K氏の大阪弁ブンガク論

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  • ミシマ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909394101

作品紹介・あらすじ

大阪弁を駆使するものが文学を制する!(いや、ほんまに)

谷崎潤一郎、司馬遼太郎、山崎豊子といった国民的作家から、
黒川博行、町田康、和田竜など現代の人気作家まで縦横無尽。

大阪弁、関西弁を使っていなくても、
そこには大阪、関西の水脈が流れている・・・

作家たちも太鼓判!
長年街場を見つめてきた著者がボケてつっこむ、唯一無二の文学論。

標準語からどうしようもなくはみでるなにかが過剰にあるのが大阪弁だ
――「はじめに」より



◎ミシマ社のWeb雑誌「みんなのミシマガジン」で
2016年8月から2018年3月まで掲載していた人気連載「K氏の大阪ブンガク論」がついに書籍化!

感想・レビュー・書評

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  • K氏に言われるまでもなく、誰に言われるまでもなく、自分の感性を大切にして大阪文学を読み続けようと思った。決意した。

  • バルトの言及など賢しさもちょっぴり、全体的にちょけて、そして終始内輪的語り口、おそらく内田樹などとおしゃべりする感覚なのだろう。内容はいたってお粗末。町田康などへのオマージュも書けていない。

  • 大阪弁も近頃では全国的に有名になり、誰もが親しみを持っているように思う。
    しかしながら、実際の大阪弁の多様性、地域性、時代性、文化的な特性等大阪に住む人間にさえ、多種多様であり、すべてを理解しているわけではない。
    文学、小説等に出てくる大阪弁を細かく分析、解説、また著者の思いを書き綴った本である。
    それぞれの作品に登場する大阪、大阪弁、そしてそれを操る登場人物たちは「言葉」によって性格や人物の背景を知ることができる。その細かな違いが言葉の中に現れている。大阪に長く住んでいる私にとっても、これほどの違いが言葉に隠されているのかと驚かされる。
    しかしこの著書は、大阪や関西人以外の人にはなかなか理解しにくいものかもしれない。
    大阪という街の深淵を感じずにはいられない。

  • ホンマもんの大阪弁が文学の中でどう使われているか?の文学論。
    興味津々で読んだが、感覚的によ~分からんことも多かった。

  • 岸和田出身で元ミーツ編集長の江氏による大阪弁の文学論。
    町田康、和田竜から司馬遼太郎、山崎豊子まで幅広く解説。

  • 住んでいる地域や職業など属する社会やコミュニティに
    よって言葉遣いやイントネーションは形成される。
    それを「エクリチュール」と言うそうな。
    今回の読書で知り得た言葉。そのエクリチュールの裾野が
    広いのが「大阪弁」。

    江戸時代から近代にかけて、現在の大阪市内にあたる地域の地区や階層によって独特な言葉が存在していた。
    船場は商人が多く住んでいたことから船場言葉が生まれ、天満はお役所が置かれていたから江戸訛りの役人言葉が
    使われ、天王寺は農民、島之内は芸人、木津は市場で
    働く商人言葉…、といった具合に微妙に言葉遣いも語彙も変わる。

    そんな多面な大阪弁を巧みに用いて描かれた文学を、
    著者は「大阪弁ブンガク」と評する。大阪を、関西を舞台にして書かれた小説の中で、際立った大阪弁(関西弁)の
    使いっぷりを「日頃、大阪弁しか使わない人」=「K氏」という著者の分身を登場させ、片っ端から解読していく。

    俎上に上るは、谷崎潤一郎・司馬遼太郎・山崎豊子と
    いった国民的作家、黒川博行・町田康・和田竜など
    大衆作家までを網羅。

    「後妻業の女」の原作者 黒川博行の作品の白眉は、
    「会話の台詞に見られる壮絶さ」であり、「細雪」では、谷崎の異常なほどのグルマンぶりにはアングリさせられ、 町田康の河内十人斬りを題材にした「告白」は河内弁と
    大阪弁よる「音×リズムの文学」と喝破。

    大阪弁ブンガクの魅力とは、「『東京 山の手。教養のある
    中流のことば』が大原則である標準語の言語表現を凌駕し
    時には嘲笑するかのような突き抜け加減が絶妙である」と。

    その背景には、関西人のコミュニケーションの中で最重要の位置を占める「おもろい」かどうかがある。何気ない
    会話の中に「おもろい」ことをどこかに仕込もうとする
    好機を虎視眈々と狙ってるし、他人の話には「オチ」を
    求める。非難や抗議、時には恫喝する時にも「おもろく
    言おう」とする、関西人特有のおかしみ。関西以外の人がよく言う「漫才みたいな会話」も、そらそうよと思うし、その辺の芸人よりおもろいと思ってるのも事実なわけで、関西は「おもろい偏差値」が際立って高いからさもあり
    なんである。

    関西の土着性を論考した本は数多あるが、「文学の中に
    みる大阪『弁』という方言を切り口にしたのは類を見ない。本の帯の惹句に「標準語からどうしようもなく
    はみでるなにかが過剰にあるのが大阪弁だ」。
    大阪弁(関西弁)を形容しつつ揶揄するコピー。
    これほど言い得て妙な表現はないと思う。おもしろうて
    やがてかなしき関西人の性が詰まった文学の世界…、
    嫌っちゅうほど堪能できまっせ!

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著者プロフィール

1958年、大阪府岸和田市生まれ。編集者・著述家、神戸松蔭女子学院大学教授。89年『月刊ミーツ・リージョナル』を創刊に携わり、12年編集長を務める。ファッション・ページも長く担当。「街場」を起点に多彩な活動を繰り広げている。『K氏の大阪弁ブンガク論』(ミシマ社)、『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版新書)、『いっとかなあかん店 大阪』(140B)など、大阪について書かれたもののほか、『「街的」ということ』(講談社)、『有次と庖丁』(新潮社)、『神戸と洋食』(神戸新聞総合出版センター)などの著書がある。

「2023年 『なんでそう着るの? 問い直しファッション考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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