- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784907583781
作品紹介・あらすじ
「アラブの春」とはいったい何だったのか――。
アラブ世界のポピュラー音楽を分析することで、
二〇世紀後半から現在にいたるアラブの若者文化と、
革命の真意が見えてくる。
SEALDsなど、新しいデモの形が日本でも広まる中で書き下ろされた、
アラブ世界ポップカルチャー研究の第一人者による渾身の一冊!
2011年、アラブ世界の若者たちは自由を求める「革命」を起こし、
その一環としてエジプトではムバラク独裁政権が倒された。
しかし2013年、エジプト初の文民大統領であるモルシー政権が
軍による「クーデター」によって倒されると、
若者たちの多くは軍部主導の新体制を支持した。
このような、一見すると独裁への逆行、
民主主義の後退ともみえるエジプトの社会情勢は、なぜ生じたのだろうか。
革命の背景やその後の推移について、
政治的・経済的な要因から説明する試みはずいぶんとなされている。
しかし、現地で「若者(シャバーブ)革命」と呼ばれるこの動きを
真に理解しようとするならば、
革命を支えたアラブ世界の「若者(シャバーブ)」たちが何を考え、
何を求めているかを知るべきだろう。
本書は、筆者が長年定点観測を続けてきたアラブ世界のポピュラー音楽の分析により、
20世紀後半から現在にいたるアラブの若者文化の歴史をたどることで、
彼らにとってこの革命とは何だったのかを解明する。
それとともに、現代国際社会を理解する鍵となる中東情勢を、
音楽という切り口から分かりやすく解説するものである。
感想・レビュー・書評
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(後で書きます。参考文献リストあり)
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ナセル、サダト、ムバラクと大統領が変わり国の在り方が変わる中、それぞれの立場で民衆を動かすメディアとしての大きな役割を持つ音楽の変遷が著者のYouTubeプレイリストと共に読み進めて行けてとても面白かった。音楽がエンターテイメントや純粋なアートとして独立した存在の日本では、例えばSEALSのフジロック出演に「音楽に政治を持ち込むな」と言う批判も出ていたが、ナセル氏のアラブ全体主義的な時代のウムクルスームス、民主化期のカイロキー、どちらを見ても人を集め人を動かす為にはとてつもなく大きな力を持つメディアである事は間違い無く、元来音楽にはそう行ったパワーがある事に気付かされる。だから平和な日本では逆に音楽の持つ力を利用される事を潜在的に恐れて、そういった批判も出るのだろう。反トランプなアーティストが主導で民衆を動かすアメリカを見ても同じ感想を持った。
とにかく音楽は極右でもリベラルでも無い、ひたすらに人を集めるメディアなのだ。
あと、アラブの春の中でもサイレントマジョリティの存在に触れてくれているので、中立的な立場で読めた点が良かった。 -
音楽から中東情勢を理解するという視点が良い。読みながらyoutubeを見ると、歌詞とかあからさまで感覚の部分からアラブの春を理解するきっかけになる。