山本五十六の大罪: 連合艦隊司令長官 亡国の帝国海軍と太平洋戦争の真像

著者 :
  • 弓立社
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896678031

作品紹介・あらすじ

ソ連と内通する米内光政、大量戦死を"快楽"する山本五十六、祖国滅亡を計画した腐敗と狂気が渦巻く帝国海軍の全容と、かくされていた太平洋戦争の真像が、戦後六十三年を経て、いま初めて明らかにされる。今後、本書を抜きに現代史は語れない。

感想・レビュー・書評

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  • 一般的に戦前は全体的に右に出る者がいないが走った結果戦争となったと思われがちだが実際はレーニン、スターリン型ソ連体制へと舵を切り共産化を目指したがためであった。つまり左へ舵を切った訳である。

    その戦前から戦中、戦後に掛けていかに日本が極左であったか、いかに共産主義を目指していたかが書かれている。

    そして主題の山本五十六は共産主義者ではなかったが、真珠湾攻撃以前から既に対英米戦を企画していたことや、海軍甲事件で撃墜されるまでいかに日本の若者たちを死に追いやったのかが丁寧に書かれている。

    著者は書かれていないが、戦前の日本がこれほどまでに赤化されたのは明治維新で薩長政府が誕生し追いつき追い越せで西洋化し、それまでの日本の伝統文化を蔑視し捨て去り、西洋の啓蒙思想に被れた当然の帰結であると思う。

    そこから考えると、日本の国体は明治に破壊され戦前にまた破壊され戦後にも破壊されている。

    著者は最後の後書きで

    「祖国を守らんとする高貴なる精神が漲って初めて、国家は国家であり続けられる。とりわけ、〝血統の共同体″で〝歴史の共同体″である日本国は、祖先との連続こそが、国家悠久の生命源である。二千年間の祖先とその墓の方を向いて、後ずさりしながら、われわれは新たなる未来への日本へと着実な歩を進めているのである」

    と述べられている。

    フランスの詩人であるポール・ヴァレリーの「湖に浮かべたボートを漕ぐように人は後ろ向きで未来へ入っていく」を思い起こさせる。

    取り分け未来の人たちを守ろうとした過去の人たちの思いを、その未来の人たちである現在の私たちは受け止めてさらに未来へとバトンタッチして行かなければならない。

    その際、大切なことは過去を見据えて後ろ向きに慎重に進んで行かなければならないと思う。

  • 著者の中川先生最初っから飛ばしてるので、最初はまたどこかの「トンでも本」をつかまされたのかと思った。米内がコミュニストで山本五十六がサイコパスで云々。まあ、どこまで本当かはわからんが、山本五十六の連合艦隊司令官としての罪は万死に値するという点では激しく同意。開戦当初は戦力で数倍の帝国海軍がミッドウェイでぼこぼこにされて制海権を失い、しかしながら国民はおろか大元帥たる天皇陛下にもそれを隠蔽し、数百万の兵隊と国民を死に至らしめた男。特攻も桜花も回天も、全部海軍が始めた。司馬・半藤史観により、海軍>陸軍の絵が描かれているけど、どうにも胡散臭い。
    初めて知ったけど、パールハーバーで沈めた12隻の米国軍艦は10隻がサルベージされていて後日太平洋戦争に参戦、米国に実質的な被害はなかったとのこと。トホホだね。

  •  表題からすると本書全体が山本五十六のみを断罪する書の様に感ずるが、さうではない。
     戦前戦中の帝国海軍並びに戦争指導者に対する断罪(戦争責任ではなく、敗戦責任)の書である。
     筆者の発想の源は、東大工学部航空学科卒に起因する。戦闘機と言へども生還不能な物を作ってはいけない。
    「戦争における兵器も作戦も「生還の確率50%」が軍隊が護るべき絶対基準であり、これ以下の兵器を作ってはならないし、これ以下の作戦を部下に命令してはならない。」
     生還不能な戦闘機を作り、作戦を実行した帝国海軍将官を許す事は出来ない。
     それを裁可した将官とは、米内光政、井上成美、及川古志郎、伊藤整一、中澤佑である。
     3,000名と言ふ幾多の将兵が死んだミッドウェー海戦の大敗について、山本五十六は何も責任を取らなかったし、戦死者の慰霊もせず、例へば口封じの為陸軍部隊の一木隊はグアム経由ガダルカナル(玉砕)へ転進させた。
    山本五十六の国葬など噴飯物である。

     治安維持法は共産主義の結社を禁止したが、思想は取締りをしなかった。戦前の昭和期は共産主義思想で満ち溢れてゐた。
     大政翼賛会、国家総動員法は単なる戦時体制ではなく、正しく共産主義体制であった。当時の国家指導者は所謂国体を変革する共産主義に反対しておきながら、着々と実質的な共産主義国家体制を築いていった実態を本書は活写してゐる。
     毒の多い書であるが、再読する価値ある書であると感じる。

  • 中川八洋氏の特徴は、「戦況を正しく伝える報告を握りつぶした」「戦後すぐに共産党に入党した」等、実際の行動(とその行動がもたらす結果)から、人物の真意・思想・背後関係を推察することである。共産主義及びその亜種/変種的思想が蔓延し、情報の隠蔽・改ざん、虚偽証言が錯綜する20世紀の歴史研究では、当然の姿勢であろう。「一億玉砕」「特攻」といった日本の将来を担う若者に対する殺戮行為を、それに殉じた人々の崇高な精神に敬意を表しつつも、それを煽動し加担し強制した米内も含む指導者らを断罪する。海軍出身の歴史家による歪曲や戦前美化の民族系論者への批判も厳しい。

  • 以前から米内光政ら海軍の人間がアメリカて通じていて日本を敗戦へと導いたという説を聞いたことがあったが、本書はさらにこの説を飛躍し発展させたものとなっている。
    山本五十六ら高級軍人の実態と背景に忍び寄る国家破滅への陰謀…ここまで先の大戦での敗戦を深く突き詰めた内容の本は他にない。
    この本から学べば本当に裁くべき人間たちの姿が浮き彫りになる。

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著者プロフィール

筑波大学名誉教授

「2013年 『尖閣防衛戦争論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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