ジェネレーション・レフト (Zブックス)

  • 堀之内出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909237583

作品紹介・あらすじ

◉世界の若者たちは、なぜいま「左傾化」しているのか?◉

資本主義の中心地であるアメリカでは、いまや20代の若者の70%ちかくが、社会主義を支持していると言われている。
さらに、オキュパイ・ウォール・ストリート運動、コービンやサンダースら「左派ポピュリズム」の台頭、グレタさんを中心とする気候危機の問題提起など、いま世界では若者たちによるラディカルな社会運動の輪が次々と広がっている。

世界の若者たちは、なぜいま「左傾化」しているのか?
気鋭の政治理論家キア・ミルバーンが、この「ジェネレーション・レフト」が生まれた背景と可能性を徹底解明。
Z世代(1990年代後半生まれ〜)が主役となる21世紀の世界情勢を知るための必読書!


◉監修・解説◉ 斎藤幸平(経済思想家・大阪市立大学准教授)
「コロナ・ショックを前にして、新自由主義に代わる新しい秩序を志向する可能性や必要性が出てきているのは否定できないはずだ。ここに左傾化の潜在性、21世紀の左派にとっての政治プロジェクトが存在する。その担い手が、急進化している若者たちである」


─推薦───────────────────────────

キア・ミルバーンは、世代についての話に付きまとうナンセンスを粉砕し、年齢の問題のように見える事態の根っこに階級の問題があることを示した。この本を読んで、ジェネレーション・レフトに加わろう。
 ──ポール・メイソン(ジャーナリスト、『ポストキャピタリズム』著者)


急進主義が新しい時代を迎えた原因とその可能性への素晴らしい探求だ。新自由主義を克服し、気候変動を静め、社会の高齢化に対処するためには、もう一度「最高の世代」が必要なのだ。
 ──アーロン・バスターニ(ジャーナリスト、『ラグジュアリーコミュニズム』著者、「ノヴァーラ・メディア」共同創設者)

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感想・レビュー・書評

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  •  狙いすまして読みたい本を読むのもいいのだけど、セレンディピティを期待してブクログ徘徊してたときにジャケとタイトルにピンときて読んでみた。世界の若者が「左傾化」している背景と経緯を丁寧に説明してくれていて興味深かった。年齢で区切るのはそれは多様性の否定なのか?という疑問もあるけども、現状やはり世代間格差は1つの大きなイシューであり、どうしてこうなった?という点がクリアになった。きちんと文献に基づいた議論がされているので大丈夫だとは思うものの、納得できたのは自分が比較的左寄り志向だからなのかもしれない。タイトルを見たときには世代のデモグラを分析しているような内容なのかなと思っていたけれど、それよりも今の社会が歴史を踏まえてどういう状態なのか、解きほぐしたのちに見えてくる世代の議論という話が多くて何よりもそれが勉強になった。世界全体の潮流に日本も巻き込まれていて、自分が日々感じている政治や社会に対する違和感をズバリ言い当てられたような感覚。
     資産を持っている老人たちはその収益率を最大化したいが、若者たちは手元のお金がないのでまず目の前の所得の向上させたい。こうした物質的利害の相違からして世代で物事を考える妥当性を著者は主張している。そして2008年の金融危機をきっかけとして2011年に各地で若者によるデモが発生、それが左傾化の波であった。なぜ左傾化するのか?その原因としては新自由主義が社会の隅々までに浸透したことに対するカウンターだという見立てだった。この新自由主義への論考が目から鱗の連発だった。以下引用。

    単なる経済体制ではなく、社会的および政治的な可能性を収縮させることによって人々の生き方を支配する統治モデルなのである。

     自己責任論によってすべては各人の責任とされることで、意識がデフレ化されて社会的な連帯がうまれにくい、つまり政治家たちにとってはコントロールしやすく都合がよい状況が続いているというのはドンズバで今の日本だなと思った。(さらにその各人が右傾化しているのだが。)
     2011年に起こった左寄りのデモの数々が、実際に選挙結果にも影響を与えた例が紹介されていて勉強になった。USだとAOCの台頭はNETFLIXでドキュメンタリーを見て知っていたけどギリシャやスペインでの左派躍進は全然知らなくて希望を持てた。日本でもSEALDSなどの活動が同様に社会を変える結果を出せれば、もう少し事態はマシになっていたのかと思うと切ない気持ちにはなるけど…
     またアセンブリーの概念が興味深かった。効率的な意思決定を目指してコンセンサスを取るというよりも1人1人が現状を持ち寄り体験を語ることで社会の課題を浮き彫りにしていくスタイル。USの映画とかで見る互助会に近い感覚だろうか。全員が同じ方向をむくのは難しい時代なのは間違いないからこの概念には納得できたし、「アヴェンジャーズ エンドゲーム」の決定的なシーンでも使われていたので時代を象徴する言葉なのかも。
     最終章は若者と大人のギャップに関する全体的な考察でかなりオモシロかった。歳をとると保守的になるのは自分自身の意識と社会全体の意識との相対的なものであり、何も気にしないでそのままいると置いてかれてしまう。これは最近骨身に沁みてきたので気をつけたいところ。またインターネット、デジタルテクノロジーがデフォルトの若者にとっては所有の概念が低いし、そもそも所有できるだけの所得がない。それに対して大人たちが培ってきた、私有財産を持つことが成人の証という古い価値観を打破していかねばならないというラディカルな主張も興味深かった。(会社で人に情報をまったく出さないタイプの人いるけど、シェアの概念が受け入れられないのは資産保有してきた世代だから当たり前なのか?)
     点と点が線でつながり脳内でスパークする感じはブルシット・ジョブを読んだときの感覚と近い。忙しいと抽象的なことを考えるのを後回しにしてしまいがちだけども、こういう本を読んで刺激を受けつつ自分の考えや意見を持ち、思考し続けたい。

  • 斉藤幸平『人新世の「資本論」』から導かれるように手にした本です。半年前の読了のレビューを放置しておいたのは、2021年の総選挙で18歳と19歳の投票率が43.01%で、前回から2.52ポイント高くなったものの、衆議院選挙全体の投票率55.93%に対しては、12.92ポイントも下回ったことに,直後に読んだこの本とのギャップを感じて,整理できない気持ちをもったから、だったような…先日、「Z世代マーケティング」という産業視点のZ世代論を読んで、放置しておくのもどうかな、と思い,先ずはメモまで。その後、オミクロン、ウクライナと世界は動き続け、そして今度は参議院選。公示は明日。日本でもジェネレーションレフト的流れは顕在化するのか、それとも今の政党はそれを反映させる鏡にはなり得ないのか…そんな観点でも,今度の選挙、見つめます。

  • 2.取り残された世代
    実は、新自由主義とは単なる経済体制ではなく、社会的及び政治的な可能性を収縮させることによって人々の生き方を支配する統治モデルなのである。この統治は、物質的条件における変化が政治に反映される仕方を決定的に変えてしまう。現存する新自由主義は誕生して40年が過ぎているが、その間に何度も変化を繰り返している。つまり、新自由主義は各世代に対して異なる関わり方をしてきたのだ。(p.63-64)

    5.成人モデルの改革
    既存の成人及び高齢化のモデル(=私有財産制度)は、それにとらわれている人々に実際に不利益をもたらす。それは恐怖心に駆られて社会的に孤立した主体を生み出す装置なのであり、これによって人々は老後になるとあたかも疫病のように一斉に孤独にさいなまされるようになる。そして、この孤独感が極右に傾倒する素地を作り出すという、まさに現実的な危機を伴う。ただ、このモデルに欠陥があることを示す最も明らかな証拠は別にある。それは新しいメンバーを迎えることができなくなったということだ。(p.144)

    今なぜ世界の若者は左傾化しているのか、に着目した書。

    戦後民主主義体制の成功体験の成果は、ひとえに、冷戦構造の緊張感の中で生じた左派の要求に寛容を余儀なくされた結果でしかなかった。参政権が財産の有無にかかっていた時代から普通選挙制が成立していくにつれ、保守主義全体が危機に陥る。そこで、この危機に対処するために「財産所有制民主主義」という概念が生み出された。それは、私的所有を普及させることで、社会主義者たちの目指す財産の共同管理に対抗しようとするものである。いわば、為政者、富裕層側の共犯者をたくさん仕立て上げることによって、その他大勢の共有制勢力を徹底的につぶし、再起不能なまでに落とし込めようとしたのだ。それが完成したのが、リーマンショック以降の現代にいたる世界だ。
    しかし、この保守陣営の目論見を達成させ続けることは叶わない。地球がそれでは持たない。現勢力は、ほどなく寿命でこの地上から去る。彼らに一切不利益も、その付けを支払わせることなくこの地上から退場されてしまうのだ。が、割を食った若者世代がそのツケすべてを負いかぶされ、文字通り負債の清算を余儀なくされている(学生ローンはその典型だ)のは、あまりに不正義だ。そんな不正義がまかり通ってたまるものか!

    私有財産の価値は希少性と結びついている。それは、あなたが所有するか、さもなくば私が所有するという競合的性質のあるものだ。この無所有状態に陥るという潜在的可能性によって、財産所有者は右翼的な恐怖心の煽動の恐怖心の影響を受けやすくなる。競合的ではない財産を軸にして成人モデルを構築することができれば、ジェネレーション・レフトの若者が年を重ねるにつれて右傾化するのを防ぐことができる。幸運にも、まさにそのような共有財産が私たちの日常生活に隠されている。(p.515)

  • ようやく読了。世の中から遅れて歩く亀歩行なので。
    冒頭の「日本語版への序文」と巻末の斎藤幸平氏による解説を読めば、ほぼ読了と同じかか。若者の左翼化、と単純な主義志向ではなく、「若者が自身の利害を主張し、社会をより平等主義的な方向にシフトさせない限り、世代間格差を解消することは決してできない」という著者の主張。世界的に2011年から2017年に起きた社会現象を、世代間格差の弱者である現代の若者世代の関心について紐解く。
    ハートとネグリによる「私有財産にもとづく社会は恐怖心を飼い慣らし、恐怖心を掻き立てる」という言葉も印象に残る。

    最近の口癖である「財と富」の考え方を補完する。財はお金(給料、預金残高、金融財産)を代表する私有財産であり、富は財を伴って成立しうる換金できない関係性(人脈、機会、自由時間など)で、個人の裁量で増幅可能な財産でありながら、公共性も高い(組織的な拘束も受けやすいが)価値と考えている。財よりも富を求めて、これからの人生を生きられるか、が、目下の課題である。

    Z世代として、若者世代の政治参加も増えつつあるようだが、高齢化社会の、による、ための政治の変革は日本でも行われるだろうか。左派政党の旧態化、弱体化、高齢者のみならず全世代の保守化や厭世観、アフターコロナの対応、止まらない戦争、インフレ、円安。酷すぎる世界で社会への希望を持ってもよいものか、と感じる。
    しかしながら、声に出さなくとも、「考える」ことは必要。時折、他者と確かめながら、読書しながら、こうして感想をまとめながら、たとえ歩みは遅かろうとも、「考える」のだ。

  • 日本ではまずここで書かれていることを実体験として経験する必要があるように思うので、現時点では『なるほど、それは是非アセンブリしてみたい』という感想。実行に移していきたいと思える良著。

  • 斎藤浩平さんの人新世に引き続き読ませていただきました。世代による格差をヨーロッパとアメリカの歴史から分析し、日本だけでなく世界の政治システムによって私有財産を美徳としプロバガンダがなされた結果が今の貧困格差の拡大、なおかつ環境問題の悪化もその原因なのではないかとつくづく思ってしまいました。左派は繰り返し「過剰の瞬間」という言葉で表現し、典型的な例として2008年のリーマン問題が特に新自由主義によるものではないのかが、分かりやすく説明されていました。Z世代とは言わずいろんな世代の方も共感しなくてもよいので理解してほしいと思いました。次回があるとするならば気候危機や環境問題バージョンのジェネレーション・レフトもあれば、是非読みたいと思います。

  • GE X(1965〜1980頃)
    GE Y(1981〜1995頃)
    GE Z(1996〜2015頃)
    ・バーニー・サンダース、ジェレミー・コービン支持
     大人世代との社会主義、共産主義のずれ
    ・グレタ・トゥーンベリ、大坂なおみ
    ・格差、環境問題、BLM、FFF

    左傾化要因
    ・リーマンショック
    ・新自由主義化
     r(資本収益率)>g(経済成長率):ピケティ
     格差 低賃金、高家賃
     構造不平等
    ・抗議運動の波
     反新自由主義:OWS、15M
     反レイシズム、フェミニズム、LGBTQ解放
    ・選挙論的転回
     左派ポピュリズム

  • 東2法経図・6F開架:309A/Mi26j//K

  • 世界の若者たちが「左傾化」している・・・ 日本の現状を見ると安保法案の時などに意外に多くの若者が声を上げたし、SNS上などで政治的発言を続ける若者も見かけるけど、全体としてはどうなんだろう。少なくとも政治的なムーブメントにはなっていないように思う。むしろ奨学金や不安定雇用の恐怖を前に新自由主義の罠にはまっているのでは・・ とはいっても環境危機、見通せない経済の状況の中で未来を担う世代なので是非本書を読んで今とは違う未来を選択してもらいたいものです。
    斎藤幸平さんの解説がまとまっていて参考になりました。

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著者プロフィール

キア・ミルバーン 政治理論家。専門は社会組織論。世界の左派の潮流をマルクス主義、とりわけマリオ・トロンティやアントニオ・ネグリに代表されるアウトノミアからの理論的影響のもとで分析し、注目を集めている。レスター大学で講師を務めた後、現在はローザ・ルクセンブルク財団に所属し、ミュニシパリズムや経済民主主義についても研究を進めている。『ジャコビン』や『ガーディアン』などへも寄稿。

「2021年 『ジェネレーション・レフト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

キア・ミルバーンの作品

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