あわいの力 「心の時代」の次を生きる (シリーズ 22世紀を生きる)

著者 :
  • ミシマ社
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本棚登録 : 357
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908496

作品紹介・あらすじ

古代人には「心」がなかった――

「心」が生まれて3000年。
「心の時代」と言われる現代、自殺や精神疾患の増加が象徴的に示すように、
人類は自らがつくり出した「心」の副作用に押し潰されようとしている。

そろそろ、「心」に代わる何かが生まれてくるのではないか?

シュメール語、甲骨文字、聖書、短歌、俳句・・・。
古今東西の「身体知」を知りつくす能楽師・安田登氏。
「心」の文字の起源から次の時代のヒントを探る。

あっちとこっちをつなぐ不思議な力!
異界と現実の間(あわい)の存在(能におけるワキ方)であり、
古代文字の研究も重ねる著者が、まったく新しい時代の姿を求め、
「あわい」の世界に飛び込んだ・・・!
可能性は、「日本人の身体」にあり!?

シリーズ22世紀を生きる第2弾!!

感想・レビュー・書評

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  • 心が病む現代の心との付き合い方を心がなかったとされる起源前の文字や能の「ワキ」のあり方から紐解いたお話で面白い

  • なんとも面白かった。

  • 異界と現実界をつなぐ存在を能では、あわいといい、人は、身体という外と中をつなぐ、あわいを持って生きているという。

    文字が生まれたことで時間という概念が生まれ、心が生まれたという。
    心は三層構造で、表層がこころ、その下がおもひ(こひ)、一番下のそうは心(しん)という言葉や文字を通さず、相手に伝わる何かを心(しん)というのだそう。

    甲骨文字、古代ギリシャ語、シュメール語、古代メソポタミア神話、日本の古典、ロルフィングなど幅広い著者の知識がうかがえるが、能に始まり、能に終わる構成で、筆者は能を通じて世界を見ていることがよくわかる。

    筆者の生い立ちも交え、筆者の興味が詰め込まれ、興味深く読み終えられた。

  • 記録

  • 能を起点に、社会や人間を分析する安田さんの視点はいつも面白い。本書では「あわい(ものとものが重なる接線、境界)」をキーワードに、心やメンタルについて語っている。興味深かったのは、「見る」と「味わう」は自分の意志で閉じることができるが「聞く」と「臭う」は閉じられない。戦国時代から江戸時代に武器が退化した理由。「初」とは、衣を切ることから、つまり変化し続けなければならない。先人に認められないのは問題ではなく、先人がわからないようなことを作り出すことが肝要。いやはや、勉強になりました。

  • 内蔵感覚をひらき、溶け合う環境に身を委ねる”あわい”の感覚とは?(あわいの力/安田登)
    https://beyondthenexus.com/senseofawai/

  • 「心」は文字を使うようになって生まれた。他書でも安田さんが述べてきた考えが、本書では特に丁寧に解説される。心に偏ってもダメ、身体に偏ってもダメ。だけど身体を動かすことを足がかりに心をチューニングすることはできる。白黒はっきりさせたがる西洋文化を基盤とした現代の心の時代にあって、一見無意味なあわい(間)の力が求められるのではという安田さん。だからこそ明確な答えは本書にはない。あわあわとした感覚が残る読後感。

  • 自分の代でなにかを完成させるわけではないし、自分のやったことが受け継がれない可能性もある。しかし、それでも能全体にとっては何かの蓄積になっているという確信。

    「媒介」といった意味をあらわす古語が「あわい・あはひ(間)」です。

    間を、伴うことによって、人は神や自然とひとつになることができる

    「こころ」その下にある「おもひ」その下にある「心しん」

    心より心に伝ふる花

    こひ乞う
    欠落が埋まるまで不安で仕方がない状態

    ことばや文字にしなくとも一瞬で、伝わるなにか。心。

    こころがなかった時代。
    一瞬一瞬を生きる。
    言葉によって時間と記憶を獲得し、それによって「後悔」と「悲しみ」をはじめて感じたのです。
    身体的な時世のない日本語を使う日本人は。自己と世界をつなぐからだという「あわい」を日々無意識にかんじていきている

    こころがなかった時代の内臓感覚
    古代ギリシャ語、古代メソポタミア語、しゅめーる語、アッカド語、こうこつ文字にこころの概念はない。
    『新約聖書』のなかに「スプランクニゾマイ」という言葉があります。
    日本語では憐れみと訳されますが、元々のニュアンスは「内臓が動く」という意味なのです。
    アッカド語の憐れみには子宮という意味が。その感じが、相手の感情と、一体化するcompassionという感覚の原点になっているようです
    こころは内臓にある。

    「あはれ」という言葉は「あは」に接尾語の「れ」がついた言葉。「あは」は「ああ」、すなわちため息のこと。

    息でこころをコントロールする

    いのちは息(い)の霊(ち)

    神性や霊性をあらわすのに「ひ」「み」は静かな霊性、「ち」は強く蠢く霊性

    息は強く蠢く生命活動の象徴
    息によって霊力を引き出し、交信する。異界より招き、自分が霊そのものになる。

    見立ての力
    見えているのであって、信じるとは、ちがう見えないものを見る力
    歌。歌には目の前に幻影をありありと浮かび上がらせる力がある。呪術的な行為なのです。歌うとからだに染み付く。一体化する。

    能の「ふり」の本質は「歌」とおなじく、からだの動作を伴う「振動」にあります。語源は「訴える」。歌の本質は声で、空気を震わせとその振動で他者を動かす。「振動」は、振れる人の中にあるなにかを揺り動かす。その何かを目の前に出現させる力がある。歌を好んだ日本人は振動が持つ呪術的な力を感じとっていた。そして「ふり」の基本はなんと「不動」なのです。振動を体現する不動。高速で回るコマのように座れ、というように。静かであるほど内側には激しい振動が蠢いている。

    かんがえるはか身交る(かみかふ)
    外に引きずられるものを内へ。外と内の交わるところ。自然。

    問う。たふ。訪ふ、弔ふ。
    答えるかは関係ない主体。
    身体を通じて自己と環境が溶け合うような、か身交ふ状態が「あわひ」の状態を活性化してくれます。

    息は吐くことで生きる力を得る
    はくことは意識を外へ向ける。吐くことで緩む。

  • 音楽やダンスなど舞台に関わる上で、頷いたり、為になるような事が書かれていた。
    自分の身体に問いかけながら、時々思い出したい本。

  • 能のワキ方が書いた世界のとらえかたの本。
    ワキ方が異界と現実の間(あわい)であるように、かつて、人は外界と自己の内面のやりとりを心ではなく身体で行なってきたことを文字やことばの成り立ちから考える。
    時間や空間の「境界をぼかす」効用がわかった。

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著者プロフィール

安田 登(やすだ・のぼる):1956年生まれ。 能楽師のワキ方として活躍するかたわら、『論語』などを学ぶ寺子屋「遊学塾」を、東京(広尾)を中心に全国各地で開催する。関西大学特任教授。 著書に、『身体能力を高める「和の所作」』(ちくま文庫、2010年)『異界を旅する能』(ちくま文庫、2011年)、『日本人の身体』(ちくま新書、2014)、『身体感覚で『論語』を読みなおす――古代中国の文字から (新潮文庫、2018年)、『見えないものを探す旅――旅と能と古典』(亜紀書房、2021年)『古典を読んだら、悩みが消えた。――世の中になじめない人に贈るあたらしい古典案内』(大和書房、2022年)、『魔法のほね』(亜紀書房、2022年)など多数。

「2023年 『『おくのほそ道』謎解きの旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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