- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909090157
作品紹介・あらすじ
みなし贈与課税に関する完全解説版!!
初級者から上級者まで幅広い読者のニーズに応え、この1冊に論点を完全に網羅!!
不確定概念を多数の裁決・裁判例・判決から読み解く、税理士・会計士必読図書!!
〇はじめに
近年、みなし贈与分野は資産税分野でも脚光を浴びてきています。それにはいくつか理由があります。主としてみなし贈与が絡む取引が特殊領域ではなくなってきていること、事業承継対策においてポイントとなる自己株式の取得等や組織再編成、事業承継に係る資本政策スキームにおいてみなし贈与について特に初期における税額シミュレーションの重大性が広く認識されてきていること、などが考えられます。
みなし贈与は、類書にあるような計算事例だけでも、後付けで税務申告書を記載したり、その他税務諸手続きをすることは確かに可能です。しかし、組織再編成や事業承継といったコンサルティング分野の領域においては、場合によっては税額が非常に多額に及ぶこともあるため、初期の段階で税額シミュレーションをし、クライアントに周知徹底すべき事項であり、そういった点において今後ますます重要性は高まると考えられます。
従来の類書であれば、「(相続税法上の)みなし贈与」「贈与の一形態」といったように補足的に記載されていることが常で、真正面から取り上げられることはありませんでした。
本書はみなし贈与だけに焦点をあて、完全解説と銘打ち、みなし贈与分野の「基礎」についてはこの一冊で事足りるような構成となっています。
本書の大きな特徴は、みなし贈与の分野だけに限定したことからと、以下の点に集約されます。
・みなし贈与分野における初級者から上級者まで幅広い読者のニーズにこたえるものを意識したこと
・論点は最新の税制改正まで(本書では平成30年度税制改正における無対価組織再編成の取扱いがあたります)網羅性を重視し、類書では軽く扱っている記載についても誌面の許す限り詳細な解説を加えていること
・裁決・裁判例・判例についても網羅性を重視し、できるだけ実務上のヒントになるような汎用性のあるものを厳選して掲載したこと
・みなし贈与は「不知・うっかり」で失念することが大半であり、苦手意識を持っている実務家が多いため表現はできるだけ平易に、また、随所に非常に簡単な「よくある」事例を組み込み、具体的な取引をイメージしていただけるようにしたこと、一方で実務上稀な事 例についても上級者向けに汎用性のある取引のみを厳選し掲載したこと
感想・レビュー・書評
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みなし贈与にテーマを絞ったかなり意欲的な書籍。裁判例、裁決例を多数上げ、税務上の論点がまとめられているが、かなりマニアックな内容だ。上級者向け。多少読みにくいところもあるが理解が進んでいる方には参考になると思う。資産税実務を中心にする方にはお勧めの書籍だ。
P102
所得税法では、政令で時価の1/2未満と明らかにしているが、 相続税法7 条では所得税法にいうような基準は明確でなく、 解釈に委ねられています。 そのためこれに関連する裁判例も多数あるわけです。
また、「低い」「高い」という判断の前提となる「時価」をどのように認識するのか明らかにする必要があります。
みなし譲渡の所得税法第59条、課税上の財産の評価を定める相続税法第22条 の「時価」と同第7条の「時価」の解釈が錯綜している場面です。
所得税法は第59条、所得税法施行令第169条で時価の1/2未満を著しく低い 価額としています。したがって、みなし譲渡発動の可能性により1/2未満にするのは実務上、取り得ないこととなります。
論点になるのは時価の80~60%程度の場合「著しいか」ということです。
結論は先ほど提示した株価算定書に示しました。私見ですが筆者が税理士からご相談を受けるときは80%程度を目途としています。
申告後のご相談にのることもあります。
これは個人⇒法人間売買を相続税評価額で行った場合、すなわち誤った評価で売買した場合、のちに所得税基本通達59-6(もしくは時価純資産価額)で売却すべきであったと気付いたケースです。
この場合、原則として所得税基本通達59-6で評価し直し、相続税評価額との差額について譲渡所得税等の修正申告をすることになります。しかし、その金額があまりに大きな場合、納税者に示しがつきません。
緊急避難的な措置となりますが、所得税基本通達59-6で計算した金額をいくらかダンピングして計算するということです。
当該ケースは特に、相続金庫株の場合に頻繁に見受けられます。相続税申告で用いた相続税評価額でそのまま金庫株をしてしまった場合です。実務上、十分ご留意ください。
ちなみに、実務上どれだけダンピングするかは会計事務所によってかなり方針が異なるようです。大手事務所で所得税基本通達59-6 での価額100% でしか株価算定書を出さないところもあれば、ある大手事務所では、まれに、みなし譲渡に該当しないギリギリの51%で評価するところもあるようです。
なお、同族会社との取引については、意図的に譲渡価額を操作して所得税負担を軽減させようとすることがあり得ます。
そこで、同族会社との取引について所得税の負担が不当に減少する結果となるときは、税務署長が計算をすることができることになっています(所法157①、所基通 59-3)。
ただし、これは行為計算否認規定です。よほど著しい低い価額でなければ実務上発動することはないと思われます。
また、法人に受贈益が生じますが、それを越欠損金と相殺させたい等意図的な行為を作出した場合には、指摘事由に該当すると思われます。
みなし贈与(相基通9-2)とみなし譲渡課税(所法59①)は当然のことながら重ねて課税されます。両者は別趣旨の規定だからです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
みなし贈与という非常にマニアックな論点にのみ絞って書かれた本であり、私の知る限りこの論点にのみ絞って書かれた類書は無いと思われ、実務を行う上で大変貴重な本である。
伊藤先生としては、株主間贈与についてのみ書きたかったようであるが、最終的にはその他の論点にも言及されており、結果的に「みなし贈与のすべて」についてまとめられている。
過去の裁決や経験をベースに、伊藤先生の見解が随所に書かれている点が特徴である。
難しい論点も多いが、実務家として理解しておかなければならないものばかりである。 -
セミナー参加した際に頂いたが、正直難しい。
親子間で子供に自宅を時価よりも安く売ったら、差額は贈与とみなされる(みなし贈与)など、知らず知らずのうちに贈与してる可能性がありますね。
本書にも記載されているが、時価よりも高く売る場合についてはあまり指摘されないのだと。
裁判例でも1件しかないそうです。