ところで軍国少女はどこへ行った

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  • ななみ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903355832

作品紹介・あらすじ

戦争がはじまったとき,少女は小学校低学年だった。工場動員は免れた。その代わり、校庭に薩摩芋を植えたり、人手不足の農家に農作業の手伝いに行かされたりした。その頃歌われた『学徒動員の歌』、すなわち、「君は鍬取れ、我は鎚、戦う道に二つなし」という戦時歌謡さながらであった。こんな歌に励まされ、お米や野菜を作ることは重要だと思っていたから、とにかく真面目に働いた。何しろ、この戦いは正しく、神州は不滅であると教え込まれていたから、どんなに敗け戦が続いても、日本が敗けるなどとは考えもしなかったのである。
 こうした「戦争観」の中で、少女たちは「少国民」となり、「軍国少女」へと成長した。こうした「日本観」は、「皇国史観」に基づく「日本国史」の授業で、しっかりと形成されていた。それに、勇壮で覚えやすい戦時歌謡は、少女たちの心を揺さぶり、「正義のための聖なる戦い」を疑うこともなかったのである。
 今,大人になった少女が「日本国史」と「戦時歌謡」を取り上げて、自分自身を語ってみようと考えたのは、こうした所似に他ならない。そして、このことは、「私」という一人の子どもの物語でありつつも、あの時代を生きた同世代の女たちにとっても、共有される物語に他ならない。

感想・レビュー・書評

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  • ところで軍国少女はどこへ行った
    本田 和子(著)

    【書誌情報】
    発行:ななみ書房
    A5判 184ページ 並製
    価格 1,200円+税
    ISBN 978-4-903355-83-2
    Cコード C3000
    専門 単行本 総記
    出版社在庫情報 在庫あり
    初版年月日 2019年4月15日

    戦争がはじまったとき,少女は小学校低学年だった。工場動員は免れた。その代わり、校庭に薩摩芋を植えたり、人手不足の農家に農作業の手伝いに行かされたりした。その頃歌われた『学徒動員の歌』、すなわち、「君は鍬取れ、我は鎚、戦う道に二つなし」という戦時歌謡さながらであった。こんな歌に励まされ、お米や野菜を作ることは重要だと思っていたから、とにかく真面目に働いた。何しろ、この戦いは正しく、神州は不滅であると教え込まれていたから、どんなに敗け戦が続いても、日本が敗けるなどとは考えもしなかったのである。
     こうした「戦争観」の中で、少女たちは「少国民」となり、「軍国少女」へと成長した。こうした「日本観」は、「皇国史観」に基づく「日本国史」の授業で、しっかりと形成されていた。それに、勇壮で覚えやすい戦時歌謡は、少女たちの心を揺さぶり、「正義のための聖なる戦い」を疑うこともなかったのである。
     今,大人になった少女が「日本国史」と「戦時歌謡」を取り上げて、自分自身を語ってみようと考えたのは、こうした所似に他ならない。そして、このことは、「私」という一人の子どもの物語でありつつも、あの時代を生きた同世代の女たちにとっても、共有される物語に他ならない。
    https://kaiin.hanmoto.com/bd/isbn/978-4-903355-83-2


    【目次】
    はじまりのことば

    第一部 戦時下の学校教育 
    第一章 「日本国史」の教育力
      ⑴  「縄文」も「弥生」も知らない子どもたち
      ⑵  「ヤマトタケル」の物語
      ⑶ 南北朝と後醍醐天皇
      ⑷ 吉野の行宮に集った「いい人」たち
      ⑸ 護良親王異聞
      ⑹ 天皇のよしあし
      ⑺ 私にとっての「いい人」たち
      ⑻ 大政を天皇に返した徳川最後の将軍

    第二章 私たちの万葉集
      ⑴ 撃ちてし止まむ
      ⑵ 防人のうた
      ⑶ 大君の辺にこそ死なめ
      ⑷ 生ける驗あり
      ⑸ 自分勝手な「万葉集」

    第三章 子どもたちの「唱歌教育」
      ⑴ 四大節の歌
      ⑵ 唯一無二の日本
      ⑶ チョクゴホートーカ(勅語奉答歌)
      ⑷ 日本を讃える歌
      ⑸ アジアの盟主

    第二部 戦時歌謡と子ども
    第一章 歌の力・歌詞のイメージ
      ⑴ 音楽を動員せよ
      ⑵ 映画とその主題歌
      ⑶ 唱歌コンクールと戦時歌謡
      ⑷ 唱歌コンクールと教科書の歌
      ⑸ 従軍看護婦ごっこ
      ⑹ ハニホヘトイロハ
      ⑺ 戦時歌謡と兄弟喧嘩
      ⑻ 「 私」の愛唱した戦時歌謡
      ⑼ 「任侠もの」の隠れ流行
      ⑽ 靖国神社の歌
      ⑾ 連合艦隊司令長官の死
      ⑿ 桜とアリラン

    第二章 子どもの戦争体験
      ⑴ 歌詞の力
      ⑵ 選民思想と日本神国論
      ⑶ 戦時歌謡の巧みさ
      ⑷ 替え歌のこと
      ⑸ 拡散者としての子ども
      ⑹ 子どもたちの戦時歌謡
      ⑺ 戦時歌謡と遊び歌
      ⑻ 戦時歌謡と私

    第三章 私という子どもの戦時観
      ⑴ 辞 世
      ⑵ 食べ物のこと
      ⑶ 母の江戸褄
      ⑷ もんぺと救急袋
      ⑸ 愛国百人一首のこと
      ⑹ 陸軍情報局推薦の映画鑑賞
      ⑺ 戦争ごっこ
      ⑻ 弟妹を哀れむ
      ⑼ 真面目だった「母」の真面目だった「子ども」
      ⑽ 文語体の活用

    第三部 軍国少女はどこへ行ったか
    第一章 私の戦後体験
      ⑴ 戦いすんで日が暮れて
      ⑵ 子どもは一直線
      ⑶ 男女同権
      ⑷ 洋書のこと
      ⑸ ダンスパーティー
      ⑹ 皆で旅行をしましょう
      ⑺ ところで軍国少女はどこへ行った?

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著者プロフィール

1931年、新潟県生まれ。お茶の水女子大学卒業。お茶の水女子大学学長を経て、お茶の水女子大学名誉教授。専攻は児童文化論、児童社会史。著書に『それでも子どもは減っていく』『異文化としての子ども』(ともに筑摩書房)、『子どもが忌避される時代』(新曜社)、『変貌する子ども世界』(中央公論新社)、共著に『〈少女マンガ〉ワンダーランド』(明治書院)、『誕生から死までのウェルビーイング』(金子書房)ほか多数。

「2012年 『女学生の系譜・増補版 彩色される明治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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