そこに私が行ってもいいですか?

  • 里山社
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907497163

作品紹介・あらすじ

女とは、階級とは、国とは、人種とはー。海を越え、運命を切り拓く少女たちの物語。構想10年。国際アンデルセン賞韓国候補作家が、日本軍慰安婦、対日協力者、アメリカ日系人収容所など、複雑な日韓の近現代史を、女の視点から描く傑作エンタテインメント。人間は複雑で多面的な存在で、完全な善人も悪人もいない。誰もが自らの欲望や利益を前に、揺れながら生きている。人間を日帝強占期という歴史の枠組みに閉じ込めて、二分法的に描きたくなかった」ーーイ・グミ(本書より) 2018年度国際児童図書評議会オナーリスト選定図書。

感想・レビュー・書評

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  • 『そこに私が行ってもいいですか?』 - かもめもかも(2023-05-10)
    https://hatekamome.hatenablog.com/entry/2023/05/10/185604

    Lee Geum-yi
    http://leegeumyi.com/

    須山 奈津希(@suyama_natsuki) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/suyama_natsuki/

    そこに私が行ってもいいですか? | 里山社
    http://satoyamasha.com/books/2703

  •  キム・スナムとユン・チェリョンの二人の少女の物語。それは日本が韓国を併合していた時代だ。貧しい家の娘のキム・スナムは親が娘をお金で売ってしまった。そして子爵であるユン・ヒョンマンの娘であるユン・チェリョンの小間使いをすることになって屋敷に連れてこられた。それは彼女が七歳の時だった。そしてチェリョンも同い年だった。
     1929年に総督府が開いた朝鮮博覧会にユン・カンフィは妹のチェリョンと小間使いのスナムを連れてきた。字も読めないスナムは周りを見渡してキョロキョロした。チェリョンが飛行機に乗るというのでカンフィはスナムにここでじっと待っているんだと言って飛行機のところに行った。そして戻ってみるとスナムがいない。
     スナムは、乳母をやっているスリネの息子のテスルに字を習っていた。朝鮮文字はそれほど難しくないから大丈夫だといわれて。どこに行くにも文字を知らなければこの屋敷の中から出られないから。
     東京に留学に行ったカンフィはある年の冬休みには帰ってこなかった。同宿の友達が朝鮮人留学生の秘密結社に入っていたのだ。それに関連していたかは分からないがそれからカンフィの消息は途絶えた。カンフィを慕っていたスナムは、どうか無事でいてほしいと祈った。
     五年制の女子高等普通学校を卒業したチェリョンは、日本に留学したいと言い出した。ヒョンマンは娘を遠くにやりたくなく、梨花女専はどうかと説得にかかったが、チェリョンはどうしても内地に行きたいと言ってきかなかった。一人より二人の方がいいだろうと思って、ヒョンマンはスナムを娘の小間使いとして一緒に京都に送ることにした。
     ここまでスナムとチェリョンは一緒に行動していたが、京都で独立運動に関わった朝鮮人留学生に恋をしたチェリョンは、独立運動に金銭を提供していたと警察に逮捕された。驚いたヒョンマンは娘を助けたい一心で、会社の部下の日本人と偽装結婚させてアメリカに行く船に乗せる手はずを整えた。そして、スナムを娘の代わりとして皇軍女子慰問隊に行かせたのだ。そこから二人の女の子は、スナムはチェリョンとして、チェリョンは日本人の戸籍を貰って寺尾順平の妻のひかりとなって生きていくことになった。
     韓国併合、3.1独立宣言、大韓民国臨時政府、アメリカの日系人収容所。等々の出来事が背景になったり、直接登場したりする。青少年向けの小説だというものの、韓国が受けた苦しい歴史が直接間接に描かれて、日本人にとってもその歴史を直視するように迫ってくる。二人の女性。特にスナムは、거기, 내가 가면 안 돼요?(そこに私が行ってもいいですか?)と言って、朝鮮、満州、中国、アメリカまで出かけて行った。二人の一代記を読むようだった。中には読むのが苦しくなるような話もあるが、実際の話を題材にして書かれてあるそうだ。

  • 国籍、性別、環境、自ら選べない運命。 身分が低い家に女性として生をうけたばかりに 苦しみぬいた人生。 まるで大河ドラマを一年間見続けたような読後感。


    歴史小説であり、時代に翻弄されたチェリョンとスナムという二人の女性が繰り広げるヒューマンドラマでもあった。

    チェリョンの代わりとして生きるスナム。
    貧しい環境で育ったがゆえに、自分の意志とは関係なく時代の流れのままに流された人生。
    日本軍慰安婦として拒否も反抗もできずに性の奴隷として生きていく。
    一日に何十人もの男たちの性のはけ口の道具とされる日々。
    妊娠した女性はもはや「慰安婦」としての生活もできない
    ただの厄介者となり、容赦なく簡単に撃ち殺される。
    チェリョンもまた寺尾ひかりという日本人として全く別の人生を生きる。

    「生きる」ために、国籍も、名前も偽り全くの別人として
    生活する。想像しただけでも苦しい。

    女とは、国とは、階級とは、人種とは…。
    どれほど富を得て裕福な生活になっても
    嫉妬し、男を求めてしまう女もいて。

    この物語はフィクションだろうが、相当な取材をされたんだろうなと思うと
    頭が下がると同時に日本軍慰安婦の方々の気持ちを思うと苦しい。

    現代社会では起こりえないと思っていたが
    環境が変わればどうなるか分からない。
    今後このような悲劇が世界中のどこででも起きないよう、
    私たちは忘れてはならなない。

  • 導入の掴みから、次の展開を楽しみにしながら読み進めた。
    朝鮮人、女性、貧乏など弱い立場の人間には人権がなかった時代。必死に生きていた人たちがいた。
    時代が違えばチェリョンもスナムもっと幸せに生きれたのではないか。
    またかつて日本が支配していたころの空気感について書いている本を読んだことがなかったので、参考になった。
    韓国では中高生が読む本と聞いたが、歴史を知る本となっているのだと思う。
    まるで全員の登場人物が生きていたように感じ。
    ただ最後の方が雑に終わった感じがした。もっとハッピーに終わって欲しかったなぁ。スナムが最後欲があったこと書いてたけど、チェリョンの人生の一部は自分だと主張したかったんだよね。晩年はそのせいで息子が死んだわけだし。

  • ふむ

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/657204

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