映画「少年時代」を見て感激したので、原作である本作が気になって読んでみたが…映画と驚くほど異なり、こんなにもシビアだとは思わなかった。
結局のところ今も昔も「いじめ」というものは変わらずあって、本作ではその凄惨さを生々しく描いていた。
文体は主人公の潔が小学生からなのか、どこか優しく幼さがあるが、内容はまさに生き地獄。
潔は何度もいじめに苦しみ、自分の弱さに自責の念に苛まれる。しまいには戦争で被弾して死ぬのだ…などと考えるようになる。
それほどにこの縁故疎開は小学生の潔に深い傷を負わせた。
だけど、もっと目を覆いたくなったのは進だった。
ガキ大将の進がその地位から陥落した後、多くの同級生に無視されて前歯を折られるくらい何度も殴られる。
たしかに進は同じようなことをしたかもしれない。だけど、ここまでやるのかと子どもたちの暴力性に衝撃を隠せなかった。
潔と2人きりに見せる含羞んだ笑顔や海へ出て船に乗せたこと。本当の親友のような2人を見てる時は幸福を感じるほどだった。
何より悲しかったのは、進が以前から中学校受験に向けた勉強を一緒にしようと潔に言ってたが、進がいじめられる立場になって、最後の2人の会話の時に進がそれとなく潔と勉強したい素振りを見せたが、潔は言葉を濁して結局2人が一緒に勉強をする事なく終わってしまった事。
作者の経験を基にしているという事で、実にリアルで潔が味わった苦痛や後悔は作者自身しか出せない物だったのだろう。
この作品には続編「同級会」があるようなので、後日読んでいこうと思う。