- Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
- / ISBN・EAN: 9784904536803
作品紹介・あらすじ
ナラティヴ・セラピーはこの本で始まり、セラピーはこの本から変わった。今もなお輝き続ける一番新しい古典、復刊。時代を変えた臨床家たちによる心理療法の原点。
感想・レビュー・書評
-
医学部分館2階心理学 : 146.8/MCN : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410170859
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ナラティヴ・セラピー」の基本図書の一つかな?
個人的には、アンソロジー的な本は、複数の著者が違うことをいっていたりして、読むのにパワーを要するので、読むのを後回しにしていたが、これは結構わかりやすかったかな?
原著は92年なので、もう四半世紀前ということになるが、今読んでも新鮮だし、色々なアプローチの「原点」に帰る感じがあって、何かがスタートする高揚感みたいなのが伝わってくる。
「ナラティブ・セラピー」とされているが、原題は、"Therapy as Social Construction"で、ニュアンスは違うかな?
最近の用法では、「ナラティヴ・セラピー」はホワイトとエプストンが始めた「外在化」と「再著述」を中心としたセラピーで、「リフレクティング」や「無知のアプローチ」まで含む場合は、「ナラティヴ・アプローチ」と呼ぶことが多い気がする。
その辺のところは、初めて読む人にとっては、やや混乱を招くかな?
内容としては、「社会構成主義」的なセラピーの流派の創始者たちによる論文に、全体を俯瞰する論文からなっていて、いずれも短いながらもぎゅっと圧縮した内容で、かつシンプルでわかりやすい。
もともとシステム論的なアプローチをしていたリン・ホフマンの論文は、どうしてナラティヴ的なものが大事なのかが説得力を持って語られているし、最後のガーゲンのナラティヴを「超える」論文もとても鋭いところを指摘していると思う。
全ての論文を通じて、専門家としての権威や真実を持ってセラピストがクライアントを診断するというモデルへの批判が伝わって来る。
こうしたセラピストとクライアントの関係性は、コーチングやファシリテーションにおいては、ある意味、当たり前のことであるのだが、精神医学の世界で、専門家としての権威を持たずにクライアントに接するということは、かなりの勇気とか、「あり方」とかが必要だろうなと思った。
ということは、これらの論文に出てくるようなアプローチは、通常の「健全な人」を対象とするコーチングやファシリテーションでは、より「実践しやすい」のではないかと思う。
色々な意味で、「社会構成主義」の実践に向けての頭の整理が進んだ。 -
おもしろいはおもしろいのだが。
タイトルにある社会構成主義というよりも、ほとんどはポストモダンの脱構築が中心のようでやや拍子抜け。
ウィトゲンシュタインよりもデリダの名前の方が多い気もする。
言語ゲームと「ストーリー」の関係はなんとなくは理解できるような気もするが、そもそもナラティブについてあまりに知識不足すぎて力及ばず。
もう一冊くらい読んでから読み直すくらいしないとダメか。 -
社会構成主義に基づいた心理療法に関して各専門家の論をまとめた一冊。大変刺激的な内容で、20年経ってもなお新しく感じられる。特定の技法を信奉し、傾倒しきっている人の常識を覆らせるであろう内容であり、元々社会構成主義に親和性のある人にはさらなる深まりを与えるであろう内容である。