カメラを止めて書きます

  • CUON
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784910214498

作品紹介・あらすじ

―ETV特集「オモニの島 わたしの故郷~映画監督・ヤン ヨンヒ」で紹介―
4月末、待望の刊行!

家族を撮り続けることは 自分への問いかけ
ドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』『スープとイデオロギー』の監督ヤン・ヨンヒによる書き下ろしエッセイ

人々はヤン ヨンヒについて「自分の家族の話をいつまで煮詰めているのだ。まだ搾り取るつもりか」と後ろ指をさすかもしれません。 しかし私ならヤン ヨンヒにこう言います。「これからもさらに煮詰め、搾り取ってください」と。
ヤン ヨンヒは引き続き煮詰め搾り出し、私たちはこれからも噛み締めなければなりません。
――映画監督 パク・チャヌク
(『JSA』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』『お嬢さん』)

.............

「父の娘であること、兄たちの妹であること、女であること、在日コリアンであること、そのすべてから解放されたかった。家族にカメラを向けているのも、逃げずに向き合い、そして解放されたかったからである。(…)いくつもの手枷足枷でがんじがらめになっている自分が自由になるためには、自分にまとわりついているモノの正体を知る必要があった。知ってこそ、それらを脱ぎ捨てられるような気がしていた」
(本書より)

家族を撮ること――それは自分のバックグラウンドと広く深く向かい合うことだった。
映画監督ヤン ヨンヒが、自らの家族にカメラを向けた<家族ドキュメンタリー映画3部作>のビハインドストーリーや、撮り続けるなかで感じる想いを、率直な語り口で綴ったエッセイ。
ヤン一家の話を通して、日本と朝鮮半島が歩んできた道、<家族>、そして<わたし>という存在を、見つめるきっかけになる一冊。

「日本と朝鮮半島の歴史と現状を全身に浴びながら生きてきた私の作品が、人々の中で語り合いが生まれる触媒になってほしい。そして私自身も触媒でありたい。生きている限り、伝え合うことを諦めたくないから」
(本書より)

感想・レビュー・書評

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  • 大阪出身コリアン二世であるヤン・ヨンヒさんの作品。妻に薦められて読みました。姪っ子の笑顔を「演出され強制された笑顔ではない家族の日常の中の表情がそこにはあった」
    この言葉に朝鮮という国、その国のあり方を変えたいと思い願う著者の思いを感じました。
    とてもよい作品に出合えてよかったです。

  • 「スープとイデオロギー」という映画を観て、ヤンヨンヒ監督と在日朝鮮人の歴史に興味が湧き購入。
    在日朝鮮2世として大阪に生まれ、幼い頃に大好きだった兄3人は帰国事業で北朝鮮へ渡ってしまう。熱心な活動家だった両親と相反する自分。それでも家族を撮り続けること。日本と朝鮮半島の歴史と現実を浴びながら生きている監督の話はどこまでも惹きつけられる。

  • 「ディア・ピョンヤン」「愛しきソナ」「スープとイデオロギー」鑑賞後に本書を購入しました。

    カメラを構えた監督自身の心情やカメラのフレーム外での出来事は、映画を観終わってからだとさらに重く、胸にズシッとこたえます。鋭く重く、でも心地よいスピードでテンポよく話が進んでいくので、あっという間に読めてしまいました。

    日本と朝鮮半島の歴史に分断される家族との関係を、苦しみながらもまっすぐ描いてくれたことに感謝します。

  • 『カメラを止めて書きます』
    著:ヤン・ヨンヒ

    購入してから読むのを我慢し、5月の韓国旅行でお供に持って行った一冊

    北朝鮮・韓国・日本

    家族の国と思いを繋ぐ監督のドキュメンタリーや劇映画を見て来たけれど、文字で綴られるそれはあまりにも心に突き刺さる

    「本当のノンフィクションは、誰にも言えない記憶や心情であろう」 -はじめにより

    個人の意思とは関係なく家族と引き離され、「人間プレゼント」として北朝鮮に差し出された監督の兄達

    それを支えるオモニム(お母様)の45年に渡る献身、切ない思い、耐える明るさ
    アボニム(お父様)が最後まで見せられなかった苦悩

    監督と結婚され新たな家族となった男性の存在とオモニムのアルツハイマー型認知症、娘としての介護生活
    そこに伴う済州島四・三事件の記憶

    「家族とは…分かり合い支え合おうとするお互いの努力があって機能する関係性があってこそ、その集合体は家族たりうるのかもしれない」  -本文より抜粋

    「思想や価値観が違っても、一緒にごはんを食べよう」
    鶏のスープ参鶏湯を炊くオモニムの姿と新しい家族の思い

    政治的な映画でありながら、時代と国家に翻弄された人たちの日常を描いた「家族」の物語

    #一緒に旅した本
    #本好き #読了 #부엌독서실

  • 恥ずかしながら「在日」と呼ばれる方々について無知なまま生きてきた。
    著者の視点で捉えられる出来事やエピソードに「こういうことが知りたかったのだ」という気持ちになった。
    遡って他の著書も読んでいきたい。

  • ヤン・ヨンヒ監督のドキュメンタリー三部作を観て、映画にはなかった部分も知りたくて読みました。
    映画ではすごく仲良し親子に見えたヤン・ヨンヒ監督とご両親ですが、
    改めて親と違うイデオロギーを持つことの葛藤を感じました。
    日本で差別されるより幸せに暮らせると信じて北朝鮮に3人の息子を送ったご両親でしたが、その後社会情勢は変わり、北朝鮮で厳しい環境で暮らす子どもや孫たちのために奮闘するご両親に何度も涙しました。
    ヤン・ヨンヒ監督のお父さんもお母さんもめちゃくちゃ魅力的でした!
    歴史に翻弄されつつも人々は懸命に生きてきたし、信条は違っても家族を愛する気持ちは一緒なのだから、もっと人類は仲良く暮らせるんじゃないかな~と改めて思いました。

  • 彼女の映画ディア、ピョンヤンとスープとイデオロギーも見た。
    併せての評価となるが、本当に素晴らしい作品でした。
    自分の無知さ加減を恥じると共に、何事にも理由があり、白か黒かなんて簡単なものではない。何が正しくて何が間違ってるかなんて、人に簡単にジャッジされるべきものではないと、あらためて思った。

    残りの映画もぜひ見ます。
    見て、読んで本当に良かったと思える作品

  • 近くにいるはずなのに知らないことが多すぎる。日本は国として、この対応で良いのかと、考えさせられる。隣人の背景にあることを知るために、知らない人は読むべし。

  • 兄の痩せ細った写真を破ってしまったオモニ。
    3人行かせてしまったことを後悔するアボジ。

    日本で生まれ育った在日の人たちの中には、日本でも韓国でもないパスポートを持つ人が存在することを初めて知った。

    演劇のことを聞くだけ、ただそれだけなのにとっさにビデオを切ってと言ったソナ。どんな教育を受けているんだろう。なんていう国なんだろう。

    長兄を行かせた人たちは、自分の子供は残していたという事実に絶句した。

    自分たちが非難されようが、友人を失おうが、娘、そして妹が真実を語る作品作りを応援した家族。この家族あってのヤンヨンヒ監督なんだと思った。

    "アルツハイマーを患い記憶を失っていく母が、金日成を称える歌をうたう。残酷で純粋で滑稽で愛おしく哀れでいじらしい、少女のような母の姿である"

  • 北朝鮮への帰国事業ってニュースで聞いたことはあったけどこんなに酷いものとは知らなかった。国や時代がつくる荒波を前に個人の人生って何なんだろうな、って思ったよ。家族とは血縁に限らず、お互いに努力し続けることなのだ

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著者プロフィール

著:ヤン ヨンヒ
大阪出身のコリアン2世。
米国ニューヨークのニュースクール大学大学院メディア・スタディーズ修士号取得。高校教師、劇団活動、ラジオパーソナリティー等を経て、1995年より国内およびアジア各国を取材し報道番組やTVドキュメンタリーを制作。
父親を主人公に自身の家族を描いたドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』(2005)は、ベルリン国際映画祭・最優秀アジア映画賞、サンダンス映画祭・審査員特別賞ほか、各国の映画祭で多数受賞し、日本と韓国で劇場公開。
自身の姪の成長を描いた『愛しきソナ』(2009)は、ベルリン国際映画祭、Hot Docsカナディアン国際ドキュメンタリー映画祭ほか多くの招待を受け、日本と韓国で劇場公開。
脚本・監督を担当した初の劇映画『かぞくのくに』(2012)はベルリン国際映画祭・国際アートシアター連盟賞ほか海外映画祭で多数受賞。さらに、ブルーリボン賞作品賞、キネマ旬報日本映画ベスト・テン1位、読売文学賞戯曲・シナリオ賞等、国内でも多くの賞に輝いた。
かたくなに祖国を信じ続けてきた母親が心の奥底にしまっていた記憶と新たな家族の存在を描いた『スープとイデオロギー』(2021)では毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞、DMZドキュメンタリー映画祭ホワイトグース賞、ソウル独立映画祭(2021)実行委員会特別賞、「2022年の女性映画人賞」監督賞、パリKINOTAYO現代日本映画祭(2022)グランプリなどを受賞した。
2022年3月にはこれまでの創作活動が高く評価され、第1回韓国芸術映画館協会アワード大賞を受賞。
著書にノンフィクション『兄 かぞくのくに』(小学館、2012)、小説『朝鮮大学校物語』(KADOKAWA、2018)ほか。
本書のハングル版『카메라를 끄고 씁니다』は2022年に韓国のマウムサンチェクより刊行された。

「2023年 『カメラを止めて書きます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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