぶん、()書きを多用しているのが原因なのだと思うのだが、
    どうもスイスイ読めなくて難儀した。
    あと、著者も断っているが、この研究テーマ自体が現在進行中のようで、
    本の構成が少し一貫してないように感じられた。

    「価値転換」など、障害受容をめぐっては色んな概念がありますが、
    こうした概念の背景にある価値観を抉るスタイルで、
    今後もぜひ本や論文を発表していって欲しいなぁと思った次第でした。

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著者プロフィール

田島明子(たじま あきこ)
日本の研究者。聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部教授。作業療法学の理論と歴史の研究、新たなエビデンスの探求が研究テーマ。著書に『障害受容再考』、『日本における作業療法の現代史』など。

田島明子の作品

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