- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784905042488
作品紹介・あらすじ
作家と編集者「魂」の触れあい。多くの芥川賞・直木賞作家を世に送った元文藝春秋の編集者がありのままを記す。
感想・レビュー・書評
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過日読んで感銘を受けた『編集者魂』の続編。
正編同様、著者が文春の文芸編集者だったころに深くかかわった物故作家たちの思い出を綴ったエッセイである。10人の小説家と1人の画家(宮本輝の『青が散る』の装画などで知られる有元利夫)を取り上げている。
これもいい本ではあるが、正編があまりに素晴らしかったため、一段落ちる印象は否めない。正編の中上健次の章のような、激しく心揺さぶる一編が見当たらない。
文章も、正編の緊密さに比べやや冗長。
たとえば、井上ひさしを取り上げた章では、著者と井上がファクスで交わした往復書簡的なやりとりが、なんと20数ページにわたって延々と引用されている。こんなに長く引用する必然性があったとはとても思えず、手抜きにしか見えない。
ただ、いいものもある。庄野潤三の章、水上勉の章はとてもよかった。
印象的だったのは、水上が中国で天安門事件に遭遇し、救援機で帰国した直後に心筋梗塞で倒れたとき(※)のエピソード。
生還はしたものの、心機能の3分の2を失った水上に、著者は「死の淵からの生還記」という原稿を依頼する。そのくだりがすごい。
《「おい、おれを殺す気かい」
弱々しい声ではあったが、叱声には違いない。しかし、私は引き下がらなかった。
「その覚悟で伺っております」
私はこの文章がどうしても欲しい、私が編集する誌上に掲げたい、と繰返した。作家にこれぞと思う原稿を依頼する時に、編集者は情け容赦もない。編集者魂がそうさせる。私は席を立つ気になれなかった。水上さんは根負けして、最後には「じゃ、書くよ」と言って下さったのである。》
※そういえば、このニュースがテレビの「やじうまワイド」で報じられたとき、コメンテーターとして出演していた長谷川慶太郎は、「文学者というのは、こういう死にざま(歴史的な動乱に遭遇して、という意味だろう)をするものなんだねえ」と発言した。テレビを観ていた人たちはみな、「おいおい、まだ死んでねーぞ!」とツッコミを入れたことだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
結局は自慢話じゃん,と思うけど,この世代の人には多い話だし,芥川賞はこうやってできていくんかぁとか,興味深かった。
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ふむ