名画の中の植物−−〈美術の植物学〉への招待

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  • 八坂書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896942408

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  • 15の名画に注がれるのは、植物学者の眼差し。
    どんな植物が描かれているのかを考察し、解き明かす。
    ・まえがき
    ネブアメンの狩猟図 庭園図 パラダイスの小園
    プリマヴェーラ(春) 植物の習作 一群のキバナノクリンザクラ
    アイリスのある花束 マリー・アントワネットの肖像
    ゲットウ(「フローラの神殿」より) 誕生日のテーブル
    白のシンフォニー№2:リトル・ホワイト・ガール
    花瓶のそばで肘をつく女 フローラ
    カーネーション、ユリ、ユリ、バラ 陽気なおどけものたち
    ・あとがき
    主な参考文献、索引有り。
    メイン画像はカラー、補足画像はカラーとモノクロ。

    描かれた植物は何か。描かれた当時の植生と自然環境は。
    描かれた理由や意図は。描かれた時代と背景は。
    名画の中にひっそりと、または堂々と画面いっぱいに
    描かれる植物。それを調べると分かる、様々な事を解説。
    宗教画の影響で長らく描かれたのは、バラとユリ。
    それが交易で入ってきた東洋の美術工芸品の影響で、
    様々な植物が描かれるようになる。
    絵の代金よりも植物の価格が高かった時代もある。
    画家と植物学者が結びついて生まれた、ボタニカルアートも。
    ボッティチェリ「プリマヴェーラ(春)」は春の花が僅か。
    ヴァルトミュラー「誕生日のテーブル」はツバキ主体。
    ドガ「花瓶のそばで肘をつく女」はほとんどがキク科。
    イーヴリン・デ・モーガン「フローラ」は日本から
    もたらされたビワの木が目立つ。
    ジョン・シンガー・サージェントの
    「カーネーション、ユリ、ユリ、バラ」には
    日本から輸入されたヤマユリの姿。
    アンリ・ルソー「陽気なおどけものたち」のジャングルは
    デフォルメだが実に写実的に様々な植物が描かれている。
    著者は画家、絵画や画法に関する知識も豊富。
    サージェントの「マダムX」以降についての話は、
    なかなか興味深いものでした。

  • 風景画には当然のごとく植物が描かれているし、人物画であっても「背景」として植物が描かれることはしばしばある。
    そして鑑賞者である私たちは、その描かれた植物たちにさほど関心を払わない。
    あたかも空気のごとく。
    本書はそんな、スルーされてしまいがちな植物に焦点を当てた本である。

    いい加減に植物を描いた画家もいれば、かなり正確に描いた画家もいる。
    ピーター・ヘンダーソンは植物学者である著者から見ても「高いリアリティーを示」(68頁)しているそうだ。
    そしてさらに植物を大きく描いた後ろの、つまり背景も驚かされる。

    ジョン・シンガー・サージェントと言えば『マダムX』が有名だが、表紙にもなっている百合と提灯のあるジャポニスム絵画も惹きつけられる。
    ラファエル前派においても百合は度々登場するが、印象派に近い描き方をするこの絵画の方がわたしは好みだ。

    アンリ・ルソー!
    マグリットと並び大好きな画家!
    ヘタウマ、なんて言ったら失礼だが、彼の描く絵はまさに代表作、『夢』のようだ。
    彼の現実を、彼は自分の絵画、夢の中に持ち込まない。
    実在とは遠いけれど、だからこその魅力。
    実際には、植物園に足繁く通い、本物を知っていたようだが、植物を誇張、デフォルメすることで、独特の世界観を作り上げたようだ。
    自分はもっと評価されてもいいはずだ、と彼は信じて止まなかったと言われているが、彼の「思い込み」は本物だったようだ。
    彼が描いたのは命という無限の夢。
    個人的には、大回顧展を開いてほしいと思う画家の一人だ。
    (以前も書いたが、二人のアンリ:ルソーとマティスを並べてほしい。きっと色々な意味でクラクラするはずだ)

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50192364

  • 2022.03.02 図書館

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著者プロフィール

おおば・ひであき 1943年東京都生まれ。植物学者。東京大学名誉教授、東京大学総合研究博物館特招研究員。専門は植物分類学、植物文化史。理学博士。著書に『秘境・崑崙を行く―極限の植物を求めてー』『森を読む』『植物学と植物画』『ヒマラヤを越えた花々』『はじめての植物学 』『大場秀章著作選-植物学史・植物文化史』、編著に『日本植物研究の歴史-小石川植物園三〇〇年の歩み―』東京大学総合研究博物館など多数。

「2023年 『バラの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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