- Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909692191
感想・レビュー・書評
-
杉良太郎は私の数ある初恋の人である。
その人が表紙にかっこよくいるのだ。
裏表紙にも!
主人公新五は杉良太郎である。
よって、主人公新五が出てくればそれは杉良太郎。
他の人物はテキトウでも、主人公新五は杉良太郎。
新五のたびに杉良太郎。
一冊丸ごと杉良太郎だらけ!
ああ、幸せな読書時間である。
新吾は二十六才、駒形の御用聞きである。
亡き父の跡を継いで、そうなった。
まだ所帯も持たず、これという女性もいない彼は、一膳めし屋"はちまき"の二階に居候をしている。
『江戸ですこし名前の知られたなんのなにがしといわれる御用聞きなら、家の一軒も構えて、比較的らくな生活を営んでいられるのだが、』(1頁)
なぜかまだ居候で"はちまき"の夫婦茂平とおとよにやきもきされている。
手下は一人、魚屋の銀次という。
彼は親分に手柄を上げさせようと、商売そっちのけであちこちを走り回り、事件を見つけてくる。
「てえへんだ、てえへんだ!」
目をかけてくれるのは、北町筆頭同心、大場伝蔵。
好敵手は花川戸の長兵衛。
これに"はちまき"の夫婦を加えて、役者が揃った。
収められているのは、中編2つ短編4つの計6編。
この頃の物語は、チャンバラにしても捕物にしても、テレビドラマとがっちり結びついていて、なかなか説明が難しい。
作家はテレビを意識するし、テレビ話数は原作以上だし桁違いだし、いわば、原作とテレビ時代劇と双方で作品がかたちづくられていく時期だったのだろう。
話はテレビ時代劇を思い出さされるものが多い。
動機は大概が敵討ちだ。
が、当時人気だったのだ。
それもうなずける面白さである。
例えば1話目の『うわなり騒動』などは、さらに見栄えがするだろう。
女性ばかりがむこう30名、こちら30名、竹刀、すりこぎに紅白の布を巻いて、敵味方の目印をつけての合戦である。
作者陣出達朗は日活の脚本部にいた。
なるほど、納得の見栄えと面白さである。詳細をみるコメント0件をすべて表示