- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784898155677
作品紹介・あらすじ
穂村弘さん絶賛!
「驚くべき希望の書。
頁を開くと、無表情な自分の胸に何かが熱く流れ込んできた。
その優しさとめちゃくちゃさに、びっくりして笑ってしまいました。
そうか、私も、どこで何をしてもいいのか。」
(オビ文より)
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あなたの言葉よ、どうか無事で──。
会社を辞め、身ひとつで詩を書いて生きることにした。
地球のあちこちで、言葉に翻弄されて立ち尽くし、言葉に勇気づけられて歩き出す。
中原中也賞受賞の詩人が、小説とエッセイで描く“魂の解放”。
一日の終わり、テラス席で深呼吸をして書きはじめる。/映画祭で来日した大スターの、通訳のあの子の涙。/元同僚の本棚に『フラニーとズーイ』を見つけたら。/海外の詩祭に参加し、エネルギッシュな詩人たちに刺激を受ける。/友人のダンサーに「一緒にメコン川を眺めよう」と囁かれ、ラオスのフェスティバルへ。/象形文字の故郷を見てみたくなって広州へ。/ベルリンで恋した古書店で詩の朗読会をしたいと申し出る。/旅先ですっかり山の虜になる……。
あちこちで出会いに胸を熱くした瞬間を書く。書くことであたりまえの自分でありつづける。
詩的な小説と散文、旅のエッセイを編みこんだ、大崎清夏の親密で、自由で、喚起力ゆたかな言葉と物語に親しむ一冊。
心に火を灯す言葉の、詰め合わせギフト。
〈初の小説!傑作3篇を収録〉
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誰かのことばで覆い尽くされた世界は息苦しいけれど、私たちは流転のなかにいるのだから、
きっと雲が晴れるようにそこここでことばは欠け、ことばの意味もあちこちで欠けて、風が入ってくるはずだ。
その風について正確に書き記すことができたら、もしかしてそれは詩なのかもしれない。
(「意味の明晰な欠け方について」より)
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[目次]
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目をあけてごらん、離陸するから
・ヘミングウェイたち
・シューレースのぐるぐる巻き
・フラニー、準備を整えて(小説)
・雷鳥と六月(小説)
・呼ばれた名前(小説)
歌う星にて、フィールドワーク
・アメリカ大陸を乗り継ぐ
・あなたの言葉よ
・航海する古書店
・音読の魔法にかかる(ウルフのやり方で)
・広州の鱈
・はじめてのフェスティバル
・神様の庭は円い
・意味の明晰な欠け方について
・おうちへ帰る人
・うれしい山
・プラネタリウムが星を巡らせるとき
ハバナ日記
少し長いあとがき かっこいい女に呪われて
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感想・レビュー・書評
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仕事も酒肴も...言葉で紡がれる珠玉の世界に浸る4冊。|Culture|madameFIGARO.jp(フィガロジャポン)
https://madamefigaro.jp/culture/221230-books-02.html
大崎清夏『目をあけてごらん、離陸するから』 | リトルモア
http://littlemore.co.jp/mewolili/詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
詩人の書く、詩集に収めていない作品というので、エッセイかと思いきやそれは「小説」「日記」「散文詩」そして「エッセイ」といろんなものがごちゃまぜで、こちらの頭の中までごちゃまぜになってしまう。
でも挨拶するとき「はじめまして、大崎清夏ともうします。詩人です」と、かっこいいですね。私も仕事を辞めて三年、挨拶するときに何かキャッチフレーズみたいなもの欲しいですな。職業って便利ですよね、それだけでその人の世界がフォーカスされ、何か少しでもわかったような気になりますからね。
「ごまめです。なんにでも、いちょかみのごまめです。」ますます、解からなくなりそうですね・・まあ、本人もよく解ってないんですから・・・。 -
詩人の作者が書く小説とエッセイ。
「『同じ話を異なる本で読む(ウルフのやり方で)』の実践の方法は、七通りの邦訳が存在するヴァージニア・ウルフの小説『ダロウェイ夫人』を一冊ずつ七人で開き、一センテンスずつ交代で音読していくというものだった」
「ところが同時に、すくなくとも私という読み手は、七人で同じひとつの風景を見ながら、ほかの六人の頭のなかを覗きこんでいるような気持ちになってくる」
同じ原文でありながら、言葉の違う七冊の本。
読んでいる誰かと、書いている誰かが重なって、七人の訳者(役者)がその場に立ち現れる。
面白い体験だと思う。
「昔は指輪をよく嵌めた。どの指に嵌めても何らかの意味を読みとられてしまう可能性があると知って嵌めるのをやめてしまった」
こういう一文に、ぎくりとする。
私もそうだ。
属性を読み取られることが、いや、属性を与えられることが、好きではなかった。
無色透明の、なんでもないものでありたいのかもしれない。 -
私は何も知りませんよ、しりませんよ、尻ません。
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昨今の詩人は、アクティブでインタラクティブで、とっても社交的なんだ、と感心した。まあどんな仕事もそいういう人が成功する、ということは同じだけど、私の中ではなんとなく、詩人というのは世捨て人的に人里離れた鄙びた場所でしんみりと花鳥風月だけを友として生きている人たちなんだろうという謎の固定観念があったので、ちょっと驚いた。
この本を読むと、詩人たるもの、英語だけだと足りなくてスペイン語も喋って、東京を代表してダンスも踊っちゃうというマルチタレント。
外国の人の集まりでダンスに自然に流れ込むシーンは割とあって、私的にはゲゲっとなるけど、この詩人は全然困っていない。
日本では「詩」単体だとアピールする力が弱いというか、需要があんまりないのか、他の芸術と一緒に披露されるケースが多いんですかね?などと、著者の活動についての作品を読みながら思った。演劇とか現代美術のインスタレーションとかのアーティストたちとコラボで何かやっていらっしゃる。
海外の人と話していると、詩が好きだ、詩作が趣味、という人にたまに会うような気がするけど、日本では「詩」じたいが話題にならない気がする。私の周囲だけかもしれないけど。そのせいか、日本より海外の人の方が詩が身近なイメージ。
俳句が好き、って人はまれにいるから、海外の人にとっての詩の親和性は日本の俳句に相当するのかな。
という、どうでもいい私の驚きはこのへんにして、本の感想。
作者については全然知らなくて、この本についても一切何も知らずに図書館で借りたので、最初の章を読んでいる時は、「内容薄っ」と思って、けっこうあなどっていた。その章を読んでいる間じゅう、希釈、という言葉がずっと頭に浮かんでいた。
水で薄められた文章。インターネット出現後の典型的な文学に見える。
でも、この濃度が、動画やゲームやSNSやチャットで本当に忙しい今ドキの人たちの日常には合っているんだよね、などと考えながらやや飛ばし読み。
でも、後半の二つの章はがぜんおもしろかったです。
言葉に詩人の底力を感じた!
ラオスについての「はじめてのフェスティバル」、「意味の明晰な欠け方について」、「ハバナ日記」などが良かった。
「音読の魔法にかかる」も「おうちへ帰る人」も素敵。
「広州の鱈」も好きだった。
"詩のことばは、読む人ひとりひとりにその意味が伝わるかどうかなんて心配することなく、自らの円環運動のなかで、充足している。それは孤島の生態系みたいなものだ。詩を読む人、詩を聴く人は、その見えない運動に巻きこまれ、取りこまれる。いつか誰かが書いたもののはずなのに、まるで山の苔むした倒木のように、あるいは海の波音のように、それは時間を忘れてそこにあり、私たちを、待たないままで待っている。"
これは「意味の明晰な欠け方について」の一節だけれど、言葉を扱う詩人の能力について私が常々ミラクルに感じていることをそのまんまズバリ言い表していて、本当にビックリした。
私にはとてもこんな風に的確に文字にできないので一層衝撃です。
ああなんて素敵、と震えた。 -
見ることは、いつもことばより先にある。見ることは、いつも新しい朝のように、私たちに託されている。
という一節があって、すごく好きなんだけど、でもことばになってこそ認知できたり愛着が湧くことがあることもまた真実なんだと思う。
「冬はケーキ作りに使うお酒のようにじゅっと染みこんで」
「柔らかいリネンによく似た声のあと」
「東京の女の子の踊りかたを見せつけるみたいに、踊って踊って踊った」
ことばには、見ることと同じくらい、いやそれ以上の力があるんだと思えた。 -
雨上がりの青空にきらきら光る雨粒ひとつひとつのような言葉のギフトたち。
言葉はそこここで漂い、舞い上がり、私を包んでそして光る。
世界はこうやって愛せるのだと、言葉はそのためにあるのだと、身軽な言葉が力強く示す。読み終えて得られる解放感と希望の光。
個人的には「ヘミングウェイたち」「フラニー、準備を整えて」が好きだった。
そのほかにもあらゆる場所を旅して編まれたエッセイたちはどれも粒揃いで、何気ないのにドラマティック。どこへ行ってもいい、いろんな場所へ行って、私たちは何でもできるのだ。
旅がしたくなる、言葉を書きたくなる。 -
「その頃の私は自分を揺さぶることばかり考えていたから、乗り継ぎなんて厭わなかった。多少の乱気流はむしろ歓迎だった。」
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文中にもある「深さと柔らかさの共存」が本当に当てはまる方だなと思いました。個人的にはそれに強さも加えたいです。思慮深さのある人が感情的に怒鳴るエピソードも好きですし、「フラニー、準備を整えて」も好きなお話です。人間らしくて温かくて素敵な言葉たちがたくさん並んでいます。
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言葉が好きな人なのだということが伝わってくる。
おばあちゃんの話がとても好みだった。
海外の話も面白いけど、身の回りのちょっとしたことが物語になる感じが好き。