世界のどこかで居候

  • リトル・モア
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898152836

感想・レビュー・書評

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  • <居候旅行記>
    タイトルの通り、二人組みの著者(文:中山茂大、写真:阪口克、プラスたまに中山氏の奥さん)が世界のどこかで居候した時のことを綴った旅行記である。本書に登場する国は、モンゴル、イエメン、パプアニューギニア、インド・ラダック地方(中国・パキスタン国境付近)、モロッコ・アトラス山麓、モロッコ・サハラ砂漠、カンボジア、ネパールである。


    <人々の息吹が聞こえてくる>
    そして居候期間は1週間である。これより短くもなく長くもない。居候することにより「世界が見え」、「人々のナマの暮らしが見えてくる。」

    これより短ければ客扱いされ、1週間というのは、相手にとって「空気のような存在」になれる。逆に1週間より長くなってしまうと、その雰囲気に慣れてしまうことにより、客観視ができなくなる。

    著者達は何も求めない。現地の人たちの生活をそのまま客観的に描写するだけである。現地の生活の息遣いが聞こえてくるようだ。

    <登場する国々>
    登場する7ヶ国8ヶ所のうち、モンゴルとサハラ砂漠は、大草原・大砂漠という非常にきびしい自然環境だ。この二国に共通すると感じたのが、「おまえの物はオレの物」という互恵関係だ。

    他人の家でもズカズカと上がり、勝手に食べて、お礼も言わずに去っていく。一歩屋外に出れば食料の調達が難しい。隣の家まで何キロもある。死んでしまうかもしれない。そんな厳しい自然と背中合わせで暮らしている者同士、お互い食料を恵み合う関係が成り立っているのである。

    <比較文化論>
    本書の構成は、国別の紹介のあと、後ろの1割ほどで、さまざまな局面での登場する国々の比較論を展開している。1.比較屠畜学、2.比較美人論、3.比較兵法論、4.比較トイレ考、5.ハイテク未来高額、6.みやげもの文化論。

    <屠殺を考える>
    この中で比較屠畜学は、本書の中で一番強烈であった。生きるということは、食べることである。発展途上国であるこれらの国々では、一日の時間のかなりの部分を食べ物の調達・準備に時間を費やす。

    そして、動物性たんぱく質は、「さばかれた肉を買ってくる」のではなく、「自ら動物を屠殺する」ことによってでしか、調達できない。屠殺の手際が極めて速い。文明が進んで分業が進んでしまった我々日本人の多くは、屠殺経験がない。

    彼らも我々日本人も、生きるために動物性たんぱく質を摂取している。殺生はむごい行為ではない。生きるための必然であることを改めて思い起こさせられた。

    <本書との出会い>
    夜の読書会MAX(2010/7/30)で紹介された。図書館ですぐに借りることができず、借りるまでに5ヶ月を要した。2011/1/4読書開始、2011/1/6読了。

  • 世界の僻地で居候した旅行記。
    一週間、居候滞在するだけですが、所変われば全てが違う!

    ★モンゴル
    雄大な平野でのゲルの暮らし

    ★イエメン
    カート虎の巻が超笑えた

    ★パブアニューギニア
    色とりどりのボディ・ペインティング。派手なヅラ男。なぜか、キノコ頭。鼻にはスティックを刺し、原始的な生活を営む。20世紀に発見された国はとても魅惑的。

    ★インド(ラダック)
    チベット仏教の王家の末裔宅。伝統的な家屋が素敵。

    ★モロッコ(アトラス山麓)
    サハラ砂漠の正に異国空間。

    ★モロッコ(サハラ砂漠)
    雄大な砂漠にいくつかのテントを自由に?建てて暮らす一家。砂の中で焼いたビザにタジンにクスクス。トイレ事情と、絶対に行けないと思うけれど、そんな砂漠生活を覗き見れて面白かった。

    ★カンポジア
    湖での船上集落。ものすごく不便で、不経済な気がしたが、意外にも快適のようで驚いた。陸に上がらなくても何でもある。レストランに御用聞き商店、床屋に学校。バッテリー充電屋なんかも。湖からの恵みも豊かで、ワニ・レストランなんかもうけた。

    ★ネパール
    この本の中で唯一行ったことがある。ネパールは世界最貧国の一つと言われるが、実際には自給自足が徹底していているとのこと。確かに靴を履かない人もいたが、どこか満たされている笑顔があって、人としての余裕が感じられた。今回はヒマラヤに近い集落に滞在。ただ女性が多く男は出稼ぎに行っているようだ。近年、日本では(特に東京は)ネパール人をよく見かけるが、その人たちの中にはこんな故郷を持つ人もいるということが新鮮に感じる。とても強いと言われるグルカ兵の持つ「ククリ」は迫力がある。沢山ネパールの本を読んできたが、まだまだ初耳のことが多くて興味深い。コメディアンのマハ。言葉ではOKはフンチャ、はい?はハジュール、十分はプギョ。平穏に古民家での暮らしは、どこか日本に似ている。大震災でこの集落の今はどうだろう。

    本書では風の旅行社さんが協力しているらしい。私も一度行ってスッカリ気に入った旅行代理店。一層親しみを持てた。

    最後に世界の家畜の料理方法。絶命方法から、料理になるまでの各国の対比表が付いている。カラー写真付きでかなりの衝撃を受けたが、これが本来の人間の営みと思うとキレイごとは言っていられない。カラフルで私の中の僻地行きたい病に火をつける本だった。

  • 面白かったー! 世界中の様々なところで居候として生活して分かった生活の様子を、ありのままに書いた本。私も居候したい。

  • こうゆう本がもっといっぱい読みたいな。

    いろんな国があって、いろんな言葉があって、いろんな文化があって。

    でもやさしさは共通。
    そんなことを感じた大切な本です。

  • 表紙に一目惚れをして購入しましたが、とても面白かったです。文章・写真・イラストもその土地の雰囲気や人柄が伝わってきましたし、もっと知りたい〜と思いました。

  • 「旅」や「ホームステイ」ではなく「居候」。
    途上国と呼ばれる国のお家にお邪魔し、特別扱いされるわけでもなく(ちょっとされる)、ふつうの人のいつもの日常を一緒に生活していく。

    もうとにかく、世界は広いと思う。
    へ~とか、ほ~とか、そんなレベルじゃない。
    「行きたい」
    そう思ってしまう。
    (逆に「行きたくないな・・・」と思う国もちょっとある)

    文章も面白いし、その国のご家庭の情報も満載。
    実際にこの目で見たくなる風景も満載。

    ちょっと場所が違うだけでこんなにも違う。

    考え方が違うのは当たり前。
    だって生活が違う。土地が違う。気候が違う。生き方が違う。世界が違う。

    でも、生きている星は一緒。
    だったら違いを見つけて批判しあうよりも、認め合おうよ。

  • この話は一組のカメラマンとライターが世界各地で居候をする、というものです。この本に収録されてある市井の人々がつむぎだす「生活」の息吹に旅情を書きたてられる自分がいます。

    この本は一組のカメラマンとライターが世界各国を旅してはその国の家族の家にずうずうしくもあがりこんで一週間ほどを目安に居候を決め込んでいく。そしてそれを繰り返していく、と言うものです。しかし、こういう旅の記録を通して世界各地で暮らす人たちの生活する姿が写真と文章でつづられていて、そのありのままの営みがこれまた非常に僕の興味をそそられるものでした。

    アジア圏や中東などの苛酷な自然環境とともに暮らす人たちの笑顔や、生活の様子には

    「あぁ、やっぱりこういうところが好きなんだな、僕は」

    という認識を再確認させてくれました。特に動物を屠蓄するときのやり方がその国その地域ごとに違っていると詳細な写真入りの文章で掲載されていて、それが僕には非常に興味深かったです。
    あと、イスラム圏の女性はみなブルカで全身を覆っているのはご承知のとおりですが、そのチラリズムがまたかえって、彼女たちが全員美人だと言う錯覚を覚えさせると言う話には僕も正直吹き出してしまいました。

    できれは僕自身も実際に現地に飛んで、こういうことを取材して経験したり見聞きしたいのですが…。それはいつになるんでしょうねぇ…。

  • 文庫本ばっかり買ってる私には
    ちょっとお値段は高めだけど(^▽^;)
    人物相関図から家の間取り、ちょっとした豆知識まであって、
    オールカラーで読みやすい構成で、すごい良かったです!!

    私には一生経験出来ないであろう「世界のどこかで居候」
    その様子が手に取るように分かって、満足!
    第二弾を期待しちゃいます。

著者プロフィール

ライター
専門は海外事情、田舎暮らし、DIY
著書に『ロバと歩いた南米アンデス紀行』(双葉社)、『世界のどこかで居候』(リトルモア)、『ハビビな人びと』(文藝春秋)、『笑って! 古民家再生』(山と渓谷社)など。

「2015年 『旅人思考でイスラムと世界を知る本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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