無常の教え (手放す生き方2)

  • サンガ
4.60
  • (4)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 29
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784905425601

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『手放す生き方』の続編となる一冊。
    現代の阿羅漢と呼ばれるタイ出身の長老、アーチャン・チャー師の言葉が、彼の弟子ポール・ブレイター氏によって編纂されています。

    英語タイトルが「everything arises, everything falls away」
    まさに「無常」を説いた一冊です。

    仏陀が説いた道をたどり、彼の教えを自分の言葉で語るチャー師。
    仏陀の教えは、時に遠く困難な印象も受けますが、それを師は、時にユーモラスに、時に皮肉を込めて自分の言葉で語っており、聞く者の心に響くものとなっています。

    仏教に身近な日本人にとっては、その教えはかなり耳馴染みが良く、理解しやすいものですが、仏教に触れたばかりの欧米人にとっては、その教えのどれもが斬新で驚きに満ちた

    発想なのかもしれません。
    師と弟子のやりとりは、仏陀とその弟子のように形式的に仏典化されたものではなく、リアルなやりとりが伝わってきます。
    もはや超人的な立場にいる師ながら、やはり修業を重ね、煩悩と闘いぬいてきたことが彼の言動からわかるため、彼を慕う弟子がひきもきらずに集まる理由もわかります。

    修行と瞑想による悟りへの道を説く師。
    そこへ至るまでの厳しい道のりの説明も忘れません。

    また、修業を重ねることで、一般人との感覚の差が広がっていくことにも言及しているのが、真新しいと感じました。
    悟りを開いた人は、世間の人々を無知な存在だと感じ、世間の人は悟りを開いた人を、無反応な人物だと感じる点です。
    宗教人は、世間の常識とずれがあることは否めず、そこをどうならし、相互理解を目指していくのか、かねがね気になっている点です。
    やはり、その道の先達者に、迷いも困難も理解してもらった上で導いてもらえることが、その道を目指す者にとって何よりの力となるのでしょう。

    氏は森林内の寺院で瞑想修行を続けていますが、かつてはタイの国土の70%が森林で覆われていたところ、今では森林伐採が続いて10%程度に減っているとの記載もありました。
    そのことで、長年続けられてきた森林僧院の伝統が脅かされる可能性も、指摘しています。
    すべてが移ろいゆくものだというのは仏教の教えですが、森林寺院の伝統が変わるのは、なにか大きなゆらぎが発生するような気がしてなりません。

    全ては無情であり、変わりゆくもの。
    その考えを基軸として様々に発展する師の言葉は、例えを用いてわかりやすく、時に厳しく、時に突き放すものではありながらも、仏教徒ではない人にも強く語りかける力を持っ

    ています。
    やはり優れた宗教家は、その生き方そのものと含有を含んだ言葉が、迷える人々を導いていくもの。
    全編を通じて、星氏の翻訳による、きれいで詩的な文章にまとまっています。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

1918年、タイ東北部イサーン地方ウボンラーチャターニー近郊に生まれる。20世紀のタイにおけるテーラワーダ仏教を代表する僧侶の一人。9歳で沙弥出家。20歳で比丘出家をする。1946年、父の死をきっかけとして、仏法の真髄を求めるための遊行の旅に出る。数年の遍歴遊行の後、アーチャン・マンに師事。瞑想実践に打ち込む。1954年、生地近郊の森に自らの僧院であるワット・パー・ポンを設立。簡素な寺院として始まったワット・パー・ポンはタイ有数の森林僧院となる。1992年、逝去 。

「2013年 『無常の教え』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アーチャン・チャーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×