日本発酵紀行 (d47 MUSEUM)
- D&DEPARTMENT PROJECT (2019年5月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
- / ISBN・EAN: 9784903097633
感想・レビュー・書評
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発酵デザイナーの小倉ヒラクさんが日本全国の発酵もの&それに関する人々や生活などを集めた紀行文
本の表紙の写真がとにかくかわいい!
内容も色々な土地を巡って話を聞いて
あまり知られていないような発酵ものもリサーチされています。
なんだけど…
私、ちょっとこの方の文章が苦手だわ~
なんというか…
「これでフィニッシュ!」
「このテクスチャーが…」
「菌がサヴァイブ~」
とか…
読んでたらちょっとこっぱずかしいような
ムズムズするような気恥ずかしさが…
いや、やっていることはすごいんだと思うんだけど…
ちょっとサブかった…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
紀行文だから,私の本棚の分類としてはエッセイに含めたけれども,あるテーマをもった紀行文なので,社会学の論文とも言える。がしかし,文章表現はとてもなじみやすく,一気に読んでしまった。
日本の発酵文化って,本当にいろいろあるんだなと思う。紹介されている一つ一つが興味深い。発酵食品そのものにも興味はあるが,それと関わっている人や町にも興味が出てくる。そして,いつか実際に町に行って食べてみようかなと思ってしまう。
ただ二つ,残念な部分がある。
ひとつは,目次にはある「小見出し」が本文にはないこと。本文の何カ所かに「※」はあるのだが,いつのまにか,次の話に進んでいる。あとで見返すときにちょっと不便だよ。もうひとつは,編集の関係だろうけれども,カラー写真が数カ所にまとめて収められているのだが,その写真の説明が巻末にしかないので,どれがどれなのかわかりにくい(ただし,大体分かることは分かる)。表紙の写真は,新潟の「かんずり」の雪さらし作業のようすだ。「かんずり」は大好き!
もしかしたら,編集者は,私が欠点として挙げた2点とも,分かっていてやっていることなのかもしれない。本書には「発酵をめぐる旅には,その道中も大切だ…」みたいな話も出てくるので,「ここからは,この話ね」って段落を切ることは敢えてしなかったのでは…ってね。
巻末には,いろんな会社のCMが入っていた。著者がデザインしたポスナーなのだろうな。
本書のことは,武田鉄矢のラヂオ番組「三枚下ろし」で知った。いい出会いをありがとう。
一カ所だけ引用を。
いかに文化を未来に受け継いでいくのか。ここには大事なヒントがある。伝統の本質を「様式」だと捉えると文化は変動の時代を生き抜くことはできない。「様式」ではなく「発想」、スタイルではなくコンセプトこそが文化の核なのだ。
魚がとれない。畑をやる人がいない。水が変わった、土が変わった。時代が変わり、人が変わった…。この「無い」状態を「有るようにする」意志こそが生きたデザインの源泉だ。文化は「危機によって消える」のではく「危機だから生き延びる」もののはずだ。(本書,p.206)
私の本棚にも紹介してある「地元学」の一例がここにもあるというわけだ。「あるもの探しをしていこう」。 -
発酵大国日本。
いざ全国の発酵を辿ってみると、その多様性と奥深さに驚かされる。
定量化と合理化が徹頭徹尾進められた現代のプロセスとはある意味対極に位置する発酵という営み。
必要に迫られた中での工夫から生まれた発酵が楽しみを生み出し、コミュニティにまで発展していく様というのは大変に興味深い。
目をつぶることが出来ない問題として、こういった営みの後継者がいないという点があるが
終章で紹介されているような「形式(How)ではなくなんのために(Why)やってるのか」という本質にフォーカスすることで
変容しながらも文化は保たれていくのではないかと感じた。 -
発酵が気になって、でもただ発酵の仕組みや発酵食品の紹介では満足しない。
その文化的背景、土地の香りを感じたい。
タイトル通り、発酵紀行ということで、その土地、その土地に生きる人の思い、営みの中にある発酵食品・製品を丁寧に紹介している。その土地、人に出逢いに行きたくなる。
この著者の文章は、ちょっと心ざらつくから、読み飛ばすところもあり…。 -
日本発酵紀行
2022年9月13日読了
日本各地のディープな発酵を探す旅ログ。
作り手へのインタビューはもちろん、土地ごとの歴史や地理を紐解きながら、「なぜそこに発酵食品・特産品が根付いたのか」説明してくれる。
本書を読むと、土地ごとに特色ある発酵が生まれ、その土地で作られ食べられ続けており、一つとして同じものがないと分かる。
土地の気候や特産品、都や海までの距離などの地理的要因、大昔に発酵の文化が伝わった歴史的要因など、さまざまな要素が絡み合って個性あふれる発酵が生まれ、わたしたちの暮らしを支えてくれていたのだ。
本書中に「ないからこそ限られた中で工夫して生み出そうとする」という言葉があった。
自然の脅威や不便さの中にあって、日々の暮らしを楽しもうとする先人たちの姿が思い浮かんだ。
制限のあるなかで生きる人々の強かさの表れ、それが発酵なのかもしれない。
日本に住んでいながらも、まだまだ知らないことだらけ!食べたことないものだらけ!である。
ぜひ本書に出てきた発酵食品を食べてみたい。(特に、秋田・ハタハタのいずし、川崎のくずもちが気になる…) -
発酵デザイナー小倉ヒラクさんらしさが詰まった本。発酵云々よりも、ふらりと旅に出てみたくなる。
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発酵デザイナーの著者が日本全国の何だこれは?の発酵食品を紹介する。
例えば北前船の航路だった尾道の造酢や、東航路の灘の酒造など発酵は歴史に紐づいている。
かつて貯蔵技術のなかった時代には、塩漬けや燻製などの貯蔵の方法としての発酵があった。
その土地独自の発酵が文化を醸成していた。
ファーストフードにあふれる現代でも、日本全国に土着の発酵食品が存在する。 -
発酵デザイナーの小倉ヒラクさんの発酵本2作目。
発酵文化を探索するフィールドワークの様子をそのまま記しており、各地の発酵への興味をそそられる。
文化とはその土地にあるものを使ってより良い生活を営むための人類の叡智の結晶の一つだが、発酵は文化と深い繋がりがある。それをこの本では感じることができる。
特に良かったのは宮城県の「あざら」を記している部分。文化継承の本質は「儀式」ではなく、「発想」であるという部分。
ファッションでもそうだが、一昔前のトレンドを今のテクノロジーと掛け合わせることで、新たな流行が生ずる。
この流れを理解した上で原点回帰している手法(木桶を使った酒造り等)を見ると面白い。
大体、こう言った揺り返しはまた、どこかで逆転するので、我々消費者は飽きずに発酵食品を愉しむことができるのだろうなぁ。