安ければ、それでいいのか

制作 : 山下 惣一 
  • コモンズ
3.45
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784906640447

感想・レビュー・書評

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  • 価格で表現されないものへの危惧

  • この本は今から12年以上前(2001)に書かれたものです、丁度、マクドナルドの65円バーガーが流行していた頃でしょうか。

    確かに高価格の食品をいつも買うのは難しいので、安い食品
    に興味をそそられる気持ちも分かりますが、最近では安いものには「ワケ」があることも分かってきました。

    定価で販売されている食品が弊店間際になって安くなっているのは自分でも理由がわかりますが、始めから安く売られているモノは、覚悟が必要なのだなとこの本を読んで痛感しました。

    以下は気になったポイントです。

    ・マクドナルドでは、全世界のマクドナルド社が共同チーム体制を組む、どの国とどの国が共同で仕入れるか、どのエリアは分散するかを調整する(p10)

    ・もともと半額セールとなったハンバーガーなどは、野菜と呼べるのは、ピクルス一切れと、アメリカ産たまねぎしかない(p12)

    ・新製品のリサーチは静岡県で行うメーカが多い、日本全国の平均的な結果が出るというのが定説(p15)

    ・徹底した合理化とコスト削減による低価格戦略が、マックの創業以来の方針だったわけではない、1971年から1985年までは一貫して値上げ、安売り戦略になったのは1995年(p16)

    ・マックは商品そのものの価格を上げるより、価格を下げることで「バリュー」を相対的にあげる道を選んだ(p21)

    ・マックとモスの棲み分けができていたが、少ない資本でこまめに儲けるサテライト店を郊外や住宅街に大量に出店して安売りを始めたので、棲み分けが崩れていった(p32)

    ・オーストラリア産牧草飼育の牛肉は、アメリカ産穀物飼育牛よりも安い、なかでも肉用種よりも乳用種が安い、これがマックのパティの主原料である(p37)

    ・卵1個50円は高すぎ、輸送費やなにか入れても1個30円だろう(p79)

    ・トップ200社の総売り上げは、世界総GDPの27.5%(1995)に相当している(p180)

    2014年2月23日作成

  • 20130705読みたい
    20140120読了
    2001年出版。10年以上前の本。そのころからすると地産地消は広がったんだろうか。●日々の買いもので国産のものを買うか、輸入物を買うか、その小さな選択が、「どういう社会を支持するか」の信任投票行為である、というひとこと。まっとうなものにはまっとうな値段がある。安いには安いなりの背景がある。●マックのハンバーガーが65円の低価格を実現したカラクリに、眉をひそめながら読んだ。学生の時はマックを利用したこともあったけれど、まずくても買ったのは安いから(今はファストフード自体、利用する機会がない)。最近のマックは高級路線だと聞くが、まずくて高かったら惹かれないだろうな。●編著者の山下惣一氏、資本主義に思いきり異議を唱えている。事業を拡大して金儲けをするのではなく、生まれ育った土地を耕して家族みんながつましく暮らせるだけの収入を得ながらゆったり元気に暮らす、そんな幸せの形もあるんだろう。

  • “安ければ、それでいいのか!?”
    “よくないっ!!”

  • 日本の食糧自給率は半分にも満たない。
    それは、いったいどういうことなのか?
    安いものには、安いだけの理由がある。
    私たちの食とはなにかを考えさせられる。

    とくに本文にあった日本のマクドナルドの藤田社長の言葉にうすら寒い恐ろしさを感じた。
    「米と魚を食べてきた二〇〇〇年来の日本人の食習慣を、二〇年後に成人となる子供たちにターゲットをしぼることで変革できるという“長期大戦略”を構想した」
    それは、日本人としてのアイデンティティーを侵すものだと、恐ろしく感じた。

    多くの日本人の子供は義務教育を終えると高校へ進学する。
    そしてその半数以上が大学へ進学する。
    大学に進学して農業を始めようという人間は少ないだろう。
    これは日本の教育とも関係している事実のように思う。
    全ての人間が指導者になりえることはなく、指導者の元には従事者がいる。
    職業の分野に関しては右に倣えではやっていけない。

  • 安いのにはそれなりに理由があるとは思っていたが、想像以上でびっくりした。ファーストフードはもともと嫌いだけど、一層嫌いになった。もう付き合い以外で行かない。元から付き合い以外で行かないけど。

  • 「安ければそれでいいのか」と自分でも最近感じるようになっていた。スーパーの野菜は安いけど、みずみずしさも新鮮さもないなと。
    同時に輸入品がたくさん陳列されているのをみては、日本の農業はどうなっていくんだろうと不安にかられていた。
    この本はそんな私の不安を裏付けるような恐ろしい事実を次々と掲げている。
    食べるものには正当な値段がある。消費者は何を選択するべきなのか考えよと。
    食べるうえでの安全性も市民の草の根によって守られていく。
    うなづける話。
    ただ、いいものを選びたくても家計を切り詰めているものにとってはそうも言ってられないという面もある。
    そういう実態にもう少し寄り添ってもいいのかなとも思った。

  • ◎安さの陰に潜む矛盾
    65円ハンバーガーの裏にあった、アメリカ国内で明らかにされた労働実態。
    グローバリゼーションが拡大する中で途上国を中心により広く蔓延している。


    ◎減少するアメリカの中規模農家
    厳しい価格競争の中で農家巣が減少していく中で、規模拡大が進んでいる。
    農業補助や流通・市場の合理化など大規模農業の優遇政策と農産物の輸出・輸入拡大により、中規模以下の農家の割合が減少する一方、大規模農家が大きくシェアを伸ばした。

    市場開放の裏返しとして逆に安い農産物の輸入が増大し、激烈な価格競争下で農業部門の再編成が行われた。


    ◎補助金への依存
    その低価格は政府のてこ入れ抜きには成り立たない。
    1996年農業法に、価格指示優遇制度や作物保険が組み入れられた。

    連邦補助金の総額715億ドルは、約200万戸の農家総数で割ると年間1戸あたり約5100ドルだが、生産規模の大きな農家に支払われる構造のため、約1/4の農家が全体の84%を受け取っている。


    ◎低賃金移民労働力に支えられているカリフォルニア農業
    約180万人に及ぶ農業雇用労働者が働いており、そのおよそ8割が移民と推定される。
    カリフォルニアでは農業雇用者の55%が非合法で流入、非登録雇用の形態で働いているようだ。


    ◎移民労働力が果たしてきた役割は、農業の発展に大きく寄与してきた。
    居住権をもった多くの移民が生活基盤を気づき、よりよい雇用先へと移っていく。その一方で、新たに合法・非合法を含めて多くの移民や出稼ぎ労働者が入ってくる。

    低賃金のヤミ労働力市場が、さまざまな産業の周辺部分に存在している。


    ◎労働省の行ったちょうさでは、果実の摘果・収穫作業に関して1/3の農場では、国の取り決めた最低賃金以下しか支払われていなかった。

    病気や怪我をしても何の補償もなく、劣悪な環境に置かれている。アメリカ国内に第三世界的状況を作り出している。


    ◎小規模農業を支える動き
    ファーマーズ・マーケット(登録農家による直売所)
    背景には、アメリカ社会が抱える貧困問題とコミュニティ崩壊減少がある。
    商店やスーパーは富裕地域に偏在していった。貧困層は、スナック菓子や缶詰に頼った食生活になり、糖尿病や高血圧を多発。

    そういった社会問題の深刻化をうけ、市民団体等が貧困層の食料事情を調査し彼らの食料を補償するプロジェクトを展開しだした。


    ◎市民農場プロジェクト
    フロム・ザ・グラウンド・アップというグループが、とくに低所得地域住民向けの農産物スタンドを開設し、プロジェクトの所有する農場でボランティアによって生産された農産物を販売している。

    持ち株制で、農場株を持つ個人、レストラン、協同組合などが、生産された農産物を受け取る仕組みが一般的。


    ◎ファームランド・トラスト
    減少する農地を保全し、環境保全型農業の振興をはかる農地信託運動。


    ◎弱小農家が相次いで消滅してきたアメリカだからこそ、一種の社会的対抗力としてこうした活動が活発に展開されている。


    ◎アメリカの政策や創業は、自由貿易と市場万能主義が主流をなしてはいるものの、よくみると一枚岩ではない。多様な動きを内部に秘めている。
    農業の再建には草の根市民や農民の地道な運動こそが大きな鍵を握っている。


    ◎主要穀物輸出国が北米大陸に極端に偏在
    1980年代にはいってまもなく、唯一EUが強力な農業保護政策(価格補償、補助金政策)によって生産過剰状態に入り、輸出国に転じた(一種のダンピング輸出)。

    アメリカ対EUの貿易摩擦を激化。大国同士の農業保護の補助金合戦で、世界の農産物のとりわけ穀物市場価格は大きく低落。


    1990年代以降の農業貿易交渉では、農業保護の削減目標がGATTおよびWTOで協議されている。


    ◎1973年からの需給逼迫時に、カーギル社を筆頭とする少数の穀物商社によって集中的に支配された。
    川上から川下までの世界の食料システム全体が、少数の巨大アグリビジネスの強い影響下に置かれていった。


    ◎党の指導に忠実な中国農民
    1999年の日本のセーフガード暫定発動で、ねぎの輸入枠があることを知った農民たちは、畑に植えてあった苗を引き抜いて別の作物に転換したという。

    作付けがあっという間に1/6になった。中国共産党の指導ではないか。

    計画経済の中で長い間、農民は売り先の心配がなかった。改革・開放政策で個人請負制となり、ノルマ以上は自由販売となったが、マーケットは地元の自由市場しかない。

    だから、売れないものは作らない状況になっている。

    したがって、輸出用についても「これはやめろ!」と党の指導があれば、すばやく対応するのではないか。村々には党書記が常駐しているから、ここが司令塔だろう。


    実際、セーフガード発動後に葱の値段は暴落し、1kgあたり26円のコストをかけて生産したネギが17円で買い叩かれ、日本のスーパーで210円で売られていたそうだ。


    ◎WTOが発足した1995年以降、世界中の農民たちが農業で食えなくなっているのだ。
    安値攻勢による弱小農家の淘汰は必然的に集中をもたらし、さらなる競争と淘汰を招き、ほとんど出血価格による安い原材料を使って巨大食品企業が世界を席巻する。

  • 激安を消費者が追い求める余り、結果として他の部分(安全性や食品産業の労働環境など)が結果として非常に軽視されているのではないかという事を感じた。

  • なぜ、あんなに安く販売できるのか!
    食の安全って・・・・自分のみは自分で守らなくては
    安全にはお金がかかる。
    どこで折り合いをつけるかは、自分次第

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