議論を逃げるな――教育とは日本語――

著者 :
  • さくら社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784908983023

作品紹介・あらすじ

教育界屈指の論客・千葉大学名誉教授の宇佐美先生が、教育界の現状を厳しくも的確に批判した一冊。

多くの教師の日本語表現は荒れている。
教育現実を把握できるような日本語を欠いている。

日本語の論理性をおざなりにすることから生じる問題の数々に、80歳を過ぎてなお教壇に立つ実践家の魂が奮い立ち、「アクティブ・ラーニング」から教育史の大家にまで筆が及びました。

感想・レビュー・書評

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  • 宇佐美先生の著作を読むのは初めてで、学のない私が50ページ読んで覚えた率直な感想は「アガデミックの窮屈さ」であった。
    若い大学教員の年賀はがきにあった「本年も励みたいと思っております」という言葉に対して宇佐美先生が「本年 も と言うが昨年励んだ証拠の成果はどこか」と返信するエピソードが特に印象深く、知力を用いた体育会系の社会は、私が日々会社で感じている生きにくさそのもので、読むのが辛かった…。
    しかし教育界の権威は、そんなイチ読者の私の感想などお見通しのようで、読み終えた頃には甘えた考えにムチを入れられるような、ありがたい気持ちが湧き上がってきた。

    アクティブラーニングという実体のつかめない言葉を使うことで満足してしまい、教育に工夫をした気になっていること
    言葉ひとつひとつの無意味な使い方を避けて、より正確に文章を書くこと
    議論する際は、方面全般を相手取ろうとするのではなく、目の前のある一つの問題点に絞って厳しく追求すること
    過去の引用を繋ぎ合わせて議論した気になるのではなく、新たな定義を作り出し思考を発展させること

    そして、急性アルコール中毒で倒れる学生に対して「飲みすぎてはいけない」「限度を考えて飲みなさい」などという無意味な忠告はやめにして「酒の味が淡くなったら飲むのをやめなさい」という具体的な指標を示す話が、特に興味深かった。

  • 非常に面白い本である。アクティブ・ラーニングの定義といいかげんな実践への批判書である。なぜ副題にアクティブ・ラーニング批判としなかったのであろうか。そうすればもっと読者が増え、今までのアクティブ・ラーニングがおかしいことがより理解されたであろう。

  • おっさんが自分の気にくわない点をただ並べ立てているに過ぎなかった。特に日本語のお手本にも、議論の仕方の役にも立たない。

  • 久しぶりに宇佐美先生の本を読みました。
    鋭い批判が全編です。
    耳の痛い話もたくさん。
    研修は授業とは少し違いますが、根本は一緒です。
    精進しよう。

    「アクティブ・ラーニング」と称してなされる活動は、多くの場合、このように教材から遊離した学習まがいである。それなのに、学習者も教師も、学習が活発であると錯覚しているのだから、たちが悪い。
    教材、授業の目標を明確に自覚した上で、それに適合し授業を助けるような活動をさせるべきなのである。
    ところが、この自覚を欠いているから、安易な思いつきの活動ばかりである。真剣な授業を妨げる活動である。
    28ページ

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著者プロフィール

1934年神奈川県横須賀市生まれ。東京教育大学教育学部卒業、同大学大学院教育学研究科博士課程修了、教育学博士。東京教育大学助手、千葉大学講師、同助教授、教授(1993-97年教育学部長、1998-2000年東京学芸大学教授併任)。1961~62年米国、州立ミネソタ大学大学院留学(教育史・教育哲学専攻)。現在千葉大学名誉教授。九州大学、山梨大学、岩手大学、山形大学、秋田大学、茨城大学、上智大学、立教大学、早稲田大学等の非常勤講師(客員教授)を務めた。
著書に『私の作文教育』『教師の文章』『国語教育を救え』(以上、さくら社)、『宇佐美寛・問題意識集(1~15)』(以上、明治図書)、『論理的思考』(メヂカルフレンド社)、『大学の授業』(東信堂)等多数。

「2019年 『教育と授業 宇佐美寛・野口芳宏往復討論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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