女の子は本当にピンクが好きなのか (ele-king books)
- Pヴァイン (2016年2月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784907276478
感想・レビュー・書評
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面白かった!
なぜピンクが女性の色となったのか、日本と海外の歴史から始まり、女児向け玩具などを具体例として現状も丁寧に述べられている。
親しみやすい切り口からのジェンダー論。
幼い頃からピンクに憧れと憎しみを抱き続け、近年ようやく和解しつつあるつもりだった私にうってつけの本だった。
とりわけハッとしたのはここ。
『ある母親は、自分がなぜ娘がピンクを好むことを嫌がるのかを自問した。「キラキラ、ピンクのプリンセス、デコネイル、ティアラ……そうしたものを弱く、退屈で、頭の悪いことと同一視していたのね。それは間違いだった」』
ああそうか、ピンクに見下されていると思っていた私は、ピンクを見下してもいたのか、と目の醒める思いだった。
更にこの本が良かったのは、女性だけでなく男性についても言及されていること。
「ピンクの女性性の押し付けに悩む女性たちが自分だけのイケピンクを見つけるように、既存の男性性と相いれない男の子が自分だけの男性性を見つけられるよう、大人が助けてあげられることもあるのではないだろうか。」
ここでは子供について書かれているが、年齢問わず、押し付けのジェンダー性の苦しみを軽減していくにはどうすれば良いのか、考えていきたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
女として生まれ育ち、なぜこんなにもピンクがついてまわるのか?その理由を知りたかった。そしてなぜ水色や青が好きになってしまったのかも。
残念ながら本書には明確なその答えは載っていないが、ピンクと女性、ピンクと男性の切っても切れない古くからの関わりを学ぶことができる。
ただとても共感できる部分もあり、特に「女であるだけで“やっぱりピンクが好き”と押し付けられるのが嫌い(または苦手)」というニュアンスの一文には、いたく感動した。
ピンクに対する言語化しづらい感情は、こういうことだったのだ! ピンク=女の固定概念に、自称ピンク嫌いの女子たちは怒り、敵対視していたんだ。もしそんな風に言われることもなければ、ピンクはただのピンクであったかもしれないのに -
ピンク=女の子という認識は、歴史が浅いことを知る。
甥っ子に洋服をプレゼントする時は、あえて水色のものは選ばないでいるけれど、いろいろなところに無意識に叩き込まれている「呪い」があるなぁということに改めて気づかされる。この本を読みながら、駅の女子トイレは赤(でもピンクが使われているところは見たことないかも)、男子トイレは青が使われていることを見て、これが色が変わったらどうなのだろう。一瞬混乱するかもしれないなぁと思ってみたり。相変わらず新幹線や飛行機(ANA)での英語アナウンスは「レディース・アンド・ジェントルメン」が使われいるなぁと思ってみたり。 -
▼世界中どこの国の国旗にもピンクは存在しない。ピンクは愛国心や血なまぐささから心理的に最も遠い色であることが、文化を越えて共有されていることの現れである。(p.35)
▼彼女たち[アンチ・ピンク派]が懸念しているのは、ピンクそのものより、ピンク色の玩具に込められた意味にあるのだから。もっとも多い批判は、お世話、家事、美容といった従来の性別役割分担を踏襲するピンク色の玩具で遊ぶことで、低賃金労働、無償労働に追いやられてしまうのではないかといったものである。(pp.95-96)
▼[過酷だったり低賃金であったりしても大半の女子がピンクの道へ進む]第三の理由としては、「無垢な美少女」「尽くす母親」といった自我や欲望を持たぬ女性を理想像として刷り込まれて育った日本の女性は、自分の欲望を見つめることに慣れていないことが挙げられる。自分の能力への自信、キャリア願望、承認欲求などを恥じる人は、「自分は客観的に見て何に向いていて、本当は何をしたいのか、そのために何をするべきなのか」を突き詰めて考えないまま大人になる。そして、周囲の期待する女性像にわが身を添わせてしまうのだ。
繰り返すが、ピンクカラーを目指すこと自体が間違いなのではない。問題は、女性の大半が狭い道に追い込まれることで、その多くが低賃金に甘んじざるを得なくなるという構造そのものである。(p.158)
▼…母性、エロ、幼さ、そして献身…日本におけるピンクは意味が何重にも重なっている。一言でまとめると「客体であれ」という期待だ。母と子の甘い世界に浸って育った人ほど、こうした期待に応えない女性への嫌悪感情をあらわにする。「女子」という言葉を嫌う人は未だに多い。すでに自分の世界を持っている女性にとって、ピンクは抑圧の象徴でもある。その手の期待が薄まる中年期以降、ピンクへの愛憎が薄れるのも、当然のことなのかもしれない。(p.190)
・須川亜紀子『少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか』2013
・リサ・ジョンソン、アンドレア・ラーニド『ドント・シク・ピンク』(邦訳『女性に喜ばれるマーケティングの法則』)2005
(2018/8/2再読)
(2016/6/22了) -
小難しい話じゃないので、すらすら読めた。
ピンクが持つイメージや幼少期の影響による女性性の意識など、言われてみれば確かにな話。
自分もピンクに対して「ぶりっ子」「子供っぽい」「"女子"っぽい」というイメージを持ってて、服や小物で使うことを避けたな〜。
改善するための提案をしているというより、子育て中の母親らしい目線でピンクにまつわる様々な歴史、現状を教えてくれてる感じ。
子育てのことなんて想像もできないけど、人工知能やロボットが活躍する時代が迫る中で、STEM女子の件を知っておいて損はないと思う。 -
この本で知ったこと
ピンクを使う国旗はない
第二次大戦後のアメリカで帰還兵の就職口確保のため、政府主導で女性の専業主婦化がすすめられた
眼の構造の性差
網膜の神経細胞節分布が男女で大きく違う。
位置・方向・速度…M細胞 男性に多い
色・質感…P細胞 女性に多い
お世話・家事・美容→低賃金・無償労働
ピンクは赤ん坊の色
3~4歳の子供は「自分が何者か」を知るために性役割に固執した遊びをする。女の色、男の色などにもこだわる。ステレオタイプをたっぷり吸収した後はまた好みが変わる。正反対の色を好むようになることも多い。 -
【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
https://opc.kinjo-u.ac.jp/ -
「不道徳お母さん講座」関連本。
ピンクと女性性が結びついた歴史、ディズニープリンセスとピンクグローバリゼーション、女子向けSTEM玩具、ダサピンク現象。いずれも非常におもしろかった。納得感があった。
以下の記述が心にぴったりあった。
p.133
押し付けた覚えもないのに3-7歳の娘たちがこぞってピンクやキラキラ、プリンセスを好むのは、おそらく生まれながらの性質なのだろうという見地にリベラルな親は到達しつつある。ピンクを砂糖とするならば、教育要素のないピンク玩具は砂糖と人口着色料をたっぷり加えたジャンク菓子、ウーマンリブ時代の中世的玩具は加糖ゼロのストイックなマクロビおやつ、女児向けSTEM玩具は砂糖ひかえめのヘルシースイーツといったところだろうか。 -
ピンクを例にこれだけ議論されていることがあるとは。参考になりました。
私はオッさんですけど、ピンク色のワイシャツをきて会社に行きますけどね。全然気にしない、というか、好きな色なのだが。