ブランド・ストレッチ 6つのステップで高めるブランド価値 (グロービス選書 2)

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901234634

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  • ■6つのステップ
    1.コアの強化
    2.ビジョン
    3.アイデア
    4.絞り込み
    5.実現性
    6.ブランド・アーキテクチャー

    0.ブランドストレッチが失敗する理由
    ●本章の要約
     ブランド・ストレッチをすれば、別ブランドを創るよりも、低コスト、低リスクで新しいものを立ち上げられるそう考える企業の多くは、ブランド・ストレッチ病にかかっている。現実には、ブランド・ストレッチをしても、期待したほどのベネフィットは得られず、失敗する例が過半数にのぼる。こうした悲惨な状況は、「自己中心ストレッチ」によって生じる。つまり、消費者や競争などの外部要因よりも、事業上の必要性という内部事情を優先させ、ブランド力を使えば新分野で有利な展開ができるだろうという、見当違いの安心感に浸ってしまうからだ。同じ轍を踏まないようにするには、消費者にとっての付加価値に意識を集中させたほうがよい。

    〈ヴァージン〉のポイント
    1何によって有名になったのかを肝に銘じる
    2感覚に訴えるだけでなく、中身を伴わなくてはならない
    3消費者や競争についてよく理解する
    4ブランド・プロミスの実行がとにかく重要である

    〈ダヴ〉のポイント
    1強いコア製品を母体とする
    2ブランドが真の価値を付加できる分野を選んで展開する
    3ブランド・ストレッチの際には、製品の本質的部分の強さが非常に役立つ
    4一貫性を保つことが重要である

    ●本章のまとめ
    1)ブランド拡張の成功率は低い。
    2)その根本的な問題は、マーケティング・チームの多くが陥っている自己中心ストレッチにある。
    3)企業は消費者のために、機能上のパフォーマンスに裏づけられた感情的価値も含めた、価値提供に専念する必要がある。


    1.コアを強化する
    ●本章の要約
     ブランド・ストレッチを成功させるための第一歩は、新しくブランド拡張したときに本物の価値を付加できる、強く健全なブランドを持つことだ。ぱっとしないブランドに足を引っ張られて、新しい製品やサービスの魅力が低下するおそれもある。強いブランドの中心には、ブランドコンセプトを定め、信頼を構築し、利益の大半を生み出す強固なコア製品がある。したがって、ブランド拡張で第一にやらなくてはならないのは、新分野への展開を考えることではなく、コア部分を強化することだ。

    ■個別マーケティングの落とし穴
     タンゴが犯した大きな過失は、アップルやトロピカルなどの新製品を出そうとしたことではなく、そのやり方にあった。まず、タンゴは製品ごとに、独自の広告キャンペーンや販促活動を展開した。一つの大きなブランド・イメージを築くのではなく、それぞれの製品に独自のパーソナリティを持たせた。つまり、いくつかの章に分けた一つの物語ではなく、いくつもの異なる物語を話すという方法をとったのだ。

    ●本章のまとめ
    1)強いブランドはほとんどの場合、その中心に強いコア製品があり、それが健全な利益と信頼感の源泉になっている。
    2)証明書の役割を果たすアンカーがあれば、コア製品ラインの拡張は比較的容易に行うことができる。
    3)不用意なブランド拡張は、売上や収益性を低下させ、他の用途に使える資金を奪い、ブランドに深刻なダメージを与えるおそれがある。


    2.ビジョンを構築する
    ●本章の要約
     明確で野心的なブランド・ビジョンの開発は、ブランド・ストレッチを成功させるためのカンフル剤となる。ビジョンをもとに市場をよ広く捉えることで、ブランド・ストレッチの機会や、潜在的な競合他社の脅威が見つけやすくなる。また、ビジョンによって、ブランド拡張には、売上の増加だけでなく、一つの大きなブランド概念を築く役割があることが確認でき、チーム全体として目指すべき方向性が明らかになる。こうしたビジョンがなければ、ブランド拡張をしてもその製品が独り歩きしてしまい、結果的にブランドの一貫性が失われ、コア部分のメッセージも弱まっていく。

    ●本章のまとめ
    1)基本ブランドについて明確で意欲的なビジョンを持つことにより、ブランド拡張案を検討する際に、大胆な発想がしやすくなる。
    2)市場を広く定義することが、そうしたビジョンの基礎となる。
    3)ブランドの概念を広げてストレッチを行う場合、それが自己中心ストレッチではなく、確実性の高いブランド拡張かどうか注意しなくてはならない。


    3.ブランド・ストレッチの機会を見つける
    ●本章の要約
     明確で示唆に富むビジョンが決まったら、次のステップは、そのビジョンを用いて、ブランド拡張案を考えることだ。いくつかの異なる対象に関する知見をもとに、まず、コアは、アイデアの源泉は常に消費者にあるということだ。また、成功例の多くは、競合や異業種の企業からアイデアを借りたり、自社内から発掘したりしている。とはいえ、アイデア開発のプロセスはスムーズに進まないものだ。そのアイデアが生かされずに終わること製品の拡張から考えてみるとよい。重要なのも多いので、気をつけなくてはならない。

    ●本章のまとめ
    1)消費者に関する知見を用いると、製品ラインの拡大や、もっと遠いブランド拡張のアイデアを考えるときに役立つ。
    2)競合他社やサプライヤー、異業種などを参考にする「イノベーションの近道」も、アイデア開発に役立つ。
    3)アイデア開発のプロセスは整然と進むわけではなく、紆余曲折を経るものであり、個人の情熱と忍耐が欠かせない。


    4.アイデアを絞り込む
    ●本章の要約
     ブランド拡張に関するアイデアを出したあとに行うべきことは、絞り込みの作業だ。事業として成り立つか、望ましいブランド・ビジョンの実現に役立つかという観点で、最も有望な候補を絞り込んでいく。その際には、企業のコンピタンスを明確にし、ブランド・プロミスを実行できるかどうかを確認する必要がある。制のとれたアプローチを用いないと、小さなブランド拡張をむやみに実施して、消費者への価値提供が不十分になったり、ほかの事業展開に結びつかなくなったりする。また、人材や資金などの経営資源が分散するので、価値創造どころか、価値の破壊を引き起こしかねない。

    ■ブランド拡張の4タイプ
    ブランドビジョンへの貢献/事業性
    「稼ぎ頭」低/高
    「ヒーロー」高/高
    「金くい虫」低/低
    「ニッチ」高/低

    ■ブランド拡張による事業性の評価
    ①魅力があるか
    ・問題解決に役立つか
    ・暮らしをより良くするか
    ・他との違いがあるか?
    ・金銭的に魅力はあるか?
    ・市場は魅力的か?
    ②信頼性があるか
    ・機能面のストレッチ
    ・感情面のストレッチ
    ③既存製品を補完するか
    ・事業基盤
    ・ブランド拡張製品の収益性
    ④実行するだけのコアコンピタンスがあるか

    ●本章のまとめ
    1)ブランド拡張をうまく活用しないと、事業の強化ではなく、事業の細分化を招く。
    2)人材や資金などの経営資源は、事業とブランドビジョンの構築に貢献するブランド拡張製品に集中させる。
    3)企業のコンピタンスは、ブランドストレッチの制約条件となる。専門性を求める他社に、ブランドのライセンス供与を行うことは、投資に対するリターンの最大化に有効だ。


    5.ブランド・ストレッチを実現させる
    ●本章の要約
     最も成功率が高そうなブランド拡張に、どれだけ努力と資金を集中させたとしても、うまく実現できなければ、期待はずれの結果に終わる。マーケティング・ディレクターたちの見解では、ブランド拡張が失敗する主な理由の一つは、ブランドプロミスを実現できないことにあるという。逆に、その部分が優れていれば、いくつかのプラスの効果が期待できる。まず何といっても、リピート客が増え、収益性を伴った成長の可能性が高まる。また、最高の宣伝方法である口コミやパブリシティによって、その製品やサービスを紹介してもらえる。さらには、製品が高品質であれば、ブランド・ストレッチが可能な範囲が広がっていく。

    ●本章のまとめ
    1)ブランド拡張の成功において、実行は戦略と同じくらい重要だ。ブランドプロミスを守れないと、失敗の原因となる。
    2)実行段階で失敗すると、他の同ブランド製品にも悪影響を及ぼしかねない。
    3)逆に、優れた製品は成功率が高くなるほか、パブリシティでも好意的に取り上げてもらえる。


    6.ブランド・アーキテクチャを持つ
    ●本章の要約
     ブランド拡張を重ねるほど、その管理は難しくなり、多方面への展開には高いリスクが伴う。特に企業から発信するメッセージが多くなると、消費者は混乱し、基本ブランドのイメージが希薄になってしまう。また、社内での優先順位も曖昧になる。こうした問題の解決に役立つのが「ブランド・アーキテクチャー(基本設計概念)」だ。これを利用することで、製品ラインを整理し、消費者へ正しい情報を提供し、社内の資源を最適に配分することが可能になる。

    ●本章のまとめ
    1)ブランドアーキテクチャーは、製品ラインの整理と体系化に役立つ。さらに、企業の効率性を高め、消費者の製品選択も容易にする。
    2)製品プラットフォームは、各製品をグループにまとめ、イノベーションを促進する。また、各プラットフォームが基本ブランドのビジョンの構築にどのように貢献するかが明らかになる。
    3)戦略策定と実行において、基本ブランドとの一貫性を可能なかぎり保つべきだ。変更は、ブランドストレッチの程度に応じて行うようにしたほうがよい。

  • 『#ブランド・ストレッチ』

    ほぼ日書評 Day556

    既になかば古典の域に入りつつある本だが、今読んでも本質的なところを突いていると感じるが、一方で、成功事例として取り上げられたものが、その後10年余りで倒産の憂き目を見る等、世の移り変わりの速さをも実感することができる。

    従来製品のバリエーション増はコア製品の拡張と位置付け、その先にあるストレッチを3段階に分類。

    1つ目が「直接的ストレッチ」。石鹸メーカーがボディソープを出す類。当然、難易度は最も低いはずだが、コア製品の特性をしっかり定義しておかないと、芯がブレることになる。ダヴの例では「敏感肌用石鹸」というのがコアバリューで、それと生合成の取れたボディソープであることが肝要。

    2つ目が「間接的ストレッチ」。先の例では、シャンプーを販売する等。コア製品の価値からの飛躍が大きいと失敗するケースも多くなる。

    3つ目が「360度ストレッチ」。いわばコア製品から連想される限りにおいて様々な製品やサービスを提供すること。ダヴの例では「スパ経営」が挙げられていた(実際には、そのような事業展開は行われていない)。
    本書中では、GUCCIのようなブランドがこの例として挙げられる。衣料品、バッグから、香水、時計、バイクのヘルメット等、まさにコアとなる技術(馬具に求められるしっかりした縫製等)から離れて、GUCCIというアイコンをまさに360度取り囲むように様々なオファリングが提供されることになる。
    こうしたファッションブランド以外で、世の中で最も成功した360度ストレッチの例は、ディズニーリゾートであろうか?

    いずれの場合も自社のビジネス領域をどう定義するかが重要。5Fフレームワークに見る「競合関係」が変わってくる。その観点で、本書では成功事例として取り上げられるレンタルビデオの雄、ブロックバスター社も、その後の「映像コンテンツ」を居間に鎮座するTVでみるものではなくなる時代においては、ネフリなどの勢力を前に倒産の憂き目を見ることに。

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  • やっぱり、商品がもつ本質的な部分=製品のコアが出発点であり、価値である。ここをまずは、消費者を深く分析し、理解することで作り上げる事が大事!加えて、市場を分析する力も必要!
    製品のコアを理解した上で、周辺からブランドをストレッチ(拡張)させる。さらに、そこから、ストレッチという流れ。ただ、多くの失敗はこの流れを見失っているか、製品のコアを忘れている。
    製品のコア、ブランドを作る上でビジョンがあると、方向性がぶれない!
    ブランドを棄損させないように、ブランドプロミスを守った製品、顧客体験を提供できているかもブランドストレッチの鍵
    ポジショニングも大事!

  • やり方次第では有効な手段たり得るブランドストレッチ。
    しかし、失敗している事例が多い商品戦略のひとつと言える。

    そのブランド・ストレッチを効果的・効率的に成功させるためのポイントを、
    数多の実例を引き合いに説明する内容。
    書かれた内容に目新しさはないものの、冒頭では失敗する理由を取り上げ、
    6つのステップに沿って、体系立てて書かれており、大変理解しやすい。

    ブランドマネージャーや製品開発に携わるビジネスパーソンに読んで欲しい1冊。

  • ブランド拡張についての成功事例を多く掲載。

  • ■感想

     読むのは2回目だが、
     読む時期、また自分が色々経験してから読むのでは、
     本から受ける学びが変わってくる事を感じさせる、本。 

     個人的には、学びの多い、充実した読書となった。 
     
    ■興味を持った箇所

     STEP6.ブランド・アーキテクチャーを持つ(P183〜P227)
     
     上記の箇所が、大変学びになった。
     ブランドの基本設計の構築、もしくは再構築、とても重要な内容。

  • よかったですよ。最近、なんだかクライアントからブランドストレッチの相談が多くて、手にとった本です。自分の知識を整理できてよかったです。こういう本を企業が読んで、理解してくれたら無茶なブランドストレッチな発想は無くなるのになぁ。海外は企業がこういうことをきちんと理解してるから、グローバルブランドが育つんでしょうね。日本は僕らみたいな代理店のプランナーに委託するという変な現象が起きてるから「ブランド」というものが育ちにくい環境にあるんでしょうね。でもそういう体質だからこそ、僕らみたいなプランナーっていう職業が成り立つんでしょうけど。

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