- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784903002279
作品紹介・あらすじ
生徒はすべて受刑者。日本で唯一、世界でも例のない刑務所の中にある中学校。
昭和30年に誕生した刑務所の中の松本市立旭町中学校桐分校。そこには義務教育を修了していない受刑者たちが全国からやってくる。1日10時間、生まれ変わろうと日本一勉強する生徒たちは、勉強することで自分や罪を見つめなおしている。
「学ぶことで人は変われる」と、35年にわたり教壇に立ち続けた教師が、学ぶこと、生きることの意味を生徒たちに問いかける。
感想・レビュー・書評
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(2011.01.23読了)(2011.01.20借入)
2010年11月20日の「週刊ブックレビュー」で紹介された本です。
番組ホームページの内容紹介を拝借しておきます。
「日本で唯一、刑務所の中にある公立中学校に35年間勤めた著者によるノンフィクションです。長野県松本市旭中学校桐分校。そこは義務教育を修了していない受刑者たちが1年間学ぶことができる貴重な学校です。10代から60代まで、様々な事情を抱えた生徒たちが全国からやってきます。著者は学校の成り立ちや1年間の生活、生徒たちの葛藤をていねいに描きます。彼らの喜びや苦しみを通して、学ぶこと、生きることの意味を問いかける一冊です。」
2010年にTBSでドラマ化して放映されたとのことですが、知りませんでした。
72頁までは、いかにも教育者が書いたという感じのかなり硬い内容の文章が続くので、この本は外れだったかなと思ったのですが、そのあと生徒の書いた文章等が、たくさん出てきて、現代社会においては、読み・書き・計算が基本になっており、それができないことがどれだけ支障になるのかということがわかります。
全国の受刑者の中で、小学校や中学校に最後まで通うことができず、読み・書き・計算に不自由している人を対象に、1年間で中学校3年分の勉強をしてもらい、中学校卒業の資格が貰えるという、長野県松本市にある学校の話です。一日の授業時間は7時間で、夏休みも冬休みもありません。教科書や学習道具は、学校から支給されます。
生徒の年齢は、10代から60代まで様々です。1978年ぐらいまでは、20代までの人たちですが、その後、40代、50代、60代と高齢化してきています。
生徒の数は、20数名いた時期もあるようですが、最近は、10名に満たないことが多いようです。
●生きる力(35頁)
私は入学式の司会を務めながら、彼らが桐分校の1年間の生活を通して「生きる力」を養ってほしいと願います。
●刑務事故(46頁)
刑務所には決して起こしてはならない三大刑務事故と呼ばれるものがあります。「自殺」と「火災」、そして「逃走」の三つです。
●人生が変わる(65頁)
「字の読み書きがずいぶんできるようになりました。読み書きが一番大事です。読み書きができると人生も変わります」
●前へ(103頁)
10年前の卒業生が卒業式の日に言っていたではないか。「何もせずに悩んでいるよりは、前に進もうとして何かをすることによって悩む方がいかに大事かということがわかった」と。
●逃げるな(105頁)
今、現在、不得手なのは仕方のないことです。できないのはやむを得ないことです。ただし、できないままにし、それから逃げ出そうとするのは、自分に対し卑怯だと思います。
(耳の痛い話です。)
●字が読めない不利益(113頁)
「駅に行っても字が読めないのでいくらの切符を買ったらいいのかわからなかったです。でも見栄があるから、舞鶴に降りて料金不足ですなんて言われたら、オレ字を読めないのがわかってしまうような気がして、つい、多めの金額の切符を買っていました。」
●走る(156頁)
「走る苦しさは、走った者でなくてはわからない。走る楽しさは、走り続けた者でなくてはからない。走る楽しさは、走る苦しさを乗り越えたとき、初めて真の楽しさを知ることができる」
●簡単に読める(157頁)
三文小説は簡単に苦もなく読めるから、そのときは好かれるだろう。純文学は読むのに苦労をともなうこともあるから敬遠されがちになるだろう。だが、どちらが読者の心に後々まで残っているだろう。どちらが人の血となり肉となるか。自ずと知れたこと。
(2011年1月23日・記)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
菅原文太の冒頭メッセージの次は…松本市立旭町中学校「桐分校」は、全国で唯一刑務所の中にある中学校です。で始まります。ドラマは見ていないのですが、観た母親はいたく感動していたのでホンを読んでみました。読み書きそろばんができない受刑者の更生を兼ねて出所後の社会復帰に自信をつけようが学校の最終目的です。角谷先生は大学卒業後、教員になるのであればいちばん勉強を必要としている生徒のもとで教えたいと考えた。行き着いたところ刑務所の中の中学校。どこが感動するかといえば、先生の一貫した思いでした。入学者も厳選され、ごく少数、女子の受刑者は受け入れできない。中学校3年間の学習時間を1年間で確保する。夏冬休みなしで詰め込み型。学習の手段としては、習熟度の効果に疑問が残ります。しかし、入学する受刑者は読み書きができない、計算ができないことで社会生活が困難で卑屈であるタイプが多く、それがクリアできることがこんなに喜びにつながるのかと思うほどの純朴なうれしさを表します。社会科見学もあって校外に出る学習方法も取り入れ、さらに本校の教職員、生徒やPTAとの歌やおやき作りの交流もあって、菅原文太のメッセージにあるように、松本市は桐分校が存在することで誇り高い都市に思える!
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内館牧子さん脚本のドラマ化で御座います。。。これから単行本を購入したら是非読みますが、
ドラマ版の方では全体的に涙が止まりませんでしたが、
1人居なくなりまして、残った受刑者4名の中学校御卒業を心からおめでとう御座います。。。
20代から70代の御高齢の方々迄いらっしゃって、
松本刑務所の中で教室があった分校=中学校の生徒の皆様方は5人共々歳が様々で、
色々な葛藤やラストシーンでは受刑者の希望が見えて来ましたが、
関西弁を話されていらっしゃった受刑者は、『学校に向かない=勉強に向かない』と言う事で、
岡山刑務所に移管となった時には涙が止まりませんでした。
読み書きが出来る様になった方、又、『よだかの星』をラストでは読める様になった事は、
大変素晴らしい事だと思いましたがラストのクレジットが流れて居るシーンでは、
中学校の御卒業をなさった受刑者が今後どうやって更正をして行くのか、
今後のお話も見たい気持ちで一杯でした。
感動且つ色々と勉強になりました作品を本当に有難う御座いました。。。
(↑)(実際に私が本当に書いた文章を以下全文を書きました。。。) -
自ら志願して「刑務所の中の中学校」で働きはじめ、「天職は自分でつくるものだ」と定年まで働き続けた作者の信念の強さにただただ感服した。
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桐分校の設立を検討するに至った社会背景、地域をも含めた多くの方の尽力によって開校にこぎつけられた歴史。
淡々とした筆致で書かれていますが、その重みというか力強さのようなものが行間からにじみでているように感じました。
そして何より、ここで学べることが様々な形で大きな糧となるのだと思いました。
「中学を卒業してから死にたい」という還暦を過ぎた方。
「新聞が読めるようになりたい」という青年。
「日本語の読み書きができるようになりたい」という外国籍の人。
目的は様々だけど、逸していた学ぶ機会をここで得られることが、気障な言い方だけど刑務所を出たその先へつながる強い架け橋になるんだと感じました。
先日の『報道特集』で、昨年度の生徒の卒業までの一年を放送していました。
この本が出た頃よりも生徒数はさらに減って2名。
そんな事情から分校の存続問題も生じているようですが、入学者が0人の年ができてしまったとしても、この先学ぶ場を求める誰かのために存続してほしいと強く願ってやみません。 -
刑務所の中の中学校。
まだまだ私の知らない日本がたくさんあることに驚いた。
数は減ってはいるものの義務教育を卒業していない人がいること。
これは、なくしたい問題だと思う。 -
長野県松本市にある、松本少年刑務所内にある、日本で唯一、刑務所の中にある松本市立旭町中学校桐分校のエピソードです。
様々な事情によって義務教育を受けられなかった受刑者の方の中で、選考を受けて許可された方が、中学3年までの勉強を1年間でやりとげるそうです。
夏休みも冬休みもなく、一日10時間勉強に費やすそうです。
これまで17歳から67歳までの入学生がいたそうです。
この世の中でどれだけの苦労や生き辛さを抱えてこられたのだろう、と思いました。
読みながら、願わくば、義務教育のカリキュラムは義務教育の期間に、親の都合に左右されずにすべての子どもが安心して学ぶことができる仕組みはできないだろうか、と考えました。
「親から子どもを守らなくてはならない」なんて、胸の痛むような状況ですが、、義務教育は何のためにあるのかを改めて考えることのできた一冊でした。 -
◆りんどうよ寒さに堪えて来る夏に咲かせてくれよ紫の花◆
日本一勉強する中学生が学ぶ学校が松本市にあります。松本市立旭町中学校「桐分校」は、全国で唯一刑務所の中にある中学校であり、世界でも例がない学校です。このことを私は長野県に住んでいながら知りませんでした。
本書についてはあまり語らないほうがいいような気がします。まず読んでみてください。今「学び」の真っ最中にある学生の皆さんに、改めて「学ぶ」とはどういうことか思い巡らせて欲しいと思うのです。-
2018/12/02
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この本は福祉大学の生涯学習で学長先生が紹介してくれた本。
たしかに、犯罪を犯した人は悪いことは間違いない。
どいういう境遇で育ったからってそれが免罪符になるわけでもない。
でも、少なくとも誰にも愛されたことも祝福されたこともない人は、
自分で自分を愛することも肯定することも出なくなってしまう可能性は高いと思う。
生まれたときから両親がいなかったり、小学校にも行けなかったり、
勉強する機会が与えられず、字も読めず数も数えることが出来なかったら
仕事にも就けず、バカにされ続け、そういう人生を歩み続ける人が犯罪を犯してしまう率は普通に両親がいて愛されてそだった人より多くても当たり前のような気がする。
この中学校を卒業した人の再犯率は非常に低いそうだ。
だれかに祝福され応援され認められた記憶が一生その人を支えるのだと思う。
この本を書かれた先生は、大学を出て就職するとき、普通の教師ではなく、中学卒業していない犯罪者のための教師になろうと決心したそうだ。
すごいなあと思う。本当にいろんな人がいるものだ。 -
2011年7月6日読了。
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(市立図書館にて貸出)
●松本市立旭町中学校「桐分校」について(p6)
・昭和30(1955)年に開校
・平成21年度までに691人の卒業生
・全国で唯一の刑務所の中にある中学校
・松本少年刑務所内に設置
・入学対象者は、義務教育を修了していない受刑者
・全国の受刑者の中から希望者を募集して、第3学年に編入
・1年間就学したのと、所定の課程を修めると松本市立旭町中学校長から卒業証書が授与される
<感想>
昭和30年に桐分校を開校させた際のエピソードに感動した。対象者が受刑者であることで社会感情が容認するかといった難題に取り組んだ、当時の小松弘之松本少年刑務所長。その行動力・実行力に敬服するとともに、桐分校の設置を受け入れた松本市、旭町中学校の懐の広さに、希望が見えた気がした。このようにあたたかな場所・人が少なからず存在するということは、これから更生を志す人にとって一筋の光となるのだと思う。
また、読んでいて強く感じたのは、社会における「居場所」の必要性である。年齢関係なく、中学生として社会に認められていること。そのことがどれだけ勇気を与えるか。ひとりの人に認められること、そして社会に認められること、この2つが達成されれば、更生は遠くないと思うのだけどなぁ。(世の中そんなに甘くないかな)
卒業したら桐分校は自分の居場所ではなくなってしまう。けれど心に刻んだ思い出を胸に、新たな居場所を見つけていってほしい。