賢者の弟子を名乗る賢者 THE COMIC 6 (ライドコミックス)
- マイクロマガジン社 (2020年1月30日発売)
- Amazon.co.jp ・マンガ (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784896379761
作品紹介・あらすじ
ついに秘密を打ち明けたミラはマリアナと共に過ごしていたが、そこへ急報が入る。次なる目的は迷宮『愚者の脅威の部屋』攻略!
感想・レビュー・書評
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う~んまあまあかな( ̄▽ ̄;)
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「わし」はここにいると「君」と「皆」に言う、出会いをやり直す日々が今一度はじまっていく。
原作小説三巻の内容はここコミカライズ版六巻をもって網羅されました。
四巻からまたがるところ、2.5巻分、かつては一巻分を一巻で消化したことを考えれば、ペース配分として上々ですね。
それではまずは、これまでの流れを振り返っておくとしましょう。
まずは、マイナー気味な術に凋落している「召喚術」が学び舎においてどれほどの地位を占めているかの確認と、エキスパートである主人公の手による打破から、原作小説三巻の流れを汲むこの編は始まりました。
ついで、三十年ぶりの帰還ならびに美少女への華麗なる(?)転身を身近な人(まずは召喚対象)に報告してから、長く放置していたことに対する謝意を伝える過程が重要と言えるでしょうか。
読者サービスも兼ねてか主人公が女性の服飾と向き合うパートも加わっていますが、身近な人との関係性を盤石としつつ、自分の体は自分で面倒が見られるようにするのは大事なことですものね。
これら二点ないし三点を軸として、ホームである王国を離れての長期出張の準備は一応ですが、整ったようです。
では、そんなわけでこの巻では、前巻で自分の正体をある意味終生の伴侶たる「マリアナ」相手に打ち明けた主人公「ミラ」様が、ふたりで家族としての時間を確かめ合います。
具体的には「お背中をお流しします」からの「同じお布団で寝る」のコンボと言いますか。
その上で「朝ごはんの準備の音を目覚ましに」、までやってきますよ。
枯れた老人に仕える妖精の少女との関係――、彼女がゲーム時代に何を感じて、また考えていたかを観測することは主人公はもちろん、読者としても不可能という前提こそあります。
けれども老賢者の姿だった主人公が装いを美少女に変えて、対等の部分もある同性としての新たな関係を築いていけるようになった。人格を持つ個人間の新たなそれに繋がっていくという意味でこれは大きいです。
主人公は「かつての」彼女の思いを推し量ることはできても結局は共有できないので「今」を語って「これから」を形作っていく。
この辺の心情を、スキンシップと夜の会話を通じてするりと持ってくるのが実に上手いですね。
さしずめ抱いていた罪悪感と後ろめたさを塗りつぶすような、前途に対する希望を謳い上げるようでしょうか。
ノルマと言わんばかりのおいしそうな食事描写も冴え渡っていました。
そして、RPGならこれよねという迷宮探索パート、それから新たな旅立ちをもってこの巻は〆です。
今回は同じ術者三人での探索になるわけですが、力量差を明確にすることでこの世界全体の「層」もわかって結構面白かったです。
同分野では頂点である主人公「ミラ」。
一応の到達点である、その補佐官「クレオス」。
指導者としては駆け出しですが、熱意はある「ヒナタ」先生。
説明役を複数用意しつつ、相互に褒め合う構成が心地よかったのもありますが、この幕においてはリアクションを取る驚き役としてヒナタ先生が特に優秀でしたね。このレベルのダンジョンなら概ね問題なしといった最低限の力量は持っていたので邪魔にならず、謎解きに貢献してくれたのも大きい。
ちなみに本作はクエストを達成していくおなじみRPGとしての性質が強いのですが、その過程の緊張感自体はあまりない「おつかい」感覚で済ませられるイベント程度なのでスピードアップは歓迎したいところ。
以前の巻のレビューでも触れましたが、本作の本領は別にあるので。
なんにせよ彼女の驚きを表現するうえでクレオスを間に挟んだこと、同じ題材を採っても術者の力量で大きく違うというのは原作の流れのままでしたが、やはり流れとしてのビジュアルが付くと違いますね。
「ゆるキャラ」から「翼のないドラゴン」に至る流れは、やはり絵情報こそ正義と思わせてくれました。
絵情報と言えば、今回資料を取りに行くという目的で向かった地下ダンジョンは言及こそされていませんがいわゆる閉鎖型ビオトープまで併設された、図書、標本などの巨大な学術的資料のるつぼだったりします。
原作の描写からすると結構難儀する迷宮がこれからも続くのでしょうが、今回もすえみつぢっか先生は要求に応えてくださっているように思えます。
で、最初に挙げた三巻の流れを踏まえたとして、ほかの見どころとしては旧い知識を求めて召喚した虹精霊「トゥインクルパム」とのやり取りでしょうか。
彼女は見た目も中身も幼女なので、小柄な少女である主人公との触れ合いが身長差という意味で結構絵になるんです。あと動いてなんぼな漫画との相性も普通にいいですね。デフォルメも効いているのでなおさらです。
登場するページ数自体は控えめなのですが、心癒されつつも、目が離せない幼女は魅力的です。
原作者のあとがきで常時召喚して一緒に旅をしてみようかなとつぶやきが漏れるのも納得な気がします。
今のところ再度の活躍の機会があまり与えられていない分、今後の原作の推移にも目が離せないところです。
原作小説ならもう少し巻を重ねた後ですが知識を求めるなら常駐型、それも上位互換のコネクションが生まれてしまうので彼女は割を食った部分もあるのかもしれませんが、それこそ余談ですね。
今は漫画ならではのこまごまとした描写の追加に喜びを感じるのが先でしょう。
そんなわけで仕事終わってまさかの再度の入浴パート。元々この作品は入浴シーン多いんですけどね。
で、精神はともかく肉体的には異性なのに一緒に入浴したりする頓着のなさをソロモンから指摘される一幕が結構重いです。まぁその直後にその雰囲気は、メイドさんたちに囲まれて呵呵大笑したりで吹っ飛ぶんですけどね。
原作ではさらりと流されたシチュエーションに、意外とそうだよなという心情と解法を当てはめてくるこの漫画のそういうところが個人的に好きだったりします。
さて、次の目標を依頼人であるソロモン王に提示され、そこに向かってペガサスで飛び立つシーンをもってこの六巻ならびに原作小説三巻の内容は終了です。
個人的な打ち明けという「私的」な目標と、後進の指導という「公的」な目標という意味で一つの区切りは付いたわけですが、大目標である九賢者の発見についてはこれからですね。
本筋の進行を抜きにすれば意外と達成感はあるんですが、ここまでの巻は世界観とホームポイントの地歩固めが主と言えるかもしれません。
ただし、この寄り道こそがこのコンテンツの楽しさに繋がってくるので私は好きなんですが。
あと、このレビューには入れ損ねましたが、準レギュラーと仙術士「メイリン」の邂逅もあったりして、読者目線なら段々と「影」は掴めてくるわけですが、その辺はゆるりと追いかけるが吉でしょう。
なにせ、主人公の可愛さを追いかけるのはもちろん、やること見ること楽しめることはたくさんあるようですから。