AIDで生まれるということ 精子提供で生まれた子どもたちの声

  • 萬書房
4.33
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907961008

作品紹介・あらすじ

本書は非配偶者間人工授精(AIDあるいはDI。夫以外の第三者から提供された精子を用いた人工授精)で生まれた人たちが、自分たちの体験を、自分たちの言葉で綴ったものです。
 不妊治療の一つであるAIDは60年以上にわたり行われてきたにもかかわらず、秘密にされ、生まれた人の声はこれまでほとんど顧みられることがありませんでした。最近は、AID以外に卵子提供や代理出産など第三者の関わる生殖技術が行われはじめていますが、その是非を論ずるとき、生まれた子どもの声を知ることは必須です。
 AIDで生まれた人が何を思うのか、育つ家庭で何が起こっているのか等々、まずは長い歴史のあるAIDの実情に目を向け考えてほしいと願い、本書はつくられました。法整備に向け、この技術を社会全体がどう受け止めるのか議論するためにも必読の書です。

感想・レビュー・書評

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  • 土屋隆夫の小説で知った非配偶者間人工授精だが、その子供たちが大きくなって自分の出自を知り、声を上げ始めた。当事者たちの手記と対談、解説。

    ドラマやフィクションで母の不貞で…とか、実は養子で、両親が再婚で父か母の連れ子だった、とはよくある話だが、ここで語られる話は告知後、両親への不信が別の形で以降の親子関係に明らかに影を落としており、余りに痛ましい。

    母親は「自分の腹を痛めた」子供について所有物のように執着するが、父親の心境は殆ど語られない(提供者も)。父方の親戚から提供を受けた方は例外的に遺伝的父親は分かる方が1人いるが、それはそれでキツそう…。

    海外では自分の出自を知る権利(精子提供者を知る権利)の法整備が進んでいるそうだが、日本では全然進んでないそうですね。

    日本でこの制度を始めた慶應大学医学部の先生方はまるで罪悪感がないって倫理的にどうなの、と思わざるを得ない。子供が生まれてそこでお役目御免って、そりゃひどい。その子供へのケアとか全く考えてなかったのか。

    父親方からの遺伝としか思えない(母方にその病気が発病した人がいない)難病に苦しむ方の手記は言葉を失う。

    男性不妊症自体研究が女性に比べ進んでいないという専門家の話をブログや本で読んだことがあるが、今後こういう話はもっと出てくるのではないか。

    不妊治療に従事する人や医学を志す人には、ここの非配偶者間人工授精で生まれた人たちの対談を是非読んでいただきたい。

  • 本書中でも指摘されているが、これまで顧みられることのなかった人たちの、貴重な肉声が記録されている。もうそれだけで、星5つの価値はある。
    前半は各当事者のライフストーリー、座談会を経て、研究者によるまとめとなる。非常に親切なつくりであり、初心者にとってわかりやすい構成である。
    最初のライフストーリーには、正直尋常でないものを感じるところもあった。自分の身体的特徴はこう、趣味はこう、思考の傾向はこう、と書き連ね、事あるごとに「今の家族には、こういう人間は他にいない。もしかしたら精子提供者の特徴かもしれない。このような特徴を持つ人で、心当たりのある人はいませんか?」と呼びかけをくり返すのだ。子供が親の好きなものを必ず好きになり、親の職業を必ず継いでくれるのなら、親にとってこんな楽ちんなことはないだろう。手記の内容は、誤解を恐れずに言えば明らかに「異常」なのだが、そもそもかれらを異常にせしめたのは誰なのか、という話になるのである——かれら自身では絶対にありえない、少なくとも。

    当事者たちも口々に訴えているが、このような怒り、悲しみ、絶望、焦燥、アイデンティティの喪失が「医療の進歩」「希望」といったキレイな言葉の陰にあることを、まずは全国民、いや全人類が知る必要があるだろう。

    AIDで生まれた人たちは、子供がどうこうといった話題になりがちな盆正月が苦痛であり、それは不妊に悩む人たちもまったく同じことを訴えるのだそうだ。そこで研究者が指摘する、「親は自分のつらさを子供に転嫁した結果になっている」との言葉はあまりにも重い。また、生まれた人特有のものとして「自分の誕生日が苦痛」というのがあるそうだが、こちらはその親の側は、むしろやたらと言及したがるのだそうで、まことに人間の業の深さを思わせる。

    2014/9/9読了

  • 非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ(DOG: DI Offspring Group)
    AID(非配偶者間人工授精)で生まれた当事者同士が、一人で悩まず互いに話し合える場をつくることを目的として、2005年1月から活動を始める。また、AIDの抱える問題について、今まで語られることのなかった生まれた人の立場からの意見を明らかにし、この問題についての理解を、社会に広く訴えていくことも行っている。

    長沖暁子(ながおき・さとこ)
    慶應義塾大学経済学部准教授。2003~05年度科学研究費による研究で「AID当事者の語りからみる配偶子・胚提供が性・生殖・家族観に及ぼす影響」の代表研究者となり、生まれた人等からインタビューを行う。著書に「出自を知る権利」(『シリーズ生命倫理学第6巻 生殖医療』菅沼信彦・盛永審一郎編、丸善出版、2012年)ほか。

    子供を産まないのに何故そんな子供が気になるかって、子供は自分が死んでも生きてる存在で未来なわけじゃん。LGBT活動家ってほんと想像力が無いと感じるのは、目先しか見えてないから代理母とか精子提供とか言ってるんでしょ。子供がアイデンティティクライシス(私と母親の絆がないor私と父親の絆がない)起こして自殺しちゃったらどうするの?結局自分の事しか考えられないって事じゃん。自分の為に日本死ねも含めて結局子供も死ねなんでしょ?

    日本が滅びる事が願いの人が性的マイノリティの代表面をしてるって事がほんと信用出来ない。良心的なゲイとかビアンの人程、代理母とか精子提供とかしようとはしてない。もしくは、そこまで子供を望んでるという事だから、ゲイとかビアン辞めて異性と結婚して子育てしてる。

    私達ビアン当事者が一番この人達を信用出来ないのはこういう所なんだよ。だから言ってんの。

    子供を持つ権利というのがひたすら気持ち悪い。子供を授かったら養子でも実子でも成人するまでひたすら義務が発生するだけ。
    そしてクソLGBTはアミューズメントパークとか親子のハレを見て羨ましがっているのだろうが、ひたすらケを耐えてそれがあるのを認識していない。

    本当に国外に行けと思うわ、テメーのエゴで国が滅びたら良いとか、どんだけ自分の事しか考えてないんだよ?

    日本が嫌なら出ていけばいいのにね。
    こんなバカ一人のために治安悪化させてたまるかという気持ち。

    ただの我儘。
    自分の権利だけを主張して、それが正義だと思い込んでるバカ。 

    共産主義は唯物史観で全てを物としか見ない。人も物としか見ないから精子提供代理出産なんて平気で出来るんだよ。

    共産主義が世界の1/3、半分近くを締めていた時代があって、その共産主義が何千万人の人を虐殺して失敗したけど、まだその過去の栄光が忘れられないらしい。左翼内ゲバ。

  • ふむ

  • 当事者の声が載ってる本があるということが非常に大事だし、本の構成というか目的が簡潔でちゃんと伝わる。
    わがごととしての想像力をはたらかせることの難しさが非常に強いテーマで、マイノリティであること自体がわかりにくく見えにくい、という特性がまたひとつの難しさなのかなと思う。家族というものがいまだ私的領域で治外法権みたいな価値観もあると思うし。
    当事者の声からは、想像しているよりもずっと自己肯定感を毀損することなのだと感じた。想像しきれない部分はやはり、どんどん可視化して肉声に触れるしかない。そうありたい

  • 自分が人工授精で生まれ、自分の遺伝的父が誰かを探すということは、今までドラマとかフィクションで見たことはあったものの、実際にその技術を用いて生まれ、自分の存在の意味を問い続けて生きている人がいることに驚き、この技術が人間にどのような意味を与えるのか、いろいろ考えさせられた。特に印象的だったのは、この技術を用いて治療にあたった医師に、全く罪悪感の影も見られないところ。医師も内心いろいろ考えたり責任を感じたりしているところもあるのかもしれないが、やはり医師にこそ、生命倫理や哲学などの教育が必要なのではないかと思った。

  • 490

  • ずっと気になっていたこと。
    生殖技術で産まれた子ども同士が
    たとえば従兄弟どうしと気づかずに結婚する
    そんなことはないのだろうか、など。

    AID(非配偶者間人工授精)で生まれた人たちが
    自助グループに支えられて、やっと声にだせたこと

    父親が匿名だというのを知ったとき
    自分が誰かわからなくなったと存在感を喪失したり
    親に騙されたと感じたり・・とありました。
    戸籍はきれいな状態なので
    「罰せられない公文書偽造」だとも。

    今までなんとなく法的な面で疑問を感じていたけれど
    当事者の気持ちを推察すれば、問題の重さに押しつぶされそう・・

    今も行われているAID
    このままでいいのだろうか?
    本当にいいのだろうか?

  • 日本で60年も行われてきたAIDという不妊治療術。父が本当の父でなかったという秘密を知った子供たちは大きなショックを受け,悩みに苦しんできた。その独白と同じ境遇の者たちの対話を収録。
    「自分は人間ではないと思っている」「こんな技術はないほうが良かった」という強烈な自己否定感がとても痛々しい。本書に登場する6人ともが親と医療に根強い不信感を抱く。それは仕方ないことかも知れないけれど,逆に克服して前向きに生きているAIDっ子も大勢いると思いたい。可視化はされなくても。
    「普通の家庭」という呪縛が,不妊に悩む親たちを追い詰め,そして今,産まれた子供たちを苦しめている。諸悪の根源は,あからさまな悪にあるのではなくて,皆が自然に受け容れている素朴な社会感情にあるということなんだろう。こういう呪縛から皆が解放される世の中へ向かっていかなくては。

  • 7月新着

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著者プロフィール

DOG: DI Offspring Group
AID(非配偶者間人工授精)で生まれた当事者同士が、一人で悩まず互いに話し合える場をつくることを目的として、2005年1月から活動を始める。また、AIDの抱える問題について、今まで語られることのなかった生まれた人の立場からの意見を明らかにし、この問題についての理解を、社会に広く訴えていくことも行っている。

「2014年 『AIDで生まれるということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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