五月の鷹

  • サウザンブックス社
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本棚登録 : 27
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909125316

作品紹介・あらすじ

すべての女が最も望んでいることとは?
アーサー王円卓きっての忠義の騎士ガウェインがかけられた謎を解く旅

アーサー王が北方の領主たちとのいくさに勝ち、ブリテン王となって国内に平和と秩序をうちたてようとしていた頃。アーサーの抱える円卓の騎士たちは、たびたび冒険を求めては旅に出、武勲をたてることをなによりの誇りとしていた。そのうちのひとりであるアーサー王の甥、モーゴースの息子であるガウェインは、旅のとちゅう悪天候にみまわれ、ゴーム谷に迷い込んでしまう。そこでグリムという男の屋敷に一晩身を寄せることになるのだが、グリムの計画にはめられてしまい……。

感想・レビュー・書評

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  • 祝復刊!

    原著『The Hawk of May』の挿絵を完全収録します! | 円卓の騎士ガウェインが、謎に満ちた探求の旅へ― アーサリアンポップの傑作が今、蘇る 『五月の鷹(The Hawk of May)』を復刊したい! | THOUSANDS OF BOOKS
    https://greenfunding.jp/thousandsofbooks/projects/4207/activities/14631

    円卓の騎士ガウェインが、謎に満ちた探求の旅へ――
    アーサリアンポップの傑作が今、蘇る
    THOUSANDS OF BOOKS
    http://thousandsofbooks.jp/project/hawkofmay/

  • ※以下は、10代をアーサー王伝説に食われた人間が書いています。
    ※以下は、夢と現実といろんな文献と自分のイメージが混ざって区別がついていない文です。
    ※以下は、読んで楽しい気分になりにくい文章ですので、先に謝ります。すみません。


    まずは復刊、おめでとうございます。
    人生ではじめてクラウドファンディングしたのが、こちらの復刻運動でした。
    その意味でも、自分も関われたんだ、という当事者気分でとても嬉しかった。
    関係者のみなさま、本当にありがとうございました。
    この本との邂逅を楽しみ、美しい物語に再び心を動かされました。

    以下、やばいやつです。↓
    この本との最初の出会いは、20年近く前の高校の図書館。
    タイトルからガウェインなのね、とわかっていたけど、なかなか手に取れなかった。
    …私はタカ派ランスロットファンだったから。(?)
    そのうち、決意して手に取ると、おおお、このガウェインは悪くないな、というか、いいな、と思ったのを覚えている。
    当時の友人(アーサー王ファンでもなんでもないけど、私の布教に付き合ってくれてた。良い人すぎる)にもすすめると、ウン、このガウェインはカッコいいね、とのこと。
    そう、かっこいい。。。
    ガウェインにも、こんな硬派な時代があったんですね。
    私が読んでいたアーサー王ものは、大体フランス系の流れを汲んでいる、マロリーの流れを汲んでいるもので、意図的にランスロットは主役、ガウェインはカンジが悪いやつ、という物語が多かった。
    当時の「パソコン通信」で、アーサー王の「ホームページ」の「bbs」で交流のあった日本人のアーサー王ファンには、それなりにガウェインのファンがいて(というかランスロットファンより多数派に見えた)、当時の私は、電話代を気にしながらも、えっ、本当にガウェインが好きなんですか?どうしてなんですか?と思っていた。(実際には、自分がランスロットの次にボールスが好き、と書き込んだら、それは珍しいですね、とつっこまれた。童貞をギリギリ死守した聖杯のボールスとか、裸ムチの兄(弟)を無視したボールスとか、最終盤で王妃を庇うのが嫌でたまらないボールスとか、アーサーを殺っちゃってこの戦争を終わらせましょうか?とランスロに聞いてくるボールスとか、かっこよくないすか。私の代わりにランスロットのそばにいる人、としか思えない)
    で。
    このガウェインは、ランスロット登場以前のアーサー王世界が舞台なんですよね。
    オークニー兄弟がうじゃうじゃしてる。
    パーシーとの血縁などのオリジナル要素はあれど、聖杯の話をすこーし絡めて(この船は私のではない、のシーンはランスロット父子が乗ったふねのことですか。あの泉と寺院と石はなんでしたっけ。イウェインかな。あああ)、マーリンの声を聞いたところなんかも、良い感じに物語に当てはめてますね。

    冒頭の旅の一夜の物語がとても好きで、すごくハラハラする展開。
    宮廷での面倒臭そうな人間関係、一族のやはりめんどくさそうな政治力学、ヤバいらしい女性陣、この辺りのシーンは読んでいて、ガウェインがかわいそうになるほど。
    一方で、妹(いたっけ)とウルフィン伯爵の娘(あとで名前が出てくる、ブランシュフルール=パーシーの彼女)に会うところ、その後の人間から離れて一人で旅に没頭するところ、ブラシアスとの出会い、豪農の館でモテモテ体験、どこのシーンもメリハリがあって、ページがさくさく進む。
    硬派で自嘲気味で、犬と馬を信頼してて、真面目できちんとしていて、そりゃあモテますよ、ガウェイン。作中ではだいたい他人のせいで大変な目に遭っているけど。

    ラスト、突然のハッピーエンド。
    えーー、となるけど、まあ、ガウェインがかっこいいから良いんだよ。
    特にブランシュフルールに会いに行ったときと、豪農の館のお祭りの日のガウェインは、作中一番かっこいいですね。ニコニコしてるのが伝わるかんじ。
    あとは、ラストで、昼か夜か、美人でいられるのはどっちがいい?って奥さんに聞かれたら、夜!って自分の都合で答えた時は本書随一の男の理論で逆に笑える。

    最後に、何人かのキャラクターについて。
    リネットはここでも文句たらたらなんですねー。
    ガレス(その亜流のラコートマルタイエ)でもお馴染みのマレディザント(悪口女)のリネット、かわいいなあ。

    イウェイン、わけありっぽく登場。ライオンどうした。

    オークニー兄弟、ちゃんと書き分けられている。
    私のイメージでは、アグラヴェイン→死んでもあまりガウェインに悲しく思ってもらえなかったやつ(ラモラックのときもきっと主犯格)
    ゲイレス(ガヘリス)→並。個性なし。だったけど、ここでは女好きキャラだった。山田南平さんでのキャラ付けもたしかにそうだったね。オークニー兄弟の女口説きにみる個性、みたいなエピソードは確かにあったが、やばい選択肢ばかりじゃなかったっけ。そこで彼は、女性を掴むような発言をしていたんだっけ。
    ガレス→天使。そこは譲れない。
    パーシー→田舎少年。90年代の児童書では、一人称はオイラでしたね。
    庵に住む賢者たち→ナシアンとかブラシャスとか、いろいろいたよね。
    こんな恐ろしいシステムだったとは。こわい。

    老婆の正体はまあともかく、グドルーンとうまくいっても良かったんですよ?
    青年と少女の薄い恋って、読んでいて楽しいのです。

    今の時代に、ジェンダー視点で読んでも快作だと思います。
    新しい読者にもたくさん愛される一冊になりますように。

  • 「五月の鷹」とはアーサー王の円卓の騎士の一人であるガウェインさんのことを指すらしい。私は自分が五月生まれなので、「五月の」と付くだけでつい「おっいいね」と思ってしまうが、なぜ五月なの、五月ってどんなイメージなの、どういう意味なの、といったことはまだよく知らない。
    とにかくそのガウェインさんが色々あって「一年後に“すべての女性が求めるものは何か”という問いに正しく答えられなければ死ぬ、逃げれば王国が傾く」という状況に立たされ、探訪の旅(どんな旅やねんという気もするが)に出るお話。どうやって答えを見つけるのか、ガウェインの命は名誉はどうなるのか、王国の命運はいかに、そしてガウェインかっこいい、というのがメインのみどころ。
    ガウェインは、それはまあ確かに要所要所かっこよかった。最後、自分を助けてくれた醜い老婆の願いを聞き入れるところがいちばんかっこいいと思った。けど今のところまだ「推し」とか「沼落ち」とかには至っていない。
    私が面白いと思ったのは、ガウェインが詩(うた)に目覚めるところ。旅の途中で、天気予報を詩(うた)にして村人に伝えたり、詩=呪文を唱えてちょっとした治療を施したりする仕事をしている隠者に出会う。その隠者との会話で、「詩だとありがたみが増す」「詩だと覚えやすい」「詩だと治ると信じ込みやすい」など韻文の力について考察しあうところも良かったし、「例えばこんなふうにだろうか?」と天気予報の詩をぽんぽこぽんぽこ作って披露しては隠者に「うーんいまいち」などと批評されるやりとりも良かった。

    アーサー王及び円卓の騎士を好きになるのって、新選組にはまる気持ちとちょっと似てるのかなあ・・・。時代も違うし、そもそも実在の人物かどうかという点もだいぶ違うけれど、個性豊かないろんな人物がいてそれぞれ独自の有名エピソードがあって、その中から「私はこの人が好き」とか言い合って楽しいところが似てる。あと、彼らのことにすごく詳しくなっても歴史のテストの点数にはつながらなそうなところも・・・(笑)。「王宮もの」という面では源氏物語にも似てるなあと思ったが、「源氏物語で誰が好き?」というときって男性ではなく女性の登場人物から選ぶ感じになるからちょっと違うか・・・。

    いまのところ特段好きな騎士もいない私は、アーサー王ものに関してはとりあえず山田南平さんの漫画『金色のマビノギオン』の連載を気長に追いかける(待ち構える?)のが一番の楽しみ!

  • アーサー王物語、ガウェイン卿に興味を持ったら必ずピックアップされるであろう翻訳版。しかし絶版だったし古書は高い。そこからの有志による復刊という経緯があるご本です。

    思わず笑い声を上げてしまうギャグシーンあり、ケイ卿と奥方、ガウェイン卿の弟達と従兄弟たちのやりとりが特に好き。
    ガウェイン卿の女性遍歴が何となくわかるのもいい。初恋の人、ほろ苦い思い出の人。
    ガウェイン卿の弟たちの恋路も気になる。

    ベドヴィア卿もたくさん出てきます。

  • アーサー王物語はいつも退屈になるけど、最後まで美しい英国の自然とガヴェインの高貴さのおかげで楽しめました。

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著者プロフィール

1942年、イギリス生まれ。その作品に、15冊以上もの独創的なファンタジー小説、そしてガーディアン賞次席に選出された『五月の鷹』をはじめとする一連の児童書がある。44歳という若さで生涯を閉じたあともその作品は高く評価されつづけ、アメリカ、スウェーデン、日本でも刊行されている。

「2021年 『五月の鷹』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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