古事記及び日本書紀の研究: 建国の事情と万世一系の思想

著者 :
  • 毎日ワンズ
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901622639

作品紹介・あらすじ

神武東遷は歴史的事実ではない。大和朝廷ははじめから大和に存在したのである。そしてその創設者はおそらく崇神天皇であろう…。戦前の「不敬罪発禁本」と、戦後の「天皇論」を所収。

感想・レビュー・書評

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  • 戦前の日本で発禁になった有名な歴史書。興味津々で読んだ。ここまで神武天皇やヤマトタケル、神功皇后などの実在性を明確に否定しているのは、あの天皇崇拝の盛んな時期に書きすぎではないかと思うほど。書いている内容は、古事記と日本書紀の相違点、出てくる神・人の名前などの比較、そして後漢書・魏志に出てくる倭奴国王や卑弥呼との関係分析など当然の歴史との照合である。しかし、中国の歴史書が正しく日本を把握していたか?(特に年代など)という指摘は確かに私としても考えたこともなかった。卑弥呼を神功皇后ではないかと推測し、九州説に立つなど、今に至る邪馬台国論争との関連も現代への接続を感じさせられた。それにしても、当然の歴史理解であり、これを当時の国粋主義者たちが危険思想だと主張したとして、果たして彼らも本当に古事記を信じていたわけではないのでは?と考えながら読むこととなった。歴史的事実ではなく物語であるだけに、日本の思想を読み解く鍵があるとの主張は全くそうだと思うのである。

  • 古事記と日本書紀を史料批判しつつ史料性を否定するという書物。戦前としては意欲作だったと考えられるが、今となってはどうだろうか。ただし、その思考や手法は現代でも通用するものだろう。

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著者プロフィール

津田左右吉

歴史学者、思想史家。 岐阜生まれ。1891年東京専門学校(のちの早稲田大学)を卒業。満鉄調査部に入り白鳥庫吉の下で満洲(中国東北)・朝鮮の地理・歴史を研究。1918年から早稲田大学講師、のち教授。文献批判に基づき、記紀の神話が客観的史実でないことを論証し、実証的な日本、中国の古代史,思想史研究を開拓した。『文学に現はれたる我が国民思想の新研究』『神代史の新しい研究』『古事記及日本書紀の新研究』『日本上代史研究』『上代日本の社会及び思想』を著す。『日本上代史研究』などに関して皇室の尊厳を冒涜したとされ1940年、発売禁止処分を受け早大教授を辞職。1942年には出版法違反で禁錮3ヵ月、執行猶予2年の宣告を受けるが、1944年には免訴となった。ほかに『ニホン人の思想的態度』『津田左右吉全集』(33巻)などがある。1949年文化勲章を受章。

「2019年 『日本の皇室』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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