TATARA

著者 :
  • 今井出版
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本棚登録 : 11
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (451ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901951685

感想・レビュー・書評

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  • 少し前、大阪の淀屋(の史実)を題材にした小説「謀(たばか)る理兵衛」があまりに面白かったので、同じ著者の歴史小説「TATARA」を探して読みました。一般の本屋さんでは売っていない。
    中国山地で古くから行われてきた「たたら」とは、砂鉄から鉄を取る製鉄法の一つで、語源はタタール人だという説もあり。今の鳥取県、島根県で行われてきたが、この話は鳥取県でたたら製鉄を営んできた近藤家(実在)をモデルにした小説。黒井田家(近藤家)に奉公し、その支配人の一人と結婚した1人の女性の生き様を描いた話。
    なんでもない話ではあるが、実に面白い。たたらについて調べ上げ、分かりやすく解説してくれる部分もいいし、奉公、結婚、出産(死産に近い)、姑との確執、夫の死、息子の出征、戦死、など、なんでもない毎日を450ページにわたって語り、あっという間に読ませてしまう。パワーというより、本当に優しい感じがしました。

    蛇足ですが、私は水木しげる氏が広めた妖怪伝説は、たたらの歴史と関係があるとの仮説を立てています。古くから有力者の武器づくりなどに利用され、その秘密や人材を守るため山に閉じこめられてきた。製鉄作業には事故も多く、顔にやけどを負い、変形した人が町へこっそり出たりして、目撃される。そんな歴史があったのではないかと想像しております。

    松本薫さんは、米子市に住み、高校で英語を教えているようですが、英語に関する著書や翻訳本は結構出ているものの、小説はあまり数がないようです。もっと読みたくて仕方ない作家です。

  • これは素晴らしい本です。私はそう思いました。
    たたらによる和鉄製錬のこと、明治期の地方の経済活動のこと、主人公たちの一生懸命生きる姿、女性が強く賢く生きることが良い世の中を作るのではないかというメッセージ、どれもが素晴らしいです!
    読んでいて何回か涙をこぼしました。
    (あえて個人的な好みを言えば、主人公をあまりに良い人にせず、時には「人間的な怒り」を率直に表して欲しかったです。そうすれば、真実味や親近感がもっと持てるように思いました)
    私家本として出されたと思われる本ですが、ぜひISBNコードを付けて再度印刷、販売して欲しいです。
    「作者の松本薫さん、素晴らしい本ですよ!!」

  • たら製鉄という少しマニアックなテーマがベースであるが、鳥取県の鉄山師・近藤家(本文では黒井田家)を舞台に、明治時代を生きた人たちがイキイキと描かれている。

    「坂の上の雲」とは異なり、激動の明治をいち地方から眺めている。その地方で暮らす人たちの間でも世代によって価値観/国家観が異なる等、必ずしも均質ではなかったであろう時代相を描いている。

    洋鉄に圧されてたたら製鉄の経営が厳しくなる中、近藤家当主が地元雇用を守るべく、いかに苦悩したかも触れられており、面白い。

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著者プロフィール

元柔道女子57kg級全日本代表

「2022年 『野獣・松本薫の罪なきスイーツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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